BOX・FORCE

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第1章 NAMELESS編-序編-

[第11話:Redbud]

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「ボク?ボクは、
ジャッキー・小秋こあき・マイケル。
BOX・FORCE特殊部隊"デイジー"の隊長サ!」


突如戦場に現れた男は、そう名乗った。

「…特殊部隊…聞いたことないな…。」

獅蘭は、驚いた表情を見せ言った。

「だろうネ。ボクも、突然招集がかかって、来日してみたらこの様サ。驚いたヨ。」

ジャッキーはまだどこか拙い日本語でそう言うと、急に表情を変えてヴァリアルとウルセウスに向かって言った。

「マダやる気かナ?相手になるヨ。」

すると、ヴァリアルはウルセウスの顔色を伺った。

「…ここは一旦引くぞ。援軍が1人なはずがない。」

ヴァリアルがそう言うと、ウルセウスは頷く。

「…次は殺す…。」

ヴァリアルがそう言い捨てると、2人は風のように消え去った。

「あの子供、鋭いネ。まあけど残念。
今日はボクしかいないヨ。」

ジャッキーは感心して言った。

「さぁてト、酷い傷だネ。
とりあえず皆んな、治療かナ。」

ジャッキーがそう言うと、上空には4機のヘリが構えていた。
一行はヘリにて応急処置を行い、ヘリで独自の病院へと運ばれた。





本部へ戻ると、第2部隊と第4部隊の一行も集まっていた。

迅雷寺は集中治療室へ運ばれ、白峰、菊野も治療の為別室に運ばれた。

本部の会議室に、第2部隊と第4部隊、クリスティーナ・パンダ(以下パンダ)、そして軽傷の樫間と蓮田、応急手当の状態のままの獅蘭が集まった。


バァァン!!!!!


「これはどう言うことだ!何故仕留められなかった!」

一同が集まるや否や、彩科院が机を強く叩きながら怒鳴り声を上げた。
獅蘭は負けじと、彩科院に怒鳴り返した。

「うるせぇよ!人型NAMELESSが2体だぞ!?何のデータも無しに勝てるかよ!」

叫んだ事により、獅蘭の傷口からは血が流れた。

「『データが無い』が逃していい理由にはならない!相手はNAMELESSだぞ?俺たちの…人類の敵だ!先の大戦以来、俺たちは1度もNAMELESSによる死者を出してこなかった。それが今回、何百人もの死者と負傷者を出して大問題になった!それでもそんな甘ったれた事が言えんのか!」

彩科院は、目の前にある椅子を蹴飛ばしながら再び怒鳴った。

「俺たちは死者を出してねぇ、出たのは奴らが出現してすぐだ!そんなもん、出てくるタイミングとポイントが予め分かってりゃ、死者も負傷者も出さずに仕留められんだよ!
それとも何だ?てめぇはNAMELESSが出てくるタイミングもポイントも分かるってのか?てめぇがNAMELESS操ってんのか?なんとか言ってみろよ!…って…」

獅蘭も彩科院に負けじと怒鳴り返すが、傷口の出血が酷くなる。

「まあまあ2人とも、そこまでにして。獅蘭は傷が悪化するから、大人しくするか今すぐ手当てして。」

蒼松が、2人の間に入ってなだめる。

「…ちっ、鬼隊長だかなんだか知らねぇが、偉そうな口叩きやがって…」

獅蘭は蒼松に宥められ大人しく座ると、そう吐き捨てた。

「なんだと貴様!今すぐこの場で殺されたいのか!」

彩科院はそう怒鳴ると、机に足をかけ、"裁馬刀"を手にした。

「いい加減にしろ!2人とも!継斗、君は負傷者だ。大人しくしてなさい。
鬼介、大人気ないぞ。継斗達だって必死に戦ってくれたんだ。その言い方はないだろ。」

一触即発かと思われたタイミングで、パンダが間に入った。
彩科院はそう言われて、静かに"箱装"を収めると、もう一度机を思いっきり叩いてイラつきながら椅子に座った。

「とにかく…今回は非常事態だ。鬼介が言う通り、先の大戦以来の死者が出てしまった…。政府には、楢迫本部長から緊急事態だと言う報告をしてもらっている。」

パンダが、俯きながら深刻そうに話した。

「1人は、無数の刀を操り刀狩りのような発言をしたと言うNAMELESS…。そしてもう1体は、瞬間移動しながらの格闘攻撃。継斗を抑えるほどの攻撃力を持ったNAMELESSか…。それに彼らは、"四神(ししん)"と、名乗ったそうだな?」

パンダは冷静に話し続け、蓮田の方を見て言った。

「…はい。格闘型のNAMELESSが、名をウルセウス、"四神"と呼ばれている。と言っていました。」

蓮田がパンダの問いに答えた。
すると、彩科院の横にいた矢島が話し始めた。

「"四神"って言うくらいだから、そのウルセウスってのと、刀遣いのヴァリアルだっけ?って子供のNAMELESSがそれだとすると…同じくらいのが、後2人いるって考えてもおかしくないな…」

矢島がそう考察すると、蒼松が急に立ち上がって言った。

「いや、5人です。」

蒼松に、一同の視線が集まる。

「報告が遅れた事を申し訳なく思います。以前、自分は"四神"と思われる者達に遭遇しました。ある日の夜、自分の右目に不思議なビジョンが映りました。そこには、黒いローブの男が手招きする姿が映っていました。ビジョンを頼りに、その場所に行ってみると、その男はいました…。」

蒼松は、以前矢島にした話を、一同に向けてし始めた。

「…信じがたい話かとは思いますが、実際に自分が出会った光景であり、
そして、今日その2人のNAMELESSが消え去った事が何よりの証拠になるのではないかと思います。」

蒼松が話し終えると、獅蘭は蒼松を睨んで言った。

「なんでそれをもっと早く言わなかったんすか。知ってたら…」

獅蘭が言いかけると、彩科院が間を割って言った。

「知ってたらどうなる?そんなもん、有り得ない話か、敵には5人トップが存在する。それで?ってなる話だろ。」

彩科院と獅蘭はまた少し、睨み合った。

「なるほど…。蒼松君、君の眼は先の大戦で、NAMELESSにやられたんでしたよね。もしかしたら、NAMELESSがその際、こちらの情報を掴むための細工をしている可能性は高いですね…。」

彩科院と獅蘭が睨み合う中、桂が落ち着いた声で言った。

「でも、聡悟は右目眼帯してるから、視覚的情報は掴めない。可能性としては、音声での情報か、又はあいつら特有の謎の力?みたいなやつなのかなぁ…。俺も、聡悟からその話聞いた時、色んな可能性を考えたけどさっぱりわかんなかったや。」

矢島が頭を悩ませながら言った。すると、彩科院が矢島を見て言った。

「なに?お前も知っていたのか?」

彩科院は矢島を睨んだ。

「き、聞いてはいましたけど…俺も隊長がさっき仰ったみたいに、言ったところでって判断したもので…」

矢島は焦りながら返答した。

「全く…これは個人戦でも部隊対抗戦でもないんだ。情報は全て、全員が把握していないと戦えない。組織では、常に報告、連絡、相談が大事なんだ。分かってんのか?何か新しい情報が入ったら、常に報告、連絡して共有、そこから相談だ。分かったか!」

彩科院は、呆れながら矢島と蒼松に視線を向けて言った。

「その組織に裏切り者がいたら、大事な情報は敵さんに筒抜けだなぁ?前から言ってる通り、この組織にはスパイが存在している。1億以上の人の命がかかってる大事な情報を、そんな疑惑のあるところに簡単にホイホイ投げれるかよ!」

彩科院に突っかかるように、獅蘭は言った。

「貴様はこの前から、裏切り者だスパイだの、そんなにこの組織を信用してないのか?そんなにこの組織が嫌なら、辞めてしまえばいい。貴様のような臆病者の代わりなど山ほどいる!」

獅蘭の突っかかりに、イラつきながら彩科院が乗っかった。

「…でも、その可能性を否定はできない…。第1部隊と第3部隊が、私たちの家の地下で特別訓練を行なっていて、私たち第2部隊と第4部隊は彩科院隊長の家のコンピュータ室にいました。双方の距離はそこそこ離れてて、どちらか片方に合流するとなれば、どんなに頑張っても30分では行けません。それを知ってたからこそ、敢えて私たちの家から近い目黒を選んだのかと。」

突然、咲波が話に割って言った。

「…珍しいな、愛花が会議で話すなんて。けど、だとしたら何でだ?奴らの目的が我々を消しさる事だとするなら、なぜ今のような全員が集まっている状態で1度に攻めに来ないんだ?もし、仮にそのスパイが存在するとして、我々の情報が奴らに漏れているとするならば、狙うのは今だろ。何でわざわざ、そんな周りくどい方法で攻めに来るのか…」

パンダが驚きながら、咲波を見て言った。

「…あくまで仮の話ですが、奴らにはまだ我々に対抗するほどの戦力が揃いきってない。しかし、出来るだけ早く我々を倒したい。そうするなら、戦力が足りない以上、我々の戦力が分散している状況を狙うべきだと奴らは判断した。そこで、奴らにとって好都合なのは、2人で相手できる方。即ち、経験値、戦闘能力がまだ未熟な訓練チーム。第1と第3の方。だから、そっちのいる方に近い場所を狙った…。」

蒼松が考察を話していると、蓮田が割って話した。

「そりゃ、話が綺麗すぎやしませんかね?奴らがどこまで情報を掴んでるか分からない訳だし、仮に蒼松隊長が言う通り、奴らが考えてるとしたら、相当な情報を持ってかれてる。それに、我々の方が弱いと言われるのは気にくわない話ですよ。」

蓮田が、落ち着きながらもハッキリ強く、蒼松に対して言った。

「そこまでちゃんとした仮説が立てられるってことは、お前は奴らが持っているこちらの情報を把握してるのか?だとしたら、お前が奴らに情報をリークしてると考えられてもおかしくはないぞ?」

彩科院は、蒼松を睨みながら言った。
すると、樫間は少し不満そうに話し始めた。

「ちょっと、仮説仮説って、こんな敵に対して不確かな状態で、各々の妄想話をしたところで、約1億人の命は救えるんですか?スパイの有無に関しても、まだそうと断言するには早すぎると思います。我々が今やらなければならない事は、これ以上犠牲を出さない様、対策をする事なんじゃないんですか?」

すると、1人の男が会議室に入って来た。

「彼の言う通りだヨ。先を見て行動する事はいい事ダ。だけど、先を見過ぎて動けないのは違ウ。今、我々は動かなければならなイ。軌道修正なら行き着く段階ですれば良イ。己の目で見た事が全てだ。百聞は一見にしかず。ってやつだネ。我々の目で見た物で判断すれば良イ。兎に角、今は先に進まなければ何も始まらなイ。違うカ?」

その男は、ジャッキー・小秋・マイケルであった。

「おお!ジャック!第1と第3の救護、助かったよ。他のメンバーは?」

パンダは、ジャッキーを見て言った。

「礼には及びませんヨ。上官の司令に従ったまででス。チャンは、もう日本に到着してるみたいなんですが、所在地は不明でス。ヴァイオレットとリズは、現在こちらに向かっているみたいですヨ。」

ジャッキーは、紳士的な礼をしながら、パンダに言った。

「パンダ室長、この方たちは…」

蒼松は、不思議そうな顔をしながら聞いた。

「第2と第4の方々は初めましてですネ。私、特殊部隊"デイジー"隊長を務めております、ジャッキー・小秋・マイケルと申しまス。以後お見知り置きヲ。」

ジャッキーは、再び一同に向けて礼をした。

「実は数ヶ月前から、別部隊を用意する為に、世界中のあらゆる組織とコンタクトを取っていた。このNAMELESS問題が、今は日本でしか起きてないが、いつ世界中に広がるか分からない。そこで、世界のあらゆる所から精鋭陣を集めて、特殊部隊として組織する事にした。正直に言うが、彼らの基礎戦闘能力は君らの10倍以上だ。しかし、前にも言ったが、彼らを最前線に出す事は考えていない。
彼らはあくまで支援がメインだ。あてにしすぎるなよ。」

パンダは一同に向かって言った。

「とりあえず、第1、第3部隊は回復優先だ。第2、第4部隊は、目黒での情報も含めて、NAMELESSのより一層の調査を頼む。」

パンダがそう言うと、ジャッキーは言った。

「僕はどーしまス?」

「ジャックは、とりあえずチャンと合流してくれ。全く、入国したら本部に来いって言ったんだけどなぁ。」

パンダはそう言うと、一同に解散を命じた。



とある廃墟ビルの一室ー

「おい、バキオラ!あいつら雑魚だぞ?話が違ぇじゃねぇか!」

古びたソファーが2つ、向かい合わせに置いてあり、そこにウルセウスとヴァリアル、そして向かいには黒いローブの人影が2人座っていた。

そのソファーの奥に置かれた、少し高級そうな椅子に、髪が左右均等に白と黒で分かれた青年、バキオラと呼ばれるその男が、足を組んで偉そうに座っていた。

「ふっ…"リコリス"と"ローズ"を侮ってはいけない。彼らは"彼岸花"と赤い"薔薇"。彼らの実力はあんな物じゃないよ。」

バキオラは、右手にワイングラスを持ち、中に入っている赤ワインを揺らしながら言った。

「…バキオラ。我々の力は、もうすでに極限に達しています。その力を持ってすれば、今の奴らなど瞬殺かと。」

ウルセウスが、バキオラを見て言った。

「まだよ。ウルセウス。ロームの力が解放されるタイミング。そこが攻めるタイミングよ。」

ウルセウスの向かいに座っているローブの人影の1人が、そう言った。
すると、ローブのフードを外し、その人影が顔を出す。
髪は短く、顔立ちも男のようだが、化粧を施し、話し方は女性のような者だった。

「ラスコ・テキーラの言う通りだ。ラスコ・ロームの力が解放される時。次の新月の日だ。そこで奴らを攻める。」

バキオラは、その女性、ラスコ・テキーラを見て頷き、言った。
ラスコ・テキーラの横に座る人影、ラスコ・ロームは、黙ったまま動かずに座っていた。

「…BOX・FORCEの滅亡。それが我々NAMELESS侵略計画の第一歩だ…。」

バキオラはそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべた。
月明かりに照らされたその顔は、廃墟ビルの暗闇の中で、鋭く光った。


    
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