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第1章:NAMELESS編-新宿戦-後編
[第37話:Cotton lavender]
しおりを挟む「ダメだヒロキッ…!!!
それ以上やれば、君は"青龍銃"の自然エネルギーに、体が耐えられなくなルッ!!」
ジャッキーは必死に樫間に叫んだ。
しかし、今の樫間にはその声すら届かない。
樫間の目には、バキオラしか映っていなかった。
「…バキオラぁぁぁぁっ!!!
ぶっ潰してやるよ…覚悟しやがれぇぇぇぇぇっ!!!」
樫間は、力強くバキオラに叫んだ。
「…ふふふっ…望むところだ樫間 紘紀っ!
貴様の命を賭けた攻撃を放ってみせろっ!」
バキオラは、樫間の叫びにそう応えた。
樫間の身体から再び青白いオーラが吹き出し、溶けかけていた氷の鎧はその姿を取り戻していた。
「…"双皇龍極弾"…っ!!!!」
樫間は吐血しながらそう叫んだ。その様が、樫間の身体の限界を示していた。
引き金が引かれ、2丁の銃口から氷の龍が放たれた。
「…ヒロキッ!!!!」
ジャッキーの声は、虚しくもその氷龍の暴走音にかき消された。
「…この身朽ち果てようとも…お前だけは…お前だけはぶっ潰す…。バキオラァァァァァァ!!!」
樫間の闘志は、もはや闘志の粋を越えた殺意のように感じられる。
そんな樫間の攻撃が、バキオラを強襲し続けた。
引き金を引くのを合図に、氷龍が樫間の強い意思を乗せてバキオラに向かっていく。
「…ぐはっ…!」
怒涛の攻撃の最中、樫間は突如吐血と共にその場に跪いてしまった。
遂に、その身体は限界を越えた。
「…おい…撃てよ…。撃って見せろよっ!なぁっ!」
バキオラは、霞んで焦点の合ってない目で自分を見ている樫間にそう叫んだ。
「…おいおい…もう終わりか…?…つまんねぇなぁ…もっと楽しませて…くれよ…なぁ?」
バキオラは煽り口調で威勢がいいものの、言葉が途切れていた。
樫間と同様に、バキオラもかなり負荷を負っているようだ。
樫間の耳は、その声を微かに捉える程にまで、その機能を落としていた。
(…ここで…こんなところで…止まるわけには…。)
樫間の視界がボヤける。
その目で見る世界の色は、次第に氷紋に覆われたように白くなっていく…。
ーあの時も、こんな雪の日だったかー
それは、13年前。
当時、世間はようやくITの世界に足を踏み入れた所であった。
10歳を迎えた樫間はある日、両親に連れられて知り合い家族の住む四国へと向かっていた。
「…紘紀。父さんと母さんは、これから大事な研究のお仕事がある。少し、離れ離れにはなってしまうが…。おじさんたちに迷惑かけないように、しっかりしてるんだぞ。」
樫間の父親はそう言った。
まだ幼い樫間にとって、それは少しだけ長い夏休みの地方帰省のようなもの、そう捉えていた。
それから2年が経ち…。
その日は、2年ぶりに両親に会える日であった。
12歳になった樫間は、1人で東京に向かった。
3月になっていたにも関わらず、その日の東京は雪が降った。
東北にある研究施設での、特殊な研究業務の間の僅かな時間ではあるが、樫間は研究員である両親と会う事が許された。
その日であった。
約束の時間になっても、両親は現れなかった。
ふと、街中の大型ビジョンに目をやると
『東北の研究施設で巨大爆発事故!政府管轄の施設か!?』
という文字と、爆炎が上がる空からの映像が映し出された。
幼いながらも、樫間がそれを理解するのに時間は要さなかった。
その研究所には、両親がいた。
樫間の両親を含む多数の犠牲者を生じた、歴史に残る大事故となったのだ。
樫間の事は、四国の知り合いがすぐに東京に迎えに来て、そのままその家庭に居候という形で過ごす事となった。
それから大学入学を機に上京した樫間は、
両親と同じ環境学を学んだ。
その時、またも事件が起きた。
東京を、謎の生命体が襲撃するというフィクションじみた出来事が起きたのだ。
結果は、悲惨そのものであった。
多大な被害をもたらしたその一件は、後に『第一次NAMELESS大戦』と呼ばれる事となる。
その一件が終幕した頃、樫間はBOX・FORCEから大学を通じてスカウトされた。
その時樫間は、1つの仮説を立てていた。
両親を失った研究施設爆発事故と、『第一次NAMELESS大戦』。
この2つを関連付けるものが、『BOX・FORCE』にあるのではないか。
そこから、樫間はBOX・FORCEの特殊訓練を行い、先の大戦で欠員の出ていた第1部隊"リコリス"の隊長に抜擢されるまでに成長した。
戦いの中で、樫間には樫間の問題を解決する為の仲間ができた。
初めて、ラスコ・ロームがBOX・FORCEを襲撃した日。
樫間はある一通のメールを受け取っていた。
『11年前の件について、詳細が掴めた。
東北研究施設爆発事故
爆破物は資料上、発火物によるガス爆発と報告されていたが
実際は、"箱装"の研究の可能性が高い事が判明した。
その研究を指揮していた人物は…』
メールの差出人は、獅蘭であった。
樫間はメールの最後の文章を見る前に、その最後の答えが自身の読みと合致していることに気づいた。
ーまだだ。今ここでくたばる訳にはいかない…。
奴を…奴を仕留めなければ…。両親の仇を…ー
「…ガハッ…!」
樫間は酷く咳き込んだ。その瞬間に意識が蘇った。
その頬に、一筋の雫を流して。
樫間が意識を取り戻すと、新宿の地は夜の静寂を取り戻していた。
ふとバキオラの姿を見ると、銃武器を纏った特殊な姿から、酷く痩せ細った1人の男の姿になっていた。
「…貴様…その姿は…。」
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