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第2章 七魔編-七魔団結成-
[第7話:Beelzebub]
しおりを挟む"ルシファー"こと、東雲 香織の保護に成功した樫間たち"七魔団"一行は、歌舞伎町を離れて四ツ谷方面に向かった。
一行は四ツ谷に廃ビルを発見し、そこに身を潜める事にした。
廃ビルの一室に入ると、そこにはいくつかのテーブルと明日が散らばっていた。
その中の1つの上に、樫間は自分が羽織っていたローブを外してそこに敷いた。
そして抱えた東雲を、ゆっくりそこに寝かせる。
堀崎が予備のローブを持っており、それを上から被せてそこに寝かせた。
「…やれやれ…それにしても樫間、結構野蛮な事するんだな。」
堀崎はやっと落ち着けたというように額を拭うと、樫間に向かってそう言った。
「ん?何が?」
樫間は、惚けたようにそう言った。
「何が?じゃないよ。あれ、多分あそこら一帯シメてる連中だろ?手出して良かったのかよ。」
堀崎は呆れたようにそう言った。
「ああ、知るかよ。仮にも2年前、この地を守ったのは俺だ。」
樫間は一瞬、懐かしそうな表情をした。
しかし、再び真剣な表情に変わった。
「…東雲 香織…か。」
樫間はそう呟き、気を失って寝ている東雲を見た。
その瞬間、樫間は"アスモレウス"を抜刀した。
樫間と同タイミングで、堀崎、葉坂、道影も"七魔箱"を解放した。
4人は、殺気を感じ取ったのだ。
誰もいないはずの廃ビルの一室に、人影を感じ取り武器を構えたが、樫間が止めの合図をした。
物陰から姿を現したのは、樫間の見覚えのある人物であった。
「…おい、嘘だろ。…樫間…無事だったのか。」
「…チャン・リーフォン。第2次大戦前以来だな。」
その人物は、チャン・リーフォンであった。
チャンは、かつての弁髪を解いて襟足が長くなっていたが、それ以外はまんま変わらずの姿であった。
「…何故、ここが?」
樫間は、かつての仲間との再会を喜ぶどころか、依然警戒を示していた。
「あ、ああ。それは、俺もお前たちと同じだからな。」
そう言って、チャンは掌に黒い"箱装"を取り出して見せた。
「俺たちと同じ…。という事は、6人目、という訳か。」
樫間は、チャンの行動から全てを察した。
「お、おい樫間。この人は誰なんだ…?」
2人のやりとりを見ていた堀崎が、樫間に疑問をぶつけた。
「ああ。彼は、チャン・リーフォン。俺と同じ、"BOX・FORCE"の人間だ。」
樫間がそう言うと、チャンは遮るように口を挟んだ。
「"元"だ、樫間。俺は今、あの組織にはいない。」
チャンの言葉に、樫間は驚いた顔をした。
「…!?…それはどういう事だ?」
「…2年前、渋谷で獅蘭、白峰、抹梨と俺は"ウルセウス"と戦っていた…。しかし、その最中で俺は奴の攻撃を喰らって気を失っていた…。
_2年前、渋谷 スクランブル交差点
「…甘いんだよ。全く。」
ウルセウスの言葉と共に、その場に巨大な衝撃波が襲いかかった。
「…何っ…!」
獅蘭がそう呟くと、沫梨が瞬く間に黒いオーラに包まれて、交差点のビルの一角に吹き飛ばされた。
「沫梨っ!!」
獅蘭がそう叫ぶと、今度はチャンが黒いオーラに包まれ、吹き飛ばされた。
「チャンっ!!」
一瞬にして沫梨とチャンの姿は消え、獅蘭の目の前には、残された白峰が立っていた。
「…やれやれ。本当に目障りだよ。」
ウルセウスは、2人の正面に現れると気怠そうにムクッと姿勢を正した。
ウルセウスの攻撃をまともに喰らい、激しく吹き飛ばされたチャンは、路上に倒れ込んで気を失った。
「…ぅなっても…知りませんよっ!」
その後少ししてから、白峰の叫び声がチャンの意識を取り戻させた。
チャンがゆっくり目を開け身体を起こすと、スクランブル交差点付近で、ウルセウスは暗黒のオーラを放ちながら、拘束された獅蘭の"永猿棒"を必死に振り解こうとしている。
「…"焔焱之一閃(えんえんのいっせん)"っ…」
白峰が、引いた右腕に溜め込んだエネルギーを一気に拳に集めた。
そして次の瞬間、そのエネルギーを寸分の狂いもなく、ウルセウスの胸元中心に撃ち放った。
「…ぐっ…グハァッ…!!」
ウルセウスの黒く鋼鉄のような肌は、鋭い炎によって、徐々に焼かれていく。
「…白峰ぇ!!そんなんじゃやれねぇ!!底力…出しやがれぇ!!!」
獅蘭の必死の叫び声が、辺り一面に響き渡った。
「…どうなっても…しらねぇっ!!!」
白峰の叫び声と共に炎の威力は増し、ウルセウスの身体を焼き貫いた。
背後でウルセウスの動きを封じていた獅蘭と共に、ウルセウスの姿は爆風にかき消された。
その爆風が止んだ時、チャンの通信機から声が聞こえた。
『…チャン、僕ダ。ジャックだヨ。』
声の主は、ジャッキーであった。
「…た…隊長…。…どうしたんですか…?」
チャンは、ゆっくりとそう答えた。
『…いいかイ?簡潔に、一度で伝え上げル。
戦線離脱し、身を潜めるんダ。
"BOX・FORCE"には戻るナ。
後で、合流ポイントを送っておク。
…ツー…ブツッ…。』
ジャッキーの通信は、その言葉を最後に途切れてしまった。
「…隊長…?隊長!?」
チャンの言葉に、返答はなかった。
それから、チャンはジャッキーの指示通り
"BOX・FORCE"へ戻る事なく、単独で身を潜めながら行動していた…。
_
…そんなある日、突然俺の元にこれが現れた。
この"箱装"の名前は"ベルゼブブ"。」
チャンは、これまでの経緯を樫間に説明した。
「…"ベルゼブブ"か。"七魔箱"に間違いなさそうだな。」
会話を聞いていた堀崎は、冷静にそう言った。
「…樫間、彼らは…。」
チャンは、樫間を囲う見知らぬ面々を見てそう言った。
「…チャン。俺は、この"七魔箱"に選ばれた所持者達を集めて、"七魔団"を結成しようと思っている。
彼らは、その為の仲間達だ。」
樫間は簡潔にそう言った。
「…"七魔団"…この組織の目的は何だ?」
チャンの問いに、樫間はこれまでと同じように答えた。
「…"BOX・FORCE"を攻める。2年前と7年前の厄災…"NAMELESS"を生み出した元凶が、"BOX・FORCE"にいる。」
"NAMELESS"という言葉に、チャンは反応を示した。
「…誰なんだ…?それは。樫間以外の隊長陣なのか?それとも、本部の人間…いや、隊員達の誰かなのか?」
チャンは、樫間に答えを急かした。
「…"クリスティーナ・パンダ"。またの名を、"クリス・ハンター"。」
樫間の口にした言葉に、チャンだけでなく堀崎、葉坂、道影も反応した。
「…えっ…紘紀さんの言うそいつって…。」
葉坂は、その名を知っていたようだ。
「…"クリス・ハンター"か…。深く関わろうと思った事はなかったが、裏組織じゃ超の付く程名の知れた人間だ。
何なら、国際指名手配にかけられてるレベルの人間じゃないか?」
道影もその名を知っていた。
その時初めて、道影は事の重大さを理解した。
「…おいおい、まさか…あのパンダ頭に仕組まれた計画って事だったのか?これまでの事は…。」
チャンはそう言った。
「とはいえ、俺も全ての事を分かってるわけじゃないけどな。
ただ、今でもあの組織は存在し続け、それを裏で糸を引いているのは奴だ。
奴を潰し、奴の計画の一部かもしれないあの組織を壊滅させる。
それが、この"七魔団"で成し遂げる目標…いや、使命だ。」
樫間の決意の言葉に、チャンは少し考えた後、首を縦に振った。
「樫間、必ず成し遂げるぞ。…これは、もしかしたら世界の命運がかかってるかも知れない。」
こうして、6人目の所持者であるチャンが加入した。
_その時、神奈川 横浜
23時を回り、辺りはすっかり暗闇に包まれていた。
海沿いの古い煉瓦造りの建物がある海岸に、
1人の少女がいた。
その少女は、目が前髪で隠れる程の黒いマッシュヘアに、身長は150cm満たないほどの小柄な姿をしていた。
「…私の居場所…もう…ない。」
少女の呟きは、海風の音にかき消される程に小さく、か細かった…。
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