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毛はまた戻り、繰り返す (3)
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伝説の毛生え薬"ブラッディー・サバス"が入荷。
その情報は、国内外を問わずすさまじい速さで世間に知れ渡り、人々を騒然……いや、沸騰させた。
かつて一度だけオークションに出されたそれは、オークション参加者の目の前で完全に毛を失った一人の男……我がギルドマスターの髪をわずかな時間で取り戻したのである。
だが、その効果を知った後の一部の参加者はオークションの結果に満足できず、薬を競り落とした商業ギルドの支部長の商隊を襲撃し、薬を奪っていった。
しかも、その時に街道で崖崩れを起こしたため、真冬の最中に食料を輸送していた商人たちが通行できなくなってしまったのである。
結果としてこの国の王都は深刻な食糧不足に陥り、俺もリンツと協力して普段食べない植物の根をかじって飢えをしのいだものだ。
つまり、世間一般の人々のほとんどは、薬の入荷を歓迎しているわけではない。
恐れているのだ。
……数年前の、あの状況が繰り返されることを。
毛生え薬に"血まみれ"と名が付くのはそんな理由からだ。
「……てな事があって、みんなピリピリしているわけだ」
「うわぁ、そんな事があったんだ?
その時は別の国にいたから詳しい話は知らなかったんだけど、ずいぶんと物騒な話だね」
ディオーナはあまり興味のなさそうな顔で相づちをうちながら、今日のA定食であるスパゲティ・ポヴェレッロ――ニンニクで香りづけをしたパスタに目玉焼きをのせものを口に頬張る。
実にのんきな顔をしているが……まさか、自分のとってきた素材がその騒動の原因などとは考えてもいないだろう。
ちなみに俺も同じものを頼んだのだが、とっくに完食済みだ。
普段が時間に追われているせいか、早食いの癖が染み付いてしまっているのである。
しかし……気分的にはプチデートのつもりだったのだが、やはり場所は選ぶべきだった。
こんなところでもないとディオーナも警戒して誘いに乗らないのもあるが、冒険者ギルドの食堂ではいろいろと色気が無さ過ぎる。
周囲には昼間から酒を飲んで奇声を上げる連中がおり、わずらわしいことこの上ない。
「れ、今回はどうにゃるの?
何か対応策は考えてあるんでしょ?」
こら、食べながらしゃべるのは行儀が悪いぞ。
そんなことを考えながら、俺は食後のお茶に口をつける。
「まぁな。
今回は最初から力ずくでやらせるつもりらしい。
なんでも乱戦形式の合戦じみたやり方をするらしく、街の東側にある平原で大規模な奪い合いをさせるのだとか」
俺がうんざりした声でそう告げると、ディオーナはかすかに眉をひそめた。
「うわぁ、なんかずいぶんと野蛮ね」
「そう言うなよ。 紳士的にやっても、結局は野蛮な結果に終わるんだったら、最初から野蛮なやり方にしてしまったほうが楽なんだ」
漁夫の利を狙う奴が出そうな気がするので意見は上げておいたが、ギルドの幹部はかなり自信があるようだ。
なんでも、そういう非合法な手段に自力で対抗できる連中に売るのが最適だということらしい。
「今のところ、商業ギルドのギルドマスターに雇われた傭兵、隣の領地の貴族、隣の国の騎士団などが名乗りを上げている」
「また、えらく大層なところが出てきたわね」
「髪のあるなしのために、軍勢を雇う事ができるような余裕のある連中だぞ?
必然的にそうなってくるさ」
参加させられる連中からすれば、ご愁傷様としか言いようが無いがな。
「それにしても、なんでまたそんな薬を欲しがっているのよ?」
「さぁな。 別に興味も無いし、知ったところでどうにもならんだろ」
「それはそうなんだけど……」
やはり好奇心がうずくのだろう。
ディオーナは不満そうに言葉を濁した。
「そんな事より、俺が素材をおろしているところで新作のアクセサリーを作ったらしいんだ。
よかったら見に行かないか?」
「あ、もしかしてこの間のカーバンクル?」
ディオーナの顔が、パッと輝く。
どうやら、話題を変えてうまくデートコースへと修正することに成功したらしい。
「あぁ。 綺麗なネックレスになったらしい」
俺は上機嫌のディオーナを連れて、なじみの宝石店へと案内をするのだった。
なお、俺の財布の中の残高が半分になったことは言うまでもない。
その情報は、国内外を問わずすさまじい速さで世間に知れ渡り、人々を騒然……いや、沸騰させた。
かつて一度だけオークションに出されたそれは、オークション参加者の目の前で完全に毛を失った一人の男……我がギルドマスターの髪をわずかな時間で取り戻したのである。
だが、その効果を知った後の一部の参加者はオークションの結果に満足できず、薬を競り落とした商業ギルドの支部長の商隊を襲撃し、薬を奪っていった。
しかも、その時に街道で崖崩れを起こしたため、真冬の最中に食料を輸送していた商人たちが通行できなくなってしまったのである。
結果としてこの国の王都は深刻な食糧不足に陥り、俺もリンツと協力して普段食べない植物の根をかじって飢えをしのいだものだ。
つまり、世間一般の人々のほとんどは、薬の入荷を歓迎しているわけではない。
恐れているのだ。
……数年前の、あの状況が繰り返されることを。
毛生え薬に"血まみれ"と名が付くのはそんな理由からだ。
「……てな事があって、みんなピリピリしているわけだ」
「うわぁ、そんな事があったんだ?
その時は別の国にいたから詳しい話は知らなかったんだけど、ずいぶんと物騒な話だね」
ディオーナはあまり興味のなさそうな顔で相づちをうちながら、今日のA定食であるスパゲティ・ポヴェレッロ――ニンニクで香りづけをしたパスタに目玉焼きをのせものを口に頬張る。
実にのんきな顔をしているが……まさか、自分のとってきた素材がその騒動の原因などとは考えてもいないだろう。
ちなみに俺も同じものを頼んだのだが、とっくに完食済みだ。
普段が時間に追われているせいか、早食いの癖が染み付いてしまっているのである。
しかし……気分的にはプチデートのつもりだったのだが、やはり場所は選ぶべきだった。
こんなところでもないとディオーナも警戒して誘いに乗らないのもあるが、冒険者ギルドの食堂ではいろいろと色気が無さ過ぎる。
周囲には昼間から酒を飲んで奇声を上げる連中がおり、わずらわしいことこの上ない。
「れ、今回はどうにゃるの?
何か対応策は考えてあるんでしょ?」
こら、食べながらしゃべるのは行儀が悪いぞ。
そんなことを考えながら、俺は食後のお茶に口をつける。
「まぁな。
今回は最初から力ずくでやらせるつもりらしい。
なんでも乱戦形式の合戦じみたやり方をするらしく、街の東側にある平原で大規模な奪い合いをさせるのだとか」
俺がうんざりした声でそう告げると、ディオーナはかすかに眉をひそめた。
「うわぁ、なんかずいぶんと野蛮ね」
「そう言うなよ。 紳士的にやっても、結局は野蛮な結果に終わるんだったら、最初から野蛮なやり方にしてしまったほうが楽なんだ」
漁夫の利を狙う奴が出そうな気がするので意見は上げておいたが、ギルドの幹部はかなり自信があるようだ。
なんでも、そういう非合法な手段に自力で対抗できる連中に売るのが最適だということらしい。
「今のところ、商業ギルドのギルドマスターに雇われた傭兵、隣の領地の貴族、隣の国の騎士団などが名乗りを上げている」
「また、えらく大層なところが出てきたわね」
「髪のあるなしのために、軍勢を雇う事ができるような余裕のある連中だぞ?
必然的にそうなってくるさ」
参加させられる連中からすれば、ご愁傷様としか言いようが無いがな。
「それにしても、なんでまたそんな薬を欲しがっているのよ?」
「さぁな。 別に興味も無いし、知ったところでどうにもならんだろ」
「それはそうなんだけど……」
やはり好奇心がうずくのだろう。
ディオーナは不満そうに言葉を濁した。
「そんな事より、俺が素材をおろしているところで新作のアクセサリーを作ったらしいんだ。
よかったら見に行かないか?」
「あ、もしかしてこの間のカーバンクル?」
ディオーナの顔が、パッと輝く。
どうやら、話題を変えてうまくデートコースへと修正することに成功したらしい。
「あぁ。 綺麗なネックレスになったらしい」
俺は上機嫌のディオーナを連れて、なじみの宝石店へと案内をするのだった。
なお、俺の財布の中の残高が半分になったことは言うまでもない。
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