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第一章
第9話 お持ち帰りされました
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「納得してくれたみたいで嬉しいわ」
いや、理解したんじゃなくて諦めただけです。
逃げ場が無いことを理解した俺は、スタニスラーヴァに抱きかかえられたままぐったりとうなだれていた。
もはや返事をする気力も無い。
そんな中、俺の腹の虫だけがグゥゥと元気にの存在を主張する。
「あら、お腹がすいていたのね。
なにか食べるものを注文しなきゃ」
スタニスラーヴァはテーブルをコンコンと拳でたたいて合図を送ると、やってきた給仕にいくつかの料理を注文する。
なんとなく首に紐がついたような気分はいただけないが、まともな食事にありつけることについては感謝すべきだろうな。
やがて料理が運ばれてくると、なぜかスタニスラーヴァが手づから料理を俺の口に運ぶ。
「おいしい? トシキくん」
「……わからない」
疲れているからか、精神的なものなのか、料理の味がまったくわからなかった。
俺、いま何を食べているんだろう?
ポンキュッキュッの美女に抱えられ、あーんまでされているというのに、なんだろうこの墓場に引きずりこまれてゆくような感覚は。
マルコルフたちほかの冒険者はうらやましそうに俺を眺めているのだが、よかったらかわってやるぞ。
むしろかわってくれ。
心の中でそんな台詞を叫びつつ、もはや作業の感覚で食べ物を咀嚼している、ふいにスタニスラーヴァが妙なことをつぶやいた。
「そういえば、トシキくんは森にいたのよねぇ。
近くの森って言うと一箇所しかないんだけど、その森で女の子を見なかった。
三日ほど前から行方不明になっている子がいるらしいんだけど」
あの森で?
そりゃ、もう妖怪に食われて骨になってるんじゃないだろうか?
不謹慎ではあるが、そんな考えがふと脳裏をよぎる。
「……しらない。
俺が遭遇したのは妖怪だけだ」
思い返すも憎憎しいあの妖怪め。
考えたら、軌道に乗り始めた異世界ライフが狂いだしたのは、あの妖怪が出てきてからである。
「妖怪?」
どうやら、スタニスラーヴァには心当たりが無いらしい。
もしかしたら最近発生した魔物なのだろうか?
「髪はぼさぼさ。
見た目は人に似ているが、甲高い声で喚きながら四つんばいで這い回り、人の食料を奪った上に寝床を占領した化け物のことだ。
……知らないのか?」
死んだ目でとつとつと語る俺から何か感じ取ったのだろう。
スタニスラーヴァは俺を強く抱きしめた。
「……怖い目にあったのね。
大丈夫よ、
そんな化け物が出てきたら、私があっという間に氷漬けにしてあげるから」
いや、その前にあなたに絞め殺されそうです。
できればもうすこし、その腕を緩めてらえないでしょうか……。
そろそろ、意識が……。
「あら、おなかがいっぱいになって眠くなったのね?
寝ちゃったわ」
違うわぁぁぁぁっ!!
遠のく意識の中で叫んでみても、相手に届くはずもなく。
気が付くと、俺は甘い香りとぬくもりの中で目をさました。
なんか、ほっぺたにやわらかいものがくっついて……。
え、まさか……これ……。
それが何であるかを理解したとき、俺は反射的に体を起こしていた。
周囲が一瞬で明るくなり、遠くからチュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。
そして横を見れば、下着しか身に着けていないスタニスラーヴァの姿が……。
あ、下着は黒でそろえているんですね。
とってもせくしーだとおもいます。
じゃなくて!
なにこのけしからん状況!!
俺の体が子供じゃなかったら、理性が一瞬で飛んで襲い掛かってるぞ!!
思わず叫びそうになり、すんでのところでとどまる。
が、同時にンッと色っぽい寝息を立てたスタニスラーヴァの長い睫毛が震えた。
あ、おきるぞ、これ。
どうしよう、逃げたほうがいいのか?
「あら……おはよう」
「……おはようございます」
お互いに言葉も通じないまま、間抜けな顔で挨拶を交わした後、俺は自分が素っ裸であることに気づいた。
気絶している間に脱がされたか!?
そして次に何をすべきか思いつくよりもはやく、彼女の細くしなやかな腕が俺に伸びる。
まずい!
逃げるまもなく、俺はふたたびスタニスラーヴァに抱きかかえられてしまった。
そして彼女は俺を抱きかかえたままベッドから降り立ち、部屋から出てゆこうとする。
「うふふふ、トシキくん。
きょうはおめかしをしましょうね。
でも、その前にお風呂に入りましょうか」
「うわ、なんかまた言葉が通じなくなっているけど、ちょっとエッチなハプニングが起きようとしている気がする!!」
俺がじたばたとあわてていると、彼女はふと横に視線を送った。
すると、そこにはいつのまにかメイドさんたちが並んでいるではないか。
もしかして、スタニスラーヴァはどこかのお嬢様?
ともすると、貴族か何かかもしれない。
「この子をお風呂にいれてちょうだい。
あと、その間に着替えの準備もお願いいできるかしら」
「かしこまりました」
スタニスラーヴァから俺を受け取ると、メイドのみなさんは屋敷の一角へと俺を引きずってゆき……。
ここから先なにがあったかは、俺の尊厳のために伏せさせてもらおう。
あえていうならば、体中のありとあらゆるところから汚れが消えた。
そして今、俺はヒラヒラの服を着ている。
……なんというか、もうお婿に行けないという台詞を自分が口にするとは思わなかったよ。
いや、理解したんじゃなくて諦めただけです。
逃げ場が無いことを理解した俺は、スタニスラーヴァに抱きかかえられたままぐったりとうなだれていた。
もはや返事をする気力も無い。
そんな中、俺の腹の虫だけがグゥゥと元気にの存在を主張する。
「あら、お腹がすいていたのね。
なにか食べるものを注文しなきゃ」
スタニスラーヴァはテーブルをコンコンと拳でたたいて合図を送ると、やってきた給仕にいくつかの料理を注文する。
なんとなく首に紐がついたような気分はいただけないが、まともな食事にありつけることについては感謝すべきだろうな。
やがて料理が運ばれてくると、なぜかスタニスラーヴァが手づから料理を俺の口に運ぶ。
「おいしい? トシキくん」
「……わからない」
疲れているからか、精神的なものなのか、料理の味がまったくわからなかった。
俺、いま何を食べているんだろう?
ポンキュッキュッの美女に抱えられ、あーんまでされているというのに、なんだろうこの墓場に引きずりこまれてゆくような感覚は。
マルコルフたちほかの冒険者はうらやましそうに俺を眺めているのだが、よかったらかわってやるぞ。
むしろかわってくれ。
心の中でそんな台詞を叫びつつ、もはや作業の感覚で食べ物を咀嚼している、ふいにスタニスラーヴァが妙なことをつぶやいた。
「そういえば、トシキくんは森にいたのよねぇ。
近くの森って言うと一箇所しかないんだけど、その森で女の子を見なかった。
三日ほど前から行方不明になっている子がいるらしいんだけど」
あの森で?
そりゃ、もう妖怪に食われて骨になってるんじゃないだろうか?
不謹慎ではあるが、そんな考えがふと脳裏をよぎる。
「……しらない。
俺が遭遇したのは妖怪だけだ」
思い返すも憎憎しいあの妖怪め。
考えたら、軌道に乗り始めた異世界ライフが狂いだしたのは、あの妖怪が出てきてからである。
「妖怪?」
どうやら、スタニスラーヴァには心当たりが無いらしい。
もしかしたら最近発生した魔物なのだろうか?
「髪はぼさぼさ。
見た目は人に似ているが、甲高い声で喚きながら四つんばいで這い回り、人の食料を奪った上に寝床を占領した化け物のことだ。
……知らないのか?」
死んだ目でとつとつと語る俺から何か感じ取ったのだろう。
スタニスラーヴァは俺を強く抱きしめた。
「……怖い目にあったのね。
大丈夫よ、
そんな化け物が出てきたら、私があっという間に氷漬けにしてあげるから」
いや、その前にあなたに絞め殺されそうです。
できればもうすこし、その腕を緩めてらえないでしょうか……。
そろそろ、意識が……。
「あら、おなかがいっぱいになって眠くなったのね?
寝ちゃったわ」
違うわぁぁぁぁっ!!
遠のく意識の中で叫んでみても、相手に届くはずもなく。
気が付くと、俺は甘い香りとぬくもりの中で目をさました。
なんか、ほっぺたにやわらかいものがくっついて……。
え、まさか……これ……。
それが何であるかを理解したとき、俺は反射的に体を起こしていた。
周囲が一瞬で明るくなり、遠くからチュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。
そして横を見れば、下着しか身に着けていないスタニスラーヴァの姿が……。
あ、下着は黒でそろえているんですね。
とってもせくしーだとおもいます。
じゃなくて!
なにこのけしからん状況!!
俺の体が子供じゃなかったら、理性が一瞬で飛んで襲い掛かってるぞ!!
思わず叫びそうになり、すんでのところでとどまる。
が、同時にンッと色っぽい寝息を立てたスタニスラーヴァの長い睫毛が震えた。
あ、おきるぞ、これ。
どうしよう、逃げたほうがいいのか?
「あら……おはよう」
「……おはようございます」
お互いに言葉も通じないまま、間抜けな顔で挨拶を交わした後、俺は自分が素っ裸であることに気づいた。
気絶している間に脱がされたか!?
そして次に何をすべきか思いつくよりもはやく、彼女の細くしなやかな腕が俺に伸びる。
まずい!
逃げるまもなく、俺はふたたびスタニスラーヴァに抱きかかえられてしまった。
そして彼女は俺を抱きかかえたままベッドから降り立ち、部屋から出てゆこうとする。
「うふふふ、トシキくん。
きょうはおめかしをしましょうね。
でも、その前にお風呂に入りましょうか」
「うわ、なんかまた言葉が通じなくなっているけど、ちょっとエッチなハプニングが起きようとしている気がする!!」
俺がじたばたとあわてていると、彼女はふと横に視線を送った。
すると、そこにはいつのまにかメイドさんたちが並んでいるではないか。
もしかして、スタニスラーヴァはどこかのお嬢様?
ともすると、貴族か何かかもしれない。
「この子をお風呂にいれてちょうだい。
あと、その間に着替えの準備もお願いいできるかしら」
「かしこまりました」
スタニスラーヴァから俺を受け取ると、メイドのみなさんは屋敷の一角へと俺を引きずってゆき……。
ここから先なにがあったかは、俺の尊厳のために伏せさせてもらおう。
あえていうならば、体中のありとあらゆるところから汚れが消えた。
そして今、俺はヒラヒラの服を着ている。
……なんというか、もうお婿に行けないという台詞を自分が口にするとは思わなかったよ。
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