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第一章
第92話 惨劇の原因
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都合がいいだと?
むしろ逆じゃないのか?
どうにもスッキリしない話だが、そのもやもやを消すためにはジスベアードから詳しい話を聞かなくてはならないだろう。
だが、なぜか聞きたくない。
普段ならば解決に協力するのもやぶさかではないのだが、なんとなく嫌なのだ。
たぶん勘のようなものである。
そんな俺の感情が顔に出ていたのだろう。
「まぁ、結局のところお前を利用しようとしているのは認めるし、面倒くさいのは分かっている。
だが、聞いてくれ」
そういいながら、ジスベアードは深々と頭を下げた。
やれやれ、厄介だなぁ。
結局こうやって誠意を持って頭下げられる奴が一番苦手なんだよ。
「トシキさん……」
ポメリィさんからも、すがるような目を向けられる。
そんな顔しなくても、さすがにこの状況では断れないって。
「しかたがないな。
聞くよ。 そして利用されてもやろう。
だが、それを当たり前だとは思わないでくれ」
「ありがたい!」
ジスベアードは笑顔と共に顔を上げた。
「まず、この町の抱えている問題だが、単純なものじゃない。
複数の問題が色々と絡み合っている。
そしてその最大の問題は、隣の領地のとの戦争だ」
「うわぁ、嫌な単語が出てきたな」
予想しなかったわけではないが、その面倒な言葉の登場に俺は顔をしかめる。
戦争だの紛争だのって、宗教的な立場にある俺が一番かかわっちゃいけないものだと思うのだが、それは俺が地球の価値観で考えているからだろうか?
そういえば、俺の教育係になるはずだったスフィンクスも戦争に巻き込まれてこっちに来ることができなくなったんだっけ。
戦争という代物は、つくづく俺と相性が悪いようである。
「ちなみに先日の話だが……。
この町の領主の娘がさらわれた。
そしてあの火事は、うちのお姫様をさらった連中が追手の邪魔をするためにやったことなんだ」
本当に、聞いているだけでテンションが下がるよ。
貴族同士でやりあうのはいいけど、そこに関係の無い市民を巻き込むか?
しかも、よりにもよって火災とか無いわ。
追っ手をかく乱するだけなんら、他にいくらでも方法はあるだろうに。
こんな手を使えば、貴族が持つとも大事にしているであろう名誉とやらに盛大な傷がつく。
そんな下策を使っている段階で、ある意味失敗とさほど変わらんぞ。
「……聞くけど、なんで領主の娘なんかさらったのさ」
問い返した声は、自分でもびっくりするほど低い声だった。
でも、それ以上に気分は最悪である。
「あぁ、それなんだがな。
そもそも全ての災いの原因はあれなんだよ」
そういいながら、ジスベアードは詰め所の窓を指差した。
……特に何もあるようには見えないが?
「大きな山が見えるだろ?
この地方はむかしからあの山に脅かされてきたのさ」
「山に? なんでまた」
「あの山には気性の荒い火山の神がいて、何か気に入らないことがあるたびに噴火をするのさ」
そういえば、前にアンバジャックがそんなことを話していたな。
「だが、今は静かに眠っているんだろ?
火山が噴火したのはずいぶんと前だと話を聞いているけど」
「あぁ、森の神が山の神を封印しているからな」
「だったら、みんなあの山に火山の神がいることすら忘れてるんじゃないのか?」
……というか、忘れるのが普通だろう。
だが、そうではない口ぶりだ。
何か理由があるのではないかと思ったやさきに、ジスベアードはその理由を説明しはじめた。
「それがな。
信仰が薄れると封印が弱まって小規模な噴火が起きるんだよ。
そのたびに人々は恐怖によって信仰を取り戻す。
そんなことを何度繰り返して今があるんだが……」
なるほど、町の連中の妙な信仰の深さはソレが原因か。
「だが、最近になって山の頂上から煙が上がるという現象が頻発している。
信仰が弱まっていないのにだ」
「どういうことだ?」
「わからん。
だが、火山の神が眠りから醒めようとしているのは間違いない。
このままでは、火山の神によってこのあたりは人の住めぬ荒野となる。
そこでこの町の領主は、娘を南の山の神と結婚させることで火山の神をなだめようとしたんだ」
「そんな、ひどい!!」
悲鳴を上げたポメリィさんから、ジスベアードが目をそらす。
神との結婚といえば聞こえはいいが、実態は別のものだ。
「……生贄って奴か。
だが、それでどうにかなるのか?」
「わからん。
だが、神の怒りを静める方法としてこれ以上確実なものはないらしい。
森の神の神殿にあった百年ほど前の文献に、同じ事をして危機を乗り越えたと記されていたそうだ」
「馬鹿な。 記録などいくらでも改ざんできるだろ。
あいつらの言うことなんか信用できるものか」
平均寿命の短いこの世界では、百年もあれば当事者は全員死ぬ。
いや、エルフや妖魔などであればそうでもないのか。
後で妖魔たちにも話を聞いたほうがよさそうだ。
「それでもし効果がなかったら……森の神の信仰はガタ落ちですね」
そう語るポメリィさんの目は、ガラスのように冷えていた。
彼女のあがめている冒険の神は、そんな生贄の姫を助けるための戦いを信徒に求める性格だ。
「森の神殿の神官たちもそれを思ったのだろう。
だから、隣の領主の息子をそそのかしたんだ。
隣の領主の息子が、うちの領主の娘に一目ぼれしたという話は有名だったからな」
つまり、生贄の儀式が行えなかったから、火山が噴火してもしかたがないと?
嘘だろ!?
そいつら、自分たちの面子のために、この町を犠牲にする気なのか!?
本末転倒もいいところだ!
火山が噴火したら、自分たちもおしまいだとなぜわからない!
だが、憤慨する俺にジスベアードはこう告げる。
「たぶん、あの神官たちはそのまま逃げて南の町で別の神を崇めながらのうのうと暮らすつもりだろう」
その言葉に、俺は気の遠くなるほどの衝撃を受けた。
まさか、神を見捨てることを前提で保身に走るとは……どれだけ利己的に生きているんだろう?
「トシキさん、お願いがあります」
そう声をかけてきたのは、ポメリィさんだった。
もしかして、俺にお姫様を助けろというのだろうか?
そうしたいのは俺も同じだが、簡単に頷く事はできないぞ?
だが、彼女は俺の目をまっすぐ覗き込んだままこう告げたのである。
「私を、その南にある町まで連れて行ってください」
むしろ逆じゃないのか?
どうにもスッキリしない話だが、そのもやもやを消すためにはジスベアードから詳しい話を聞かなくてはならないだろう。
だが、なぜか聞きたくない。
普段ならば解決に協力するのもやぶさかではないのだが、なんとなく嫌なのだ。
たぶん勘のようなものである。
そんな俺の感情が顔に出ていたのだろう。
「まぁ、結局のところお前を利用しようとしているのは認めるし、面倒くさいのは分かっている。
だが、聞いてくれ」
そういいながら、ジスベアードは深々と頭を下げた。
やれやれ、厄介だなぁ。
結局こうやって誠意を持って頭下げられる奴が一番苦手なんだよ。
「トシキさん……」
ポメリィさんからも、すがるような目を向けられる。
そんな顔しなくても、さすがにこの状況では断れないって。
「しかたがないな。
聞くよ。 そして利用されてもやろう。
だが、それを当たり前だとは思わないでくれ」
「ありがたい!」
ジスベアードは笑顔と共に顔を上げた。
「まず、この町の抱えている問題だが、単純なものじゃない。
複数の問題が色々と絡み合っている。
そしてその最大の問題は、隣の領地のとの戦争だ」
「うわぁ、嫌な単語が出てきたな」
予想しなかったわけではないが、その面倒な言葉の登場に俺は顔をしかめる。
戦争だの紛争だのって、宗教的な立場にある俺が一番かかわっちゃいけないものだと思うのだが、それは俺が地球の価値観で考えているからだろうか?
そういえば、俺の教育係になるはずだったスフィンクスも戦争に巻き込まれてこっちに来ることができなくなったんだっけ。
戦争という代物は、つくづく俺と相性が悪いようである。
「ちなみに先日の話だが……。
この町の領主の娘がさらわれた。
そしてあの火事は、うちのお姫様をさらった連中が追手の邪魔をするためにやったことなんだ」
本当に、聞いているだけでテンションが下がるよ。
貴族同士でやりあうのはいいけど、そこに関係の無い市民を巻き込むか?
しかも、よりにもよって火災とか無いわ。
追っ手をかく乱するだけなんら、他にいくらでも方法はあるだろうに。
こんな手を使えば、貴族が持つとも大事にしているであろう名誉とやらに盛大な傷がつく。
そんな下策を使っている段階で、ある意味失敗とさほど変わらんぞ。
「……聞くけど、なんで領主の娘なんかさらったのさ」
問い返した声は、自分でもびっくりするほど低い声だった。
でも、それ以上に気分は最悪である。
「あぁ、それなんだがな。
そもそも全ての災いの原因はあれなんだよ」
そういいながら、ジスベアードは詰め所の窓を指差した。
……特に何もあるようには見えないが?
「大きな山が見えるだろ?
この地方はむかしからあの山に脅かされてきたのさ」
「山に? なんでまた」
「あの山には気性の荒い火山の神がいて、何か気に入らないことがあるたびに噴火をするのさ」
そういえば、前にアンバジャックがそんなことを話していたな。
「だが、今は静かに眠っているんだろ?
火山が噴火したのはずいぶんと前だと話を聞いているけど」
「あぁ、森の神が山の神を封印しているからな」
「だったら、みんなあの山に火山の神がいることすら忘れてるんじゃないのか?」
……というか、忘れるのが普通だろう。
だが、そうではない口ぶりだ。
何か理由があるのではないかと思ったやさきに、ジスベアードはその理由を説明しはじめた。
「それがな。
信仰が薄れると封印が弱まって小規模な噴火が起きるんだよ。
そのたびに人々は恐怖によって信仰を取り戻す。
そんなことを何度繰り返して今があるんだが……」
なるほど、町の連中の妙な信仰の深さはソレが原因か。
「だが、最近になって山の頂上から煙が上がるという現象が頻発している。
信仰が弱まっていないのにだ」
「どういうことだ?」
「わからん。
だが、火山の神が眠りから醒めようとしているのは間違いない。
このままでは、火山の神によってこのあたりは人の住めぬ荒野となる。
そこでこの町の領主は、娘を南の山の神と結婚させることで火山の神をなだめようとしたんだ」
「そんな、ひどい!!」
悲鳴を上げたポメリィさんから、ジスベアードが目をそらす。
神との結婚といえば聞こえはいいが、実態は別のものだ。
「……生贄って奴か。
だが、それでどうにかなるのか?」
「わからん。
だが、神の怒りを静める方法としてこれ以上確実なものはないらしい。
森の神の神殿にあった百年ほど前の文献に、同じ事をして危機を乗り越えたと記されていたそうだ」
「馬鹿な。 記録などいくらでも改ざんできるだろ。
あいつらの言うことなんか信用できるものか」
平均寿命の短いこの世界では、百年もあれば当事者は全員死ぬ。
いや、エルフや妖魔などであればそうでもないのか。
後で妖魔たちにも話を聞いたほうがよさそうだ。
「それでもし効果がなかったら……森の神の信仰はガタ落ちですね」
そう語るポメリィさんの目は、ガラスのように冷えていた。
彼女のあがめている冒険の神は、そんな生贄の姫を助けるための戦いを信徒に求める性格だ。
「森の神殿の神官たちもそれを思ったのだろう。
だから、隣の領主の息子をそそのかしたんだ。
隣の領主の息子が、うちの領主の娘に一目ぼれしたという話は有名だったからな」
つまり、生贄の儀式が行えなかったから、火山が噴火してもしかたがないと?
嘘だろ!?
そいつら、自分たちの面子のために、この町を犠牲にする気なのか!?
本末転倒もいいところだ!
火山が噴火したら、自分たちもおしまいだとなぜわからない!
だが、憤慨する俺にジスベアードはこう告げる。
「たぶん、あの神官たちはそのまま逃げて南の町で別の神を崇めながらのうのうと暮らすつもりだろう」
その言葉に、俺は気の遠くなるほどの衝撃を受けた。
まさか、神を見捨てることを前提で保身に走るとは……どれだけ利己的に生きているんだろう?
「トシキさん、お願いがあります」
そう声をかけてきたのは、ポメリィさんだった。
もしかして、俺にお姫様を助けろというのだろうか?
そうしたいのは俺も同じだが、簡単に頷く事はできないぞ?
だが、彼女は俺の目をまっすぐ覗き込んだままこう告げたのである。
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