異世界司書は楽じゃない

卯堂 成隆

文字の大きさ
92 / 121
第一章

第91話 精霊からの罰

しおりを挟む
「うわぁ、えげつないことするなぁ、お前。
 あと、こいつら立場上は味方だからそこのところは頼むよ」

 ジスベアードが、口をへの字にして俺を責める。

 気がつくと、キンキラキン共は全て石になっていた。
 しかもその際によほどの苦痛を伴ったのか、全員がすさまじい形相をしている。
 見てるこっちまで痛い顔になりそうだ。

「いや、無能な味方は有能な敵と同じぐらい厄介だから。
 あと、この状況で喧嘩売ってくるほうが悪いだろ。
 少しは空気読めとしか言うことないぞ」

 取り繕うのも面倒になったので口調を元に戻しつつ、奴の非難に非難を返す。
 どう考えても俺が悪いって状況じゃないだろ。

 すると、ジスベアードはイタリア人かと思うほど手を動かしながら必死でいいわけをした。

「いやいや、この手の中途半端に権力持っているやつにそれを言うのは無茶だろ。
 こいつら、ふだん領主様以外に頭下げる奴いないんだから」

「あぁ、なんか納得。
 何事も中途半端って困るよな」

「ほんとうに……ちょっとだけ偉い人って、嫌な人多いですよねぇ。
 ものすごく偉い人になると、みんなどこかは素敵なところあるんですけど」

 ポメリィさんに同感である。
 それこそ上級貴族なら、上から下まで気を使わないとあっという間に没落するのが分かっているし、そういう教育を受けているものだ。
 こんなヘマをするはずが無い。
 なぜなら、そんなヘマをする馬鹿はとっくに死んでいるからだ。

「……とりあえず、これあとで戻してくれよ?
 お前にはまだ説明してないけど、今この町はちょっと不味いことになっているんだ」

 たぶん、上役連中を元に戻すよう交渉しないと奴の立場がまずいのだろう。
 とはいえ、頼み方が軽いところを見ると、本音はこのままのほうが色々と都合がいいのだと見た。

 あぁ、わかるよ。
 使えない連中が元気に動き回ると下は色々と大変だからな。
 特に非常事態においてはだ。
 ここはひとつ、できないふりをしてできるだけこの状況を引き伸ばしてやろう。
 俺は空気の読める日本人だからな。

「まぁ、できるだけ戻せるようにがんばるわ」

 生ぬるい視線と共に、やる気の無い返事を返しておくと、ジスベアードは視線だけで感謝を返してくる。
 それにしても、胃の調子が悪そうだな。
 こんど、シェーナに胃薬のレシピでも聞いておくよ。

 だが、そこに魔術師の老人が口を出してきた。

「その必要はございませんぞ、御使い様。
 小生が思うに、これは見せしめにするべきかと存じます」

「見せしめ?」

「さようにございます。
 これを見れば、森の神殿の連中もおいそれと手を出す気にはなれんでしょうから。
 あの神殿にいる連中では、精霊様の施した石化の呪いを解くなど逆立ちしても無理でございます」

 そういえば、森の神殿の神官たちの実力については考えたことも無かったな。
 やっぱり、あそこの神官たちってやっぱり生臭でなまくらなのか。

「たしかにそれは都合がいいが、それでは精霊の恐ろしさばかりが人々の間に広まることとなる。
 精霊の友として、それは少し悲しくはあるな」

 恐怖をもって人々を従えるという事は、そういうことだ。
 悪魔として伝えられる存在も、昔は罰を与える神の使いであったという話は珍しくない。
 長い目で見るならば、彼らの呪いは解いてやらねばならんだろう。
 ……まぁ、ちょっとそれが遅れることぐらいは許容範囲ではあるが。

「む、確かに。
 さすが御使い様。
 小生もそこまでは考えが至りませんでしたわい」

「ところで……改めて聞くけど、このキンキラン共は何者なんだ?」

 俺が石になったキンキラキン共について言及すると、すぐにジスベアードが答えた。

「あぁ、こいつらは領主直属の騎士団って奴だ。
 続きは詰め所の中でしようか」

 確かにそのほうがいいだろう。
 これだけ派手な登場をして、することが立ち話ではあまり様にならない。
 生臭い世俗の話になるだろうし、野次馬が集まる前に場所を移したほうが賢明だろう。

 そして自警団の詰め所の中で薄くて色のついたお湯みたいな茶を飲みながら、俺はこの町の二種類の兵士について説明を受けた。

「なるほど、お前らが町の治安を守る警察官なら、奴らは領主の私的な軍隊というわけか」

「そのたとえはよく分からないが、とりあえず俺たち自警団が逆らえない別組織だと理解してくれたらそれでいい」

 おっと、この世界に警察官はないんだったな。

 つまり、ジスベアードたちのような自警団は平民から募った兵士が中心で、町の暴漢を退治するていどの装備しか支給されていない。
 そして領主は別に騎士団をもっており、こちらは代々の士爵や騎士爵といった連中が中心の、戦争ができる装備が与えられた連中ということである。

 そんな奴らにゴリ押しされたら、そりゃジスベアードは逆らえないよな。

「……で、連中については理解してもらえたから、次はこの町の抱えている問題についてだが」

「あー、聞きたくない」

 俺が耳を塞ぐと、ジスベアードにむなぐらをつかまれた。

「聞けよ! 聞いてくれよ!
 お前、神の使いなんだろ!!」

「貴様、それが神の使いに対する態度か!」

 俺の体を遠慮なく揺さぶるジスベアードに、魔術師の老人の怒りの声が飛ぶ。
 まぁ、実際ちょっと遠慮なさすぎだよなぁ。

「まぁ、ジスベアードの態度はおいてといて。
 森の神殿の連中は何してんのさ。
 正直、俺にかまっているぐらいなんだから暇なんだろ?」

 すると、ジスベアードは汚物でも見たかのような顔でこう吐き捨てたのだ。

「あいつ等が動くわけないだろ。
 このままのほうが都合いいんだし」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

処理中です...