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冷房や添い寝の猫の温かさ
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れいぼうや そいねのねこの あたたかさ
猫は寄り添う生き物。飼い主とはつかず離れずの距離感でツンとしていることも多いですが、そこはやはり「離れず」で、何気に寂しがることも多いです。
特に、パソコン打ってるときや電話をしているとき、本を読んでいるとき、キッチンで料理や洗い物をしているときなどのように、飼い主が猫以外のことに集中していると、やきもちを焼くのか、台などの上に乗ってきて手元で邪魔をしたり、足元で抗議の声を上げたりします。
ちなみに、うちでは猫がキーボードを踏まないよう、キーボード上に小さな台(モニター用とは別で買ってきたモニター台)をかぶせているのですが、猫はその台の上、つまり私の視界の前に立ちふさがります。モニターが見えない……
そうした猫は、飼い主が座って休んだり寝転がったりしているとどうするか。静かに歩いてきて寄り添います。そして背中を触れさせて丸くなったり、肢を伸ばして先で触れるようにして寝たりします。
今回はそんな状況を詠んでみました。季語は「冷房」。夏の季語です。
ちなみに、「あたたか」は、「暖か」のように気候を意味する場合は春の季語になります。今回は猫の体温のことを意味しているので季語の扱いにはなりません。
そして俳句作りの過程はというと、まず最初に描こうとしていたのは、後ろ肢の先で触れる情景のほうでした。ソファで座って休んでいると隣のクッションに猫が寝そべり、肢を伸ばして腿に触れてくることがあるのです。触っていると安心するのか、いざというときに蹴ってスライド移動するための壁代わりにしているのかは分かりませんが。
その中で最初にできた形が、次のものでした。
夕涼み猫は後ろ肢でタッチ
ここで季語「夕涼み」を使ったのは、人間のほうがじっとして休んでいる状況を表現する必要があったからです。ただ、同時に問題点もありました。「夕涼み」は木陰や軒先などの屋外の状況であることが多いので、どうやって屋内のことだと示すか、という問題です。
なのですが、ひとまずこの問題点は置いておくことにして、「夕涼み」でどのような形が作れるか、ということを検討しました。それが次のものです。
夕涼みちょこんと触れる猫の肢
夕涼みちょんと触れてる猫の肢
夕涼み猫は背中でちょんと触れ
夕涼みタッチしてくる猫の肢
夕涼み触れる猫の手柔らかく
夕涼みタッチする猫の手の柔さ
夕涼み寄り添う猫の手の柔さ
夕涼み寄り添う猫の手の軽さ
夕涼み寄り添う猫は軽く触れ
いつもやっている語順の変更をここではやっていませんが、これは、「夕涼み」が上の句にあることで状況が見えやすくなっているからです。音数的に他の言葉を上の句に置くのは難しかった、という理由もありますが。
この辺りで、言い方次第では人間のほうが猫に触れにいってるようにも見えてしまう、という問題に気付きます。猫のほうから触れてきたことが分かるのは、「猫は」あるいは「タッチ」が入っている形だけ。
こうして問題点が新たに増えてしまったわけですが、そちらもそちらで置いておいて、一旦、屋外にも見えてしまう問題に取り掛かります。つまり、季語の変更。
まず考えたのは「読書の秋」でした。それが次の2つ。
読書の秋ちょこんと触れる猫の肢
読書の秋静かに触れる猫の肢
季節は夏から秋に変わってしまいましたが、人間が屋内でじっとしていることは表現できます。「静かに」が出てきたのは「読書」からの連想。
あとは中の句以降を「夕涼み」の候補作から引っ張って来ればよし、と一旦は思ったのですが……
よく考えると、うちの猫は読書の最中大人しくしててはくれません。むしろ、以前別の句で「読書の秋」を使ったときのように、本についている紐(洋装本だと「スピン」)や栞の飾りなどを追い掛け回します。
なので、「読書の秋」は没。
代わりに、「冷房」を試してみました。それが次の形。
冷房や添い寝の猫は軽く触れ
冷房や添い寝の猫は手でタッチ
冷房や添い寝の猫の後ろ肢
こうして、季節は再び夏に戻ります。
「冷房」の難点は、それだけでは人間がじっとしている様子を表現できないこと。この点を補うのが「添い寝」です。猫の行動なのに人間の様子も示せるという便利さ。
ただ、「添い寝」を使うにはその後の助詞含めて4音が必要になるので、肢を伸ばして人間に触れている、ということを表現するのは難しくなります。例えば、下の句が「後ろ肢」の形だと、自分が猫の後ろ肢を眺めている、という情景にもなってしまいます。
そこで、どの部位で触れてくるかには拘らないことにしました。妥協してしまっていることにもなりますが、要素を一部削って全体の質を保つのは必要なことですからね……本当は妥協せずに済むだけの表現力が欲しいところなのですが。
ともあれ、こうして今の形「冷房や添い寝の猫の温かさ」が出来上がったわけです。副産物的な話ですが、「冷房」と「温か」を対比できる形になったので、これはこれで満足。
冷房が強すぎることもあるので、猫が寄り添ってくれるとありがたいですね……いやまあ、温度設定を適度に調節できたほうが電気代も安上がりですしエコ的にも良いことなのですが。
猫は寄り添う生き物。飼い主とはつかず離れずの距離感でツンとしていることも多いですが、そこはやはり「離れず」で、何気に寂しがることも多いです。
特に、パソコン打ってるときや電話をしているとき、本を読んでいるとき、キッチンで料理や洗い物をしているときなどのように、飼い主が猫以外のことに集中していると、やきもちを焼くのか、台などの上に乗ってきて手元で邪魔をしたり、足元で抗議の声を上げたりします。
ちなみに、うちでは猫がキーボードを踏まないよう、キーボード上に小さな台(モニター用とは別で買ってきたモニター台)をかぶせているのですが、猫はその台の上、つまり私の視界の前に立ちふさがります。モニターが見えない……
そうした猫は、飼い主が座って休んだり寝転がったりしているとどうするか。静かに歩いてきて寄り添います。そして背中を触れさせて丸くなったり、肢を伸ばして先で触れるようにして寝たりします。
今回はそんな状況を詠んでみました。季語は「冷房」。夏の季語です。
ちなみに、「あたたか」は、「暖か」のように気候を意味する場合は春の季語になります。今回は猫の体温のことを意味しているので季語の扱いにはなりません。
そして俳句作りの過程はというと、まず最初に描こうとしていたのは、後ろ肢の先で触れる情景のほうでした。ソファで座って休んでいると隣のクッションに猫が寝そべり、肢を伸ばして腿に触れてくることがあるのです。触っていると安心するのか、いざというときに蹴ってスライド移動するための壁代わりにしているのかは分かりませんが。
その中で最初にできた形が、次のものでした。
夕涼み猫は後ろ肢でタッチ
ここで季語「夕涼み」を使ったのは、人間のほうがじっとして休んでいる状況を表現する必要があったからです。ただ、同時に問題点もありました。「夕涼み」は木陰や軒先などの屋外の状況であることが多いので、どうやって屋内のことだと示すか、という問題です。
なのですが、ひとまずこの問題点は置いておくことにして、「夕涼み」でどのような形が作れるか、ということを検討しました。それが次のものです。
夕涼みちょこんと触れる猫の肢
夕涼みちょんと触れてる猫の肢
夕涼み猫は背中でちょんと触れ
夕涼みタッチしてくる猫の肢
夕涼み触れる猫の手柔らかく
夕涼みタッチする猫の手の柔さ
夕涼み寄り添う猫の手の柔さ
夕涼み寄り添う猫の手の軽さ
夕涼み寄り添う猫は軽く触れ
いつもやっている語順の変更をここではやっていませんが、これは、「夕涼み」が上の句にあることで状況が見えやすくなっているからです。音数的に他の言葉を上の句に置くのは難しかった、という理由もありますが。
この辺りで、言い方次第では人間のほうが猫に触れにいってるようにも見えてしまう、という問題に気付きます。猫のほうから触れてきたことが分かるのは、「猫は」あるいは「タッチ」が入っている形だけ。
こうして問題点が新たに増えてしまったわけですが、そちらもそちらで置いておいて、一旦、屋外にも見えてしまう問題に取り掛かります。つまり、季語の変更。
まず考えたのは「読書の秋」でした。それが次の2つ。
読書の秋ちょこんと触れる猫の肢
読書の秋静かに触れる猫の肢
季節は夏から秋に変わってしまいましたが、人間が屋内でじっとしていることは表現できます。「静かに」が出てきたのは「読書」からの連想。
あとは中の句以降を「夕涼み」の候補作から引っ張って来ればよし、と一旦は思ったのですが……
よく考えると、うちの猫は読書の最中大人しくしててはくれません。むしろ、以前別の句で「読書の秋」を使ったときのように、本についている紐(洋装本だと「スピン」)や栞の飾りなどを追い掛け回します。
なので、「読書の秋」は没。
代わりに、「冷房」を試してみました。それが次の形。
冷房や添い寝の猫は軽く触れ
冷房や添い寝の猫は手でタッチ
冷房や添い寝の猫の後ろ肢
こうして、季節は再び夏に戻ります。
「冷房」の難点は、それだけでは人間がじっとしている様子を表現できないこと。この点を補うのが「添い寝」です。猫の行動なのに人間の様子も示せるという便利さ。
ただ、「添い寝」を使うにはその後の助詞含めて4音が必要になるので、肢を伸ばして人間に触れている、ということを表現するのは難しくなります。例えば、下の句が「後ろ肢」の形だと、自分が猫の後ろ肢を眺めている、という情景にもなってしまいます。
そこで、どの部位で触れてくるかには拘らないことにしました。妥協してしまっていることにもなりますが、要素を一部削って全体の質を保つのは必要なことですからね……本当は妥協せずに済むだけの表現力が欲しいところなのですが。
ともあれ、こうして今の形「冷房や添い寝の猫の温かさ」が出来上がったわけです。副産物的な話ですが、「冷房」と「温か」を対比できる形になったので、これはこれで満足。
冷房が強すぎることもあるので、猫が寄り添ってくれるとありがたいですね……いやまあ、温度設定を適度に調節できたほうが電気代も安上がりですしエコ的にも良いことなのですが。
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