48 / 50
水撒や窓辺に座る猫の視線
しおりを挟む
みずまきや まどべにすわる ねこのしせん
熱い日が続きますね……
そんなわけで、今回は夏の季語「水撒」からの一句です。
少しでも涼しくなるためにと考え出された日本の文化、水撒き。実際、結構な効果があるようで。私はマンション暮らしなのですが、少しでも冷房の負担を減らせればと、ベランダに水撒きをするようになりました。
マンションだとどれくらいの効果があるのかは分かりませんが……
ともあれ、私が水撒きをするのは大抵うちの猫が窓辺にいる時間帯なので、窓ガラス越しに猫と見つめ合うことがあります。
最初に水撒きしたときは不思議そうに見てましたね……
今回は、こんな状況を句に詠んでみることにしました。
まず、最初にたたき台として用意した形が、こちら。
水撒きの窓に向き合う猫と人
「水撒き」自体が季語ですし、他に登場する要素が猫と窓くらいなので、音数的には余裕があります。水撒きが屋外での行為なので他に外か中かの情報を示す言葉が要らないのも便利なところ。
そしてこの最初の形だと、明らかな音数の無駄まで生まれています。それが最後の「人」。
この「人」というのは俳句を詠んでいる私自身のことですから、わざわざ書かなくていいのです。むしろ、書いてしまったら、詠み手は他の人が猫と見つめ合っている姿を見ている、ということになってしまいます。
ただ、「向き合う」を入れた以上は主体を2つ入れなければおかしくなるので、そこをどうするかが最初の考えどころでした。まあ、これは単純な方法で解決できます。
水撒や窓の向こうに猫の顔
こうすればよいのです。
ただ、これもなんとなく音数を無駄に使ってる感がありました。そこで、猫の動作を入れて色々試してみることにしました。その過程がこちら。
水撒や窓には涼む猫の顔
水撒けば窓には涼む猫の顔
水撒や窓辺の猫と見つめ合い
水撒や窓辺の猫と見つめ合う
水撒けば窓辺の猫と見つめ合い
水撒けば窓から見つめる猫の顔
水撒けば窓枠越しに猫の顔
水撒や窓に見つめる猫の顔
水撒けば窓に見つめる猫の顔
水撒や窓の向こうに座る猫
水撒けば窓の向こうに座る猫
水撒やガラスに透けて座る猫
水撒けばガラスに透けて座る猫
水撒やガラスに透けて眠り猫
水撒けば窓のガラスに眠り猫
水撒や窓辺に座る猫の顔
水撒や窓辺に座る猫の視線
涼む、見つめ合う、見つめる、座る、眠る、という風に、猫の様子を入れています。
そして、上の句も、「水撒や」と「水撒けば」でそれぞれのパターンを試してみました。ひとまず書いて並べてみる、ということができるのが俳句の良いところ。
その過程で気付いたことなのですが……
「水撒や」と「水撒けば」の違い、最初はとりあえず書いてみて直感的にどっちが良いかというのを直感で選んでいました。
が、よく考えるとこれ、名詞と動詞の違いがあるのです。これが、「水撒けばガラスに透けて座る猫」「水撒やガラスに透けて眠り猫」辺りで気付いたこと。
その名詞と動詞の違いが何なのか、というと、例えば「水撒けばガラスに透けて座る猫」の場合、「透けて」と「座る」も動詞なので、一つの句の中に動詞が3つ登場していることになります。一方、「水撒やガラスに透けて眠り猫」だと、動詞は「透けて」の一つだけです。
この、動詞の数というものが、意外に重要でして。
動詞が多いと、Aがあれして、Bがこれして、Cがそれして、といったように、俳句が一つの文章のようにたらたらと流れていく感じになります。これに対し、名詞はそこで文章の流れがすとんと途切れ、インパクトが生まれます。
この、たらたらとすとんをどういう塩梅で混ぜていくかが、ここでのポイント。
そしてこのように考えた結果、「水撒や」ならば「座る猫」、「水撒けば」ならば「眠り猫」が、ちょうどバランスが良いように感じました。
こうして、一旦、「水撒やガラスに透けて眠り猫」に落ち着きます。
が、その後、少し他の形も試してみようと思って「水撒けば窓のガラスに眠り猫」を作ってみたところ、ここまでの形の欠点に気が付いてしまいました。
「ガラスに透けて」と「窓のガラスに」は、どちらも音数の無駄遣いがあるのです。ガラスは透けるものですし、窓にはガラスが嵌っているものですから。
そこで次に考えたのが、「水撒や窓辺に座る猫の顔」。寝ていた猫を起こして座らせました。猫がすやすや寝ている静かさも良いのですが、起きてて興味持ってみてくれている感じがでるのは座っているほうですから。
そして一旦はこれに落ち着こうとしたのですが、また気になるところが。最後に「猫の顔」で終わるのがどうもワンパターンになっているような気がしてきたのです。
ここを悩んで出てきたのが、「水撒や窓辺に座る猫の視線」。
最後6音で字余りになってしまうのですが、「ん」の発音で終わるならば韻律の崩れが小さいのと、「視線」と言っておけば猫が水撒きの様子を目で追っているような印象も出せるかなと考え、こちらを使うことにしました。
……まあ、最近は猫のほうが慣れたのか、水撒きやってもぐだっとしてますが。
それにしても、早く、水撒きが要らないくらいの気温になって欲しいですね……
※本日、アルファポリスでは2句同時公開となります。その理由、なのですが……すみません、この句、アルファポリス版で公開するのを忘れていました(この企画、ノベルアップ+で作成しているものをこちらに転載、という方法で進めていたのですが、残り話数を確認したところ数が合わないことに気付き、確かめてみたところ、8月29日に投稿すべきだったこちらの句の投稿をしそびれてしまっていたようでした。大変申し訳ありません。尚、次話でもお伝えしますが、本日の2句で49句目到達、目標の50句には来週到達、という予定になります(尚、ノベルアップ+版ではサイト内で他の方にご紹介いただいており、その関係で、特別編として4句多めに作っています)。
熱い日が続きますね……
そんなわけで、今回は夏の季語「水撒」からの一句です。
少しでも涼しくなるためにと考え出された日本の文化、水撒き。実際、結構な効果があるようで。私はマンション暮らしなのですが、少しでも冷房の負担を減らせればと、ベランダに水撒きをするようになりました。
マンションだとどれくらいの効果があるのかは分かりませんが……
ともあれ、私が水撒きをするのは大抵うちの猫が窓辺にいる時間帯なので、窓ガラス越しに猫と見つめ合うことがあります。
最初に水撒きしたときは不思議そうに見てましたね……
今回は、こんな状況を句に詠んでみることにしました。
まず、最初にたたき台として用意した形が、こちら。
水撒きの窓に向き合う猫と人
「水撒き」自体が季語ですし、他に登場する要素が猫と窓くらいなので、音数的には余裕があります。水撒きが屋外での行為なので他に外か中かの情報を示す言葉が要らないのも便利なところ。
そしてこの最初の形だと、明らかな音数の無駄まで生まれています。それが最後の「人」。
この「人」というのは俳句を詠んでいる私自身のことですから、わざわざ書かなくていいのです。むしろ、書いてしまったら、詠み手は他の人が猫と見つめ合っている姿を見ている、ということになってしまいます。
ただ、「向き合う」を入れた以上は主体を2つ入れなければおかしくなるので、そこをどうするかが最初の考えどころでした。まあ、これは単純な方法で解決できます。
水撒や窓の向こうに猫の顔
こうすればよいのです。
ただ、これもなんとなく音数を無駄に使ってる感がありました。そこで、猫の動作を入れて色々試してみることにしました。その過程がこちら。
水撒や窓には涼む猫の顔
水撒けば窓には涼む猫の顔
水撒や窓辺の猫と見つめ合い
水撒や窓辺の猫と見つめ合う
水撒けば窓辺の猫と見つめ合い
水撒けば窓から見つめる猫の顔
水撒けば窓枠越しに猫の顔
水撒や窓に見つめる猫の顔
水撒けば窓に見つめる猫の顔
水撒や窓の向こうに座る猫
水撒けば窓の向こうに座る猫
水撒やガラスに透けて座る猫
水撒けばガラスに透けて座る猫
水撒やガラスに透けて眠り猫
水撒けば窓のガラスに眠り猫
水撒や窓辺に座る猫の顔
水撒や窓辺に座る猫の視線
涼む、見つめ合う、見つめる、座る、眠る、という風に、猫の様子を入れています。
そして、上の句も、「水撒や」と「水撒けば」でそれぞれのパターンを試してみました。ひとまず書いて並べてみる、ということができるのが俳句の良いところ。
その過程で気付いたことなのですが……
「水撒や」と「水撒けば」の違い、最初はとりあえず書いてみて直感的にどっちが良いかというのを直感で選んでいました。
が、よく考えるとこれ、名詞と動詞の違いがあるのです。これが、「水撒けばガラスに透けて座る猫」「水撒やガラスに透けて眠り猫」辺りで気付いたこと。
その名詞と動詞の違いが何なのか、というと、例えば「水撒けばガラスに透けて座る猫」の場合、「透けて」と「座る」も動詞なので、一つの句の中に動詞が3つ登場していることになります。一方、「水撒やガラスに透けて眠り猫」だと、動詞は「透けて」の一つだけです。
この、動詞の数というものが、意外に重要でして。
動詞が多いと、Aがあれして、Bがこれして、Cがそれして、といったように、俳句が一つの文章のようにたらたらと流れていく感じになります。これに対し、名詞はそこで文章の流れがすとんと途切れ、インパクトが生まれます。
この、たらたらとすとんをどういう塩梅で混ぜていくかが、ここでのポイント。
そしてこのように考えた結果、「水撒や」ならば「座る猫」、「水撒けば」ならば「眠り猫」が、ちょうどバランスが良いように感じました。
こうして、一旦、「水撒やガラスに透けて眠り猫」に落ち着きます。
が、その後、少し他の形も試してみようと思って「水撒けば窓のガラスに眠り猫」を作ってみたところ、ここまでの形の欠点に気が付いてしまいました。
「ガラスに透けて」と「窓のガラスに」は、どちらも音数の無駄遣いがあるのです。ガラスは透けるものですし、窓にはガラスが嵌っているものですから。
そこで次に考えたのが、「水撒や窓辺に座る猫の顔」。寝ていた猫を起こして座らせました。猫がすやすや寝ている静かさも良いのですが、起きてて興味持ってみてくれている感じがでるのは座っているほうですから。
そして一旦はこれに落ち着こうとしたのですが、また気になるところが。最後に「猫の顔」で終わるのがどうもワンパターンになっているような気がしてきたのです。
ここを悩んで出てきたのが、「水撒や窓辺に座る猫の視線」。
最後6音で字余りになってしまうのですが、「ん」の発音で終わるならば韻律の崩れが小さいのと、「視線」と言っておけば猫が水撒きの様子を目で追っているような印象も出せるかなと考え、こちらを使うことにしました。
……まあ、最近は猫のほうが慣れたのか、水撒きやってもぐだっとしてますが。
それにしても、早く、水撒きが要らないくらいの気温になって欲しいですね……
※本日、アルファポリスでは2句同時公開となります。その理由、なのですが……すみません、この句、アルファポリス版で公開するのを忘れていました(この企画、ノベルアップ+で作成しているものをこちらに転載、という方法で進めていたのですが、残り話数を確認したところ数が合わないことに気付き、確かめてみたところ、8月29日に投稿すべきだったこちらの句の投稿をしそびれてしまっていたようでした。大変申し訳ありません。尚、次話でもお伝えしますが、本日の2句で49句目到達、目標の50句には来週到達、という予定になります(尚、ノベルアップ+版ではサイト内で他の方にご紹介いただいており、その関係で、特別編として4句多めに作っています)。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】結婚式の隣の席
山田森湖
恋愛
親友の結婚式、隣の席に座ったのは——かつて同じ人を想っていた男性だった。
ふとした共感から始まった、ふたりの一夜とその先の関係。
「幸せになってやろう」
過去の想いを超えて、新たな恋に踏み出すラブストーリー。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる