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サバトラの寝姿丸く冬来る
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さばとらの ねすがたまるく ふゆきたる
今回は以前に詠んだ「みんみんみん猫はだらりと伸びており」の対になるような句です。
夏の暑いときは猫はお腹を見せてだらりと眠りますが、冬寒くなると反対に丸く縮まって寝ます。
そこで、猫の寝姿を見て冬の訪れを感じた、という内容の句を詠むことにしました。なんだか寒そうな句になってしまいましたが。
いえ、実際、寒いんでしょうね……
ちなみに句の中に登場するサバトラとは猫の模様の一種で、明るいシルバーグレーと黒の縞模様のこと。「グレー」と表記されますが、見た目の印象はほぼ白、あるいは銀です。
見事なコントラストが写真映えするからなのか、よく、猫餌のパッケージの写真に使われています。
猫の縞模様には他にキジトラと茶トラがあり、これらが入る句は詠んでいたので、せっかくならばサバトラが入る句も詠んでみたいと思っていたところでした。
そして何故今回サバトラを使ったかと言うと、サバトラのグレー部分が冬っぽく見えるからです。
……いえ、これはあくまで個人の印象なので、「そんな風に見えるか!」と仰る方がおられたら白旗を上げるしかないのですが。
黒い部分との対比で真っ白にも見えるぽわぽわの毛並み。この部分が、雪の結晶と言うか、霜が立っている様子と言うか、防寒着の襟や袖に着けるモコモコの部分と言うか……
というわけで、推敲の途中でサバトラを入れるチャンス、と考えた次第です。
ちなみに初期の形はこちら。
愛猫の丸まって寝て冬来る
愛猫の布団に入りて冬来る
この通り、最初はサバトラを使う発想には至っていなかったのです。そこに至ったのは大分進んでからでした。
そしてこの段階で気になっていたことは、音数の無駄遣いが多いのでは、ということでした。猫のことを単純に「猫」とせずに「愛猫」としたのは上の句の5音に収めるためでしたし、2つめの形は「布団」も冬の季語になるので情報の重複があります。
この点に気を付けながら、試しに次の2つを作ってみました。
冬来る猫の寝姿は丸く
冬来る猫の寝姿より丸く
下のほうの「より」は、以前よりも丸くなった、という意味の「より」です。猫が眠る姿として連想されるのは普通丸まった姿なので上の形では意図が伝わらないかな、と思い入れたものでした。
が、この形だと、猫の寝姿よりも丸い何かが冬に存在しているのか、という誤読の可能性が出てしまいます。
そこで以降は、冬が来たことで猫の丸まり具合が強まっている、ということを印象付ける方向性を意識していくつか作ってみました。それがこちら。
冬来る腿に顔寄す眠り猫
冬来る眠り猫さえ縮こまり
眠り猫膝に顔寄せ冬来る
眠り猫腹を隠して冬来る
冬来る丸く縮んだ眠り猫
眠り猫丸く縮んで冬来る
眠り猫日向に縮み冬来る
冬来る日向に縮む眠り猫
冬来る日向に丸く眠り猫
冬来るソファに縮む眠り猫
冬来る毛布に縮む眠り猫
冬来る毛布に潜る眠り猫
冬来る布団にもぐる眠り猫
眠り猫布団に潜り冬来る
眠り猫毛布に縮み冬来る
猫が寒そうに縮まっている様子の表現を手当たり次第に並べ、かつ、語順の入れ替えも同時に行っているので、数はたくさん作れました。
こういうのは割とすぐ出来るんですよね……
そしてここまで来て気付きます。この句、どう足掻いても、猫が寒そうにしていて可哀想な句にしかならないのでは、と。まあ、実際、寒いのでしょうが。
ともあれ、サバトラの存在に思い至ったのはこのときでした。そこで以降、ひとまずサバトラで試してみることに。それが次の形です。
サバトラの丸い寝姿冬来る
サバトラの寝姿丸く冬来る
サバトラや寝姿丸く冬来る
サバトラの丸く眠りて冬来る
2音の「猫」が4音の「サバトラ」になったので他の部分で節約する必要が生まれ、「寝姿」などの表現になりました。
そしてこの形を書いてみて、基本を思い出します。詩で情景をイメージさせるには、使う単語はなるべく具体的なものにしたほうが良いのです。
特に、「猫」と「サバトラ」だと、浮かんでくる映像の鮮明さに違いがあります。というのは、「サバトラ」は模様のことなので視覚ありきのイメージになるのですが、「猫」は視覚に限定せず漠然と「可愛いもの」というイメージを浮かべることも可能な単語なので、その分、映像のほうに意識が向きにくくなってしまうのです。
というわけで、「サバトラ」を使ったのは正解だと判断。
この方向で推敲を続けることにしました。その過程がこちら。
尻尾抱き眠るサバトラ冬来る
尾を抱いて眠るサバトラ冬来る
尾も抱いて眠るサバトラ冬来る
サバトラの尾も抱いて寝て冬来る
尾を抱え眠るサバトラ冬来る
尾も抱え眠るサバトラ冬来る
冬来る眠るサバトラ尾も抱え
冬来る眠るサバトラ抱える尾
今度は、実際に家で寝ている猫、といってもサバトラではありませんが、ともかく猫の実際の寝姿を観察してみることにしました。
その結果、尻尾を体の前に持って来て抱えるように寝ていることに気付き、その表現を入れこんでみることに。
が、これは説明し過ぎと判断しました。詩では説明口調になり過ぎるのも良くないんですよね……
そこで一旦、「サバトラの丸い寝姿冬来る」に戻りまして。
ここから、次の形を考案しました。
サバトラの縮む寝姿冬来る
「丸い」を「縮む」に変更。「冬来る」の辛さを詠むのであればこれも方向性の一つ、とは言えます。
が、そう考えたところ、あまり寒そうなのは可哀そうかな、と思ってしまいまして。
しかも、以前のキジトラ、茶トラの句のことを思い返すと、サバトラだけ辛そうな句にしてしまうのも不公平に感じてしまったのです。
そこで、サバトラの毛並みの鮮やかさに目が向く「サバトラの寝姿丸く冬来る」が復活。こちらを採用することにしました。
ところで、今回寒い情景の句を考えていたところ、野良で生きている猫たちのことが思い浮かびまして……
野良の冬はきっと格段に厳しいのでしょうね。世の猫さんたちには力強く生き延びて欲しいものです。
今回は以前に詠んだ「みんみんみん猫はだらりと伸びており」の対になるような句です。
夏の暑いときは猫はお腹を見せてだらりと眠りますが、冬寒くなると反対に丸く縮まって寝ます。
そこで、猫の寝姿を見て冬の訪れを感じた、という内容の句を詠むことにしました。なんだか寒そうな句になってしまいましたが。
いえ、実際、寒いんでしょうね……
ちなみに句の中に登場するサバトラとは猫の模様の一種で、明るいシルバーグレーと黒の縞模様のこと。「グレー」と表記されますが、見た目の印象はほぼ白、あるいは銀です。
見事なコントラストが写真映えするからなのか、よく、猫餌のパッケージの写真に使われています。
猫の縞模様には他にキジトラと茶トラがあり、これらが入る句は詠んでいたので、せっかくならばサバトラが入る句も詠んでみたいと思っていたところでした。
そして何故今回サバトラを使ったかと言うと、サバトラのグレー部分が冬っぽく見えるからです。
……いえ、これはあくまで個人の印象なので、「そんな風に見えるか!」と仰る方がおられたら白旗を上げるしかないのですが。
黒い部分との対比で真っ白にも見えるぽわぽわの毛並み。この部分が、雪の結晶と言うか、霜が立っている様子と言うか、防寒着の襟や袖に着けるモコモコの部分と言うか……
というわけで、推敲の途中でサバトラを入れるチャンス、と考えた次第です。
ちなみに初期の形はこちら。
愛猫の丸まって寝て冬来る
愛猫の布団に入りて冬来る
この通り、最初はサバトラを使う発想には至っていなかったのです。そこに至ったのは大分進んでからでした。
そしてこの段階で気になっていたことは、音数の無駄遣いが多いのでは、ということでした。猫のことを単純に「猫」とせずに「愛猫」としたのは上の句の5音に収めるためでしたし、2つめの形は「布団」も冬の季語になるので情報の重複があります。
この点に気を付けながら、試しに次の2つを作ってみました。
冬来る猫の寝姿は丸く
冬来る猫の寝姿より丸く
下のほうの「より」は、以前よりも丸くなった、という意味の「より」です。猫が眠る姿として連想されるのは普通丸まった姿なので上の形では意図が伝わらないかな、と思い入れたものでした。
が、この形だと、猫の寝姿よりも丸い何かが冬に存在しているのか、という誤読の可能性が出てしまいます。
そこで以降は、冬が来たことで猫の丸まり具合が強まっている、ということを印象付ける方向性を意識していくつか作ってみました。それがこちら。
冬来る腿に顔寄す眠り猫
冬来る眠り猫さえ縮こまり
眠り猫膝に顔寄せ冬来る
眠り猫腹を隠して冬来る
冬来る丸く縮んだ眠り猫
眠り猫丸く縮んで冬来る
眠り猫日向に縮み冬来る
冬来る日向に縮む眠り猫
冬来る日向に丸く眠り猫
冬来るソファに縮む眠り猫
冬来る毛布に縮む眠り猫
冬来る毛布に潜る眠り猫
冬来る布団にもぐる眠り猫
眠り猫布団に潜り冬来る
眠り猫毛布に縮み冬来る
猫が寒そうに縮まっている様子の表現を手当たり次第に並べ、かつ、語順の入れ替えも同時に行っているので、数はたくさん作れました。
こういうのは割とすぐ出来るんですよね……
そしてここまで来て気付きます。この句、どう足掻いても、猫が寒そうにしていて可哀想な句にしかならないのでは、と。まあ、実際、寒いのでしょうが。
ともあれ、サバトラの存在に思い至ったのはこのときでした。そこで以降、ひとまずサバトラで試してみることに。それが次の形です。
サバトラの丸い寝姿冬来る
サバトラの寝姿丸く冬来る
サバトラや寝姿丸く冬来る
サバトラの丸く眠りて冬来る
2音の「猫」が4音の「サバトラ」になったので他の部分で節約する必要が生まれ、「寝姿」などの表現になりました。
そしてこの形を書いてみて、基本を思い出します。詩で情景をイメージさせるには、使う単語はなるべく具体的なものにしたほうが良いのです。
特に、「猫」と「サバトラ」だと、浮かんでくる映像の鮮明さに違いがあります。というのは、「サバトラ」は模様のことなので視覚ありきのイメージになるのですが、「猫」は視覚に限定せず漠然と「可愛いもの」というイメージを浮かべることも可能な単語なので、その分、映像のほうに意識が向きにくくなってしまうのです。
というわけで、「サバトラ」を使ったのは正解だと判断。
この方向で推敲を続けることにしました。その過程がこちら。
尻尾抱き眠るサバトラ冬来る
尾を抱いて眠るサバトラ冬来る
尾も抱いて眠るサバトラ冬来る
サバトラの尾も抱いて寝て冬来る
尾を抱え眠るサバトラ冬来る
尾も抱え眠るサバトラ冬来る
冬来る眠るサバトラ尾も抱え
冬来る眠るサバトラ抱える尾
今度は、実際に家で寝ている猫、といってもサバトラではありませんが、ともかく猫の実際の寝姿を観察してみることにしました。
その結果、尻尾を体の前に持って来て抱えるように寝ていることに気付き、その表現を入れこんでみることに。
が、これは説明し過ぎと判断しました。詩では説明口調になり過ぎるのも良くないんですよね……
そこで一旦、「サバトラの丸い寝姿冬来る」に戻りまして。
ここから、次の形を考案しました。
サバトラの縮む寝姿冬来る
「丸い」を「縮む」に変更。「冬来る」の辛さを詠むのであればこれも方向性の一つ、とは言えます。
が、そう考えたところ、あまり寒そうなのは可哀そうかな、と思ってしまいまして。
しかも、以前のキジトラ、茶トラの句のことを思い返すと、サバトラだけ辛そうな句にしてしまうのも不公平に感じてしまったのです。
そこで、サバトラの毛並みの鮮やかさに目が向く「サバトラの寝姿丸く冬来る」が復活。こちらを採用することにしました。
ところで、今回寒い情景の句を考えていたところ、野良で生きている猫たちのことが思い浮かびまして……
野良の冬はきっと格段に厳しいのでしょうね。世の猫さんたちには力強く生き延びて欲しいものです。
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