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汪楓白、道士を志すも挫折するの巻
其の五
しおりを挟む「あらあら、可哀そうに……早速、やられてるわよ」
「どうだっていいさ。我々に飛び火しない限りはな」
「それにしても、あいつ、救いようのない阿呆だぜ」
僕の背後では、三妖怪が、人間の声に戻って、ヒソヒソとこんなことをつぶやいている。
そうして三妖怪は、最後には声をそろえて、しみじみと云ったものだ。
「「「よりによって、あの男に弟子入りしようなんて……」」」
ちょっと待てよ? 道士なら僕をどうこう云う前に、まず凶悪な三妖怪を、なんとかすべきだろ! いや、でも……なんか様子がおかしい。だって、神々廻道士は最初、確かにあの三妖怪の名前を、呼んでいたよな……それに三妖怪にしたって、廟から逃げ出すそぶりも見せないし……ハッ! まさか……こいつら全員、グルなのか!? そうなのか!?
「阿呆が……その様子じゃあ、ようやく気づいたらしいな」
神々廻道士は、青ざめ瞠目する僕の顔つきから、僕の内心を察知し、先回りして云った。
「えぇっ!? ってことは……やっぱり、お前ら、グル!?」
「〝お前〟とはなんだ、この野郎!」
――バチ――ンッ!
ひぃ痛っ! 今度は、横っ面を張られたぞ! ヒリヒリと痛む頬を押さえ、睨みつける僕を横目に、神々廻道士は、後方に佇む三妖怪を、ヤケにえらそうな態度で呼び寄せた。
「喂、蛇那! 蒐影! 呀鳥! こっちへ来い!」
啊っ! ほらほら、また名前を呼んだ! やっぱり、まちがいない……仲間なんだ!
「こいつ、餌にしてかまわんぞ」
「へ?」
僕は一瞬、我が耳を疑った。
今……なんて仰いました? 道士ともあろう御方が、本当に今、なんて仰いました!?
『本当っすか!』
『うれしいっ!』
『では早速……』
三妖怪は、またまたうなるような獣声になり、爛々と目を輝かせ、僕の周りへ詰めかけた。舌なめずりする三妖怪に囲まれ、ジリジリと追いこまれ、いよいよ僕は震撼……やむを得ず、神々廻道士に助けをもとめつつも、傲慢不遜なこの男を厳しい口調でたしなめた。
「ま、待ってください! あんた、それでも道士ですか!」
「〝あんた〟とはなんだ、この野郎!」
――ボス――ンッ!
ふぐっ……つかつかと歩み寄った神々廻道士が、今度は僕の腹部に、情け容赦なく拳をめりこせて来た! うっぷ……マジで内臓が、ヤバイって! 僕は苦痛にあえぎ、猛烈な吐き気をこらえながらも、神々廻道士の理不尽かつ暴虐的なやり方を、こりずに非難した。
「あなたは、仮にも道士でしょう? 道教を奉じ、人々を正道へ導くのが使命でしょう! なのに、なんで妖怪なんかに魅入られ、なんの罪もない僕を、こうも苦しめるんですか!」
「だからぁ、云ったろ。面白いから」
くわぁ――っ! 信じられない! こんな男が、道士だなんて……世も末だ! けれど神々廻道士は、ニヤケ顔を突然、鬼の形相に変え、またしても無抵抗な僕に武力行使する。
「……ってか、〝あなた〟とはなんだ、この野郎!」
――ビタ――ンッ!
おへっ……今度は、両手で顔をはさみ打ちされた! 顔が、ゆがみそう……もう嫌だ!
「うぅ、あんまりだ……非道すぎる! それじゃあ、なんて呼べばいいんですか!」
僕は半泣きで、神々廻道士を仰ぎ見、恨みがましい泪声で問いただした。すると神々廻道士は、いかにも勝ち誇った憎らしい表情で、サラリとこんなことを云い放つ始末なのだ。
「偉大なるご主人さま」
唖然……悄然……慄然……呆然……最早、返す言葉もない。
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