神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、鬼憑き芝居に加担するの巻

其の五

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『ギヒィ――――ッ!』
 アレは……あの真っ赤な翼は、《呀鳥あとり》だ!
 辮索べんさくで、木に縛りつけられていた怪鳥は、それを無理やり引き千切り、一旦は天高く舞い上がったものの、次の瞬間には僕の方めがけ、一直線に下降して来たのだ!
 ぎえぇえっ! あんな凶器のカタマリに激突されたら、僕の体なんて、無残な挽肉になってしまう! だけど僕(の体を乗っ取った蒐影しゅうえい)は、物凄い脚力で柩を蹴り、陽光の中で、クルリと身をひるがえし、なんと怪鳥に飛び乗ったのだ!
「チッ! 逃がすモンかよ!」と、忌々しげに、吐き捨てる神々廻ししば道士。
 そりゃあ、そうでしょうね……いやいや、それ以前に、す、凄い! 凄すぎる!
 僕を乗せた呀鳥は、どんどん天空へ舞い上がって往く! 急速に遠ざかる地上、呆然と見上げる人々も、村落を形成する建造物も、まるで豆粒のようだ!
 颯爽と風を切り、澄んだ青空を抜け、鳥の群れを追い越し……とにかく、こんな雄大で、壮大な景色、二度と見られないぞ!
 と、云うか……ちょっと、怖いかも……だって、呀鳥……こんなこと、聞くんだもの。
おい、覚悟はいいか? そろそろ、落下するぞ』
「は!? ちょっ……嘘でしょ!?」
『万事心得済みだ。あとの演戯は、私にまかせておけ』
 僕の背後にピッタリ張りついた影……蒐影まで、とんでもないことを云い出す始末だ。
 すると、まさにその直後だった!
地獄枘じごくほぞ、発射! 喰らえ、邪鬼ども!」
――バシュ――――――ンッ!
 地上から、神々廻道士が肩に担ぎ、発射したのは、【地獄枘】と呼ばれる、鬼の捕縛用巨大もりだった。本来は、【百鬼討伐隊ひゃっきとうばつたい】が用いる特殊な武器だが……何故か神々廻道士は、それを所持していた。一体、どこから入手したんだ?
 いやいやいや、悠長に、そんなことを考えている場合じゃないよ! 呀鳥は完全に片翼をつらぬかれ、飛行困難な状況に陥ってしまった! 
 つまり、僕らは……地上へ真っ逆さま! 墜落するしかないってコト!
 その上、致命傷(?)を追った呀鳥は、真っ赤な羽を火花の如く散らしながら、徐々に形を崩壊させ、魔風にさらわれ、地面に激突する直前で、ついに消滅してしまったのだ!
 ぐわぁあぁぁぁあっ! 今度こそ、絶体絶命だぁあぁぁぁあっ!
「やった! 撃ち抜いたぞ! さすがは、神々廻道士さま!」
「おおっ! 怪鳥が、消えていく! 凄い……なんて凄い功力くりきだ!」
「みなさん、下がって! ここからが本番……師父しふの腕の見せどころです!」
――シュルシュルシュル……ビンッ!
 さらに蛇那じゃなが伸長した辮索が、僕の体に巻きつき、消滅寸前の呀鳥の体から、僕を乱暴に引き離した。勢いよく、中空へ放り出される僕……だが、僕の体を操る傀儡師かいらいし・蒐影は、器用に僕の体を反転させ、地面に着地。身をよじり、辮策を引き千切ろうと暴れまくる。
シャァアァァァァアッ!』
 もうダメだ……あまりに刺激的、かつ衝撃的な事態の連続に、頭がついていけず、僕の意識はまたしても、朦朧とし始めた。
 このまま気絶できれば……と思いきや、どうしても、最後の一線を越えられない。頭の回転はすこぶる悪いのに、かえって目前の景色は、鮮明に見えるという、不可思議な症状に悩まされていた。懊悩もやがて薄まり、一枚膜を張られたような意識の中で、外部の映像を観覧すると云う、ヘンテコな気分になっていた。
 要は、荒唐無稽なお芝居を、磨り硝子越しに観劇しているような感じだ。
『グルルルッ……ゴォオォォォオッ!』
 僕は、獣染みた雄叫びを上げ、神々廻道士へ猛然と襲いかかる。
「さぁ来い! とどめを刺してやる!」
 僕は、神々廻道士の頭上を飛び越え、偃月刀えんげつとうの切っ先をかわす。
「師父! もう、辮索がちません!」
 僕は、神々廻道士の背後から、再び苛烈な突貫攻撃を仕掛ける。
「きゃあぁぁあ! 道士さまぁぁあ!」
 僕は、下半身丸出しのまま、執拗しつこく神々廻道士に挑みかかる。
「好い加減、往生しろぉおぉぉおっ!」
 僕は、牙をむき、ヨダレを垂らし、気狂い染みた絶叫を発する。
『ヴギャアァァァアッ……ググゥ……』
 僕は、神々廻道士の偃月刀で、心臓を刺され、ついに倒される。
 ……ん? これで、お終い?

  〔暗転〕
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