神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、唐突に再婚を迫られるの巻

其の六

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おい、シロ。もう、られちまったかぁ?」
 僕と琉樺耶るかやの部屋へ、突然フラリと神々廻ししば道士が現れた。多分、逃げた蒐影しゅうえいから報せを受けて、僕らの様子を見に来たのだろう。だが、さすがの神々廻道士も、室内の光景を目撃するや、しばし言葉を失った。
 何故なら、ギッシギッシ……と、天蓋つきの寝台を派手に揺らし、掛布を跳ね上げ、僕と琉樺耶は獣の如く、激しくもつれ合っていたのだから!
「な、なんの、ことです? 今は、それどころじゃ、ないんで、あとに……ハァ、ハァ!」
 荒く息つきながら、切れ切れの声で、神々廻道士に問い返す僕。
 琉樺耶は、そんな僕の首にしがみつき、豊満な胸を上下させ、悩ましげな嬌声を放つ。
「ああっ、凄いわ、旦那さま! 男女の交合が、こんなに、善いものだったなんて……私、今日まで、し、知らなかったのぉ! んんっ……気持ちいいっ! もっと、もっとぉ!」
 神々廻道士は、驚き呆れ、背後の闇にひそむ蒐影を振り返っては、長嘆息する。
「こりゃあ、どういうことだ、蒐影」
「そんな、莫迦ばかな! 確かに、あの女賞金稼ぎは、懐剣で、私に襲いかかって……」
 蒐影は、僕らの嬌態に愕然とし、険悪な目で睨む神々廻道士へ、云いわけしようとした。
「懐剣って、これか?」
 足元に転がる琉樺耶の懐剣を拾い、神々廻道士は、いよいよ不機嫌そうに目を細める。
「ハァ、ハァ……それは、ご、誤解でした! 彼女、ただ交合を、怖がってただけで、今では……うっ、ダメだよ、琉樺耶! そんなに腰を振ったら、もう、もれちゃうってば!」
 僕は、蒐影に助勢してやるワケではないけど、琉樺耶とこうなった次第を、神々廻道士に説明せんと……うあぁっ! やっぱ、無理!
 こんな状況下で、理路整然と、説明なんかしてられるか! とにかく、今は琉樺耶に夢中で、そっちへまで、気をやれないよぉ!
「あぁあんっ……旦那さまぁ! 好きぃ! いっそ、このまま突き殺してぇえっ!」
 琉樺耶は、掛布が吹っ飛びそうなほどの勢いで、僕の肢の上で腰を振り続け、絶叫する。
 蒐影は、黒目を見開き、ワナワナと震えている。そして、神々廻道士は――、
「……阿呆クサ、もう寝るわ」
 きびすを返し、大アクビしながら、僕らの部屋を出て往った。
「おかしい……どうして、こんな冴えない男が……琉樺耶ほどの魅惑的な美女に……」
 残された蒐影は、まだ得心が往かない様子。そこへ、衝立の向こうから飛び出して来た茉李まつりが、物凄い剣幕で、黒尽くめの影鬼に詰め寄り、大鉞おおまさかりを振りかざしては、威嚇した。
「ちょっとぉ! 好い加減、おねぇたま夫婦の邪魔を、ちないでよね! 茉李だって、茉李だって……本当は、大好きなおねぇたまを盗られて、ちゅっごく悔ちいんだからぁ!」
 哇々わぁわぁと泣きじゃくる茉李は、大鉞を容赦なく振り回す。
 ブンブンうなる、凄まじい刃音(と、茉李の怪腕)。蒐影は、それを紙一重で避けつつ、僕らの交合を、もっとよく観察しようとしていた。
 しかし……泣きわめく茉李の、執拗な攻撃に音を上げ、ついに寝台へ近づくことをあきらめた。慌てて、茉李をなだめすかす。
「判った! 判ったから、武器を下ろせ! まったく……シロの無様な死に顔を、じっくり拝んでから、屍骸を喰らってやろうと思っていたのに……予想外だ! つまらんな!」
 辛辣しんらつに、それだけ吐き捨てると、蒐影も、ようやく僕らの部屋から出て往ってくれた。
 遠ざかる足音、遠ざかる気配、遠ざかる危機。
 僕と琉樺耶はピタリと動きを止め、掛布をまくって、天蓋の薄い垂れ幕から顔を出した。
「……往きました?」
「……ああ、往ったね」
 僕と琉樺耶の言葉に、過剰反応して、茉李が振り向いた。
「え! 本当にイッちゃったの!?」
「「あいつらが、だよ!!」」
 思わず、怒声をそろえた僕と琉樺耶は、ハッとして互いの口に手を当てた。だけど、あらためて顔を見合せたら、急に気まずくなって、寝台の上、距離を取る。琉樺耶は、紅潮した顔や、半裸の細身を掛布で隠し、僕を意識しないように(かな?)茉李へ話しかけた。
「茉李ったら、本当に耳年増なんだから……どこで、そんな言葉、覚えたんだい?」
「おねぇたまこちょ、演戯が迫真すぎて、茉李……泣きちょうだったよぉ!」
 茉李の云うことは、尤もだった。僕も、ついつい同調してうなずく。
「確かに、琉樺耶さん……経験がないワリに、凄かったですね」
「あんたたち……殺されたいのかい!」
 琉樺耶は耳まで真っ赤に染めて、怒っている。哈哈ハハ、もう怖くないや。こういうところは、やっぱりスレてなくて、可愛いなぁ……も、勿論、凛樺りんかほどじゃないけどね、うん!
「とにかく、これで一時的ではあるけど、奴らを騙せたみたいだね。あとは、あんたを呪縛から解き放し、神々廻道士の弱みを見つけ出し、三妖怪ともども必ず退治してやるよ!」
 熱く意気込んでは、闘志も新たに充填し、拳をにぎりしめる琉樺耶だ。
 そう……僕らは協力して、神々廻道士一味と、対決することに決めたのだ。
 当然、ただいまの交合も演戯だ。琉樺耶が僕にピッタリ抱きつき、首輪を隠してくれたお陰で、神々廻道士も、僕の心裏を読み解くことはできなかったらしいし、まずは一安心。
 打倒・神々廻道士と三妖怪! ……の、第一関門は突破だね。
「え、えぇ……そ、そうですね、哈哈、哈……」
 だけど、問題が、ひとつ……かなり、深刻で、重大な、問題だぞ……これは!
 僕は、琉樺耶が己の裸身を隠すため、グイグイ引っ張る掛布を、逆に引っ張った。
 琉樺耶は、怪訝そうに僕を睨み、さらに掛布を引っ張ろうとする。
 だから、ダメ……ダメだってば!
「どうちたの? 啊! なにか、隠ちてるでちょ――っ! 見ちぇなちゃ――い!」
 まずい……非常に、まずい! 茉李に、勘づかれたぞ! 幼児趣味で露出狂(は、関係ないか)のクセに、どうしてこんなところだけ、目ざといんだ! 本当に、やめてくれ!
「いぃいえ、ちがうんです! ほ、放っておいてください……って、わぁあっ!」
 茉李に、問答無用で掛布をはぎ取られ、僕の元気な下半身は、丸見えになった!
「きゃん! ぴど――いっ! こいちゅ……本当に、おってちゃってるぅ!」
「ひぇ――っ、やめて、そんな云い方! だって、しょうがないでしょう! 琉樺耶さん、演戯とはいえ大胆に体をすりつけて、密着させて……セリフも本当に凄かったんだモン!」
 掛布の片側で体を隠し、戸口へ意識をやっていた琉樺耶は、不可解そうに眉をひそめる。
「どうした? 二人して、なんの話をしてるんだい?」
「見て、おねぇたま! こいちゅってば、ちゅっごいのぉ! 鬼並みで、怖いのぉ!」
 茉李は、僕の、とっても元気な下半身を指差し、恥知らずにも、こうのたまった!
「いやいや! ちっ、ちがっ……これは!」
 僕は両手で隠そうとしたが……手遅れだった。初心うぶな琉樺耶は、僕の怒張したアレを目にするや、硬直し、青ざめ、それから戦慄に身を震わせ……直後、凄まじい悲鳴を放った。
「ひぃっ……きゃあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
 彼女の悲鳴は古びた廟内すべてに響き渡り……(あとで知ったことだが)神々廻道士のみならず、三妖怪のみならず、廟の外の通行人にまで、妙な誤解を与えてしまったとさ。
「あの野郎……ヤワな顔して、意外とヤルじゃねぇか……へへ」
 神々廻道士は、臥所ふしどでニヤリと北叟笑ほくそえみ、その夜はじっくり淫夢に浸ったそう。
「ヤダァ……シロちゃんってば、初めての女を、あんなに鳴かせるなんて、凄いのねぇ!」
 入浴中の蛇那じゃなは、ソワソワと腰から下の蛇身をうごめかし、結局のぼせたそう。
「奴だけ愉しむとは、面白くないな。今からでも戻って、私も美味い思いをさせてもらうか。またぞろ影に忍びこめば、奴に代わって琉樺耶を抱ける。想像するだけで、たまらん」
「やめとけ、やめとけ。おめぇじゃ無理だって。口では色々云ってっけど、おめぇに、女をあそこまで絶頂させる体伎は、繰り出せねぇだろ? 人は見かけじゃなかったんだなぁ」
 広間で酒を酌み交わす蒐影と呀鳥あとりは、僕らの行為を肴に、猥談にふけったそう。
「「「「……それにしても、シロが、あの女賞金稼ぎと、ねぇ……」」」」
 しこうして、神々廻道士と三妖怪は、最終的に同じ感想をいだき、ちょっぴり僕を見なおしたそうです。
 うぅん……喜んでいいのか、哀しむべきなのか、判らなくなって来たよ。
 取りあえず、琉樺耶と茉李が着替えをすませ、部屋から出ていった隙に……すましちゃお。凛樺の不在で、長らく淋しい思いを、させちゃってるからな……今夜は念入りに……。
 ハァ……スッキリ。グゥ……。

  〔暗転〕
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