神さまなんて大嫌い!

緑青あい

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汪楓白、師父の恋路を応援するの巻

其の弐

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「なによ、それ……どういう意味?」
 紗耶さやさんは、呆気に取られ、美しい眉宇をひそめている。そりゃあ、判らないよなぁ。
 ってかさ……別の云い方で、もっとはっきり伝えて欲しいよなぁ。
 ああ、もう! 神々廻ししば道士ってば!
 女心が、全然、判ってないんだから! (男の僕だって、そう思うぞ!)
 だが一方で、いきなり暴虐を受けた太子たいしと、その家臣団が、黙っているはずもなく……、
「た、太子さま! 大丈夫ですか!」
「お怪我は……おおっ、なんと痛々しい!」
「よくも、我々の大切な太子に、非道な真似を!」
「貴様! この尊い御方の素性を、知っての狼藉か!」
 太子の身を案じつつ、狼藉者へ向け、厳しい怒号を浴びせる家臣四人だ。
「くっ……巫山戯ふざけるなよ! いきなり、殴りつけるなんて……私が誰か、判ってるのか!」
 太子自身も当然、烈火の如く怒り、ずぶ濡れ、泥まみれ、痣だらけの無残な姿で、神々廻道士を威喝する。彼の怒りは至極尤もだ。だって、いきなりなんだモンなぁ……この人。
 その上、まだ彼らの神経を、逆撫でするような暴言を、平気で吐くんだから。
「黙れ、青二才! 汚職大臣に、伝えとけ! てめぇが犯した悪行の数々は、この神々廻道士さまが、すべてお見通しなんだよってな! 露見されたくなきゃあ、すっこんでろ!」
 太子は憤激のあまり、ワナワナと激しく震え出した。
「なんだと、貴様……父上のことまで愚弄するとは、もう許せん!」
 家臣四人も、太子と、主君を悪しざまに罵られ、怒り心頭に発した。
「太子に向かって、なんたる暴言! 下郎、まずは名を名乗れ!」
「その上、誹謗中傷で、宮内くない大臣の名誉まで傷つけるつもりか!」
「斯様な奸賊、最早、生かしてはおけん! 今すぐ地獄送りだ!」
「そうだ! 無礼討ちにしてくれる! 命乞いなど、無駄だぞ!」
 次々と抜刀し、神々廻道士を取り囲む。
 それでも彼は動じず、おびえて立ち尽くす紗耶さんへ、手を伸べて優しくささやいた。
哈哈ハハ、そう息むなって。俺さまは真実を述べたまでだ。いいから、紗耶。こっちへ来い」
 しかし、彼女の前に立ちふさがった太子が、直刃すぐはの剣で、神々廻道士へ斬りかかった。
雁萩太夫かりはぎだゆうは、絶対に渡さんぞ! この物乞い道士め、死ねぇ!」
「そりゃあ、こっちのセリフだ! てめぇにだきゃあ、死んでも譲らねぇ!」
「皆の衆! 太子さまに加勢しろ! 彼奴を、嬲り殺しにするのだ!」
「「「承知!!」」」
 まだ偃月刀えんげつとうに手をかけていない神々廻道士へ、一斉に攻撃を仕掛ける太子団。
 紗耶さんは、闘志も見せず佇立する、神々廻道士の死を間近に感じ、ついに絶叫した。
「やめてぇ! 太子さま……劉哥りゅうあにさぁん! 嫌ぁあぁぁぁぁあっ!」
 僕も思わず、手に汗にぎり、裏路地の一戦へ身を乗り出す。
 アレ? ところで……醸玩じょうがんがいないぞ?
 一体、どこに……いや、今はそんなことを、気にしてる場合じゃないよな!
 ところが、まさにその時であった!
 太子の身に、とんでもない異変が生じたのは……、
「うっぬぅ……はぐっ!?」
 突如、腹を押さえて苦しみ出した太子の、異様な姿は、まるで……まるで、そう!
「太子さま!?」
如何いかがなされた!?」
「なにやら、様子が……」
「あっ……啊っ!?」
『グググ……グルルルッ……グギャアォオォォォオッ!』
 鬼憑きだ! まちがいない! あの獣声じゅうせい、あの凶眼、あの爪牙そうが……今にも、完全変態しようとしている!
 家臣四人も、それに気づいた様子で、すっかり恐慌を来たしている!
「た……太子さま!?」
「おぉおっ……お気を、確かに!」
「これは……一体、どうしたこと……ぎゃあっ!」
「ひいっ……あの目つき、身のこなし……ま、まるで」
 さらに、神々廻道士が駄目を押す。
「哈哈、どうやら、鬼に憑かれちまったらしいな」
「「「「なんだと!?」」」」
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