どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい

海亜

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5章:5歳になったらしい

34話:憂鬱な社交界デビュー

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キラキラと色とりどりのお花畑のような衣装を着飾った男女の子供・大人達が皆私の方へ視線を向ける。

私はというと口を開けたり閉めたりを繰り返している。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

AM 7:00

(ついに来てしまった。)

私はベッドから上半身を起こして深い溜息を吐いた。

熱を出した次の日は詰め詰めで習い事を入れてありその日はとても忙しい日をすごした。

色んなことがあったりなかったりしたけれど楽しい一年を過ごせた。

そう、時が経つのは早いもので1年が経過した。

そして、今日は私の誕生日であり社交界デビューの日である。

めでたくも緊張するこの日。

私の気分は絶賛下がり中だ。

陽夏凛さんは来ても50人ほどと言っていたけれどどう考えてもどこをどう考えても・・・・多すぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!!

私は頭を抱えながら小さく暴れる。

気分はどんどん下がる一方で動く気になれなくて10分くらいベッドの上でボーッとしていた。

そのあと、陽夏凛さんが部屋に入ってきてドレスや髪飾りを選んだり薄くお化粧をしたりした。

今日の私の衣装は髪を高めにひとつに束ねてネイビーの薔薇と真珠の飾りのついた髪飾りをつけて緩いカールを巻きドレスは膝下の長さの腰に大きなリボンのついた髪飾りと同じ色のネイビーのドレスを着てお父様から貰ったネックレスをつけている。

このネックレスは私の魔力を封じているのが原因かわからないけれど真珠のように白い玉が今では銀色と瑠璃色の綺麗に混ざった玉になっている。

・・・・今度紅葉に聞いてみよう。

PM 13:00

「璃杏様・・・私たちは大広間の方で控えておりますね。」

そう言って陽夏凛さんは私の元から去っていった。

嫌がっていても時間は進むもので・・・ついに本当に来てしまった!!!誕生日会兼社交界デビュー!!

舞台の袖から見えるのは花畑のように色とりどりの衣装を着飾った男女の子供・大人達が楽しそうに話している光景。

その光景を見て私の心臓がバクバクと早鐘を打つ。

「多すぎだよ・・・50人って・・・多いのわかってたけど多すぎでしょ!?この前で自己紹介するなんてぇぇえええ!!!」

私は大声を出すわけにはいかないのでぐっと我慢して超小声で叫んでいた。

そもそも私は人前で発表をするのが苦手だ。

人の視線が一斉に自分に向くのが怖い。

これを言ったら笑われるのかなとか変な目で見られちゃうんじゃないかとか噛んだらどうしようとか考えちゃって上手く口が回らなくて結局小さい声になっちゃって終わるんだよね~。

ハハハ☆50人の視線が私にムケラレルトイウコトデスカ。

・・・・・・うぅぅぅ精神があああゴリゴリとかき氷みたいに削られていくうぅぅ~!!

そうそう舞台と言っても学校の体育館のステージみたいな高い所じゃなくて普通の床から30センチほどの高さしかない。

私にはそれがいい高さなのかは不明なのだけれど。

私はただ単純に発表とか視線を集めたくないだけだから高さとか関係がないっ!

でも、集まる視線は少しは遮られるのかな?

いや、でも待って・・・たとえ大勢の視線を遮れたとしても数人の視線は感じて目も合う可能性がある。

はっ!!ちょっとこれって・・・・・・・地獄でしかないっ!!!

ど、どどどどうしようぅぅぅ!!

今はお父様が私の誕生日会に来てくれた人達皆の前で挨拶をしている。

私が出るのはお母様が挨拶をし終えてからだ。

お母様はお父様の隣に立っている。

何故だ・・・なぜ私は舞台袖なんだっ!!

お父様の馬鹿っ!なぜ私もパーティーの計画話してくれなかったの!?

サプライズしたかったのは嬉しかったけどさー。

これはさー・・・・・・いらないサプライズだよ!

よく考えておくれよお父様ああ!!

あとから主人公登場方式+一斉に注目が集まる=月鍵璃杏死亡

っていう式が成り立つんだよぉぉぉぉ!

私と皆にサプライズするのはいいけどね親馬鹿するのはいいけどね!!これはなかったー!

・・・・・・・・ふぅ、落ち着け私。今は過去のことを振り返って恨んでいる場合ではない。

ここはポジティブに考えよう!!

もしここでしっかりと自己紹介をすれば友達ができるかもしれないっ!!

大丈夫だよ!私ならできる!!

ぐっと拳をにぎりしめて私は気合を入れると同時にお母様に名前を呼ばれた。

これは私が舞台に出る合図だ。

私は2回深呼吸をして一歩踏み出した。

コツコツコツコツ

私の靴が大広間全体に響き渡る。

辺りはシンッと静まり返っている。

中央に来て私は少し下がっていた視線をあげる。

と・・・大広間にいる全員の視線が私に向いている。

緊張で足が震えそうになる。

私は口を開く───────そして、冒頭に至るのである。

言おうとしていたことが頭から綺麗さっぱり吹っ飛び体は固まり何も出来ないでいる。

お父様とお母様は隣で心配そうな視線を向けている。

ど、どうしよう・・・このままじゃ私が馬鹿にされるのはいいとして月鍵家も笑われてしまう!!

でも、どうすれば・・・・いや、そもそもどうするも何も私が動かなくちゃ今がないのだけれど・・・。

でも、視線が怖くて動けない。

っ!どうすれば・・・どうすればいい?

ぅぅぅぅ怖いけど・・・お父様やお母様が月鍵家の皆には迷惑をかけたくない。

グギギギと固い体を動かしドレスを持ち上げる。

固めの礼をして小さく深呼吸をする。

顔を上げればたくさんの人の視線や顔が合う。

大丈夫・・・大丈夫。

「お、お初にお目にかかります。月鍵家長女として誕生致しました。月鍵璃杏と申します。わたくしの誕生日パーティに来て頂き誠に感謝致します。」

少し噛んだけれどなんとか言えた!!

良かった~。

そんな気持ちで下がり気味だった視線を上げた。

パチパチパチパチパチパチ

拍手が巻き起こる。

けれど・・・・・・周りの視線はどこか違った。

勿論顔は笑顔を貼り付けてあってまるで私の誕生日を喜んでいるようだったけれど。

私に向ける瞳やオーラから“恐怖”が感じとられた。

そうだ・・・そうだった。

私の髪は異質なものだった。

私の脳裏に泥棒男の顔と声が過ぎる。

青ざめた顔をして化け物と叫ぶ。

もしかしたらこの中に私のことを化物と思っている人は少なからずいるかもしれない。

そう思うと何故か無性に悲しくなって憂鬱な気分をさらに憂鬱にした。

パンパンッ

「では、15:00まで皆楽しんでいってほしい。」

お父様が注目させるように手を叩き言った。

この後は来てくれた人一人一人に挨拶をして回る。

気は乗らないけれどこれも社交辞令と言うことで我慢をしよう!

私は気合を入れて一人一人挨拶しに行った。

まさかこれをきっかけにある事実が判明するなんてその時の私は思いもしなかった。
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