シンゴニウム

古葉レイ

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シンゴニウム・24

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「私が君の初めて、根こそぎ奪ってやろうじゃないの」

 もう挑発だ。私の言葉に、さすがの葛城もやや逃げ腰になってきた。ああ、私今テンションやばい。

「いや、エッチの話だけじゃないんだけど」
「当たり前でしょう。でも男女が付き合っていて、いろいろ経験しようとしたら、やっぱりセックスでしょ。あれが一番、お互いを理解できる。大丈夫、私が教えてあげる。私もそんなに経験ないけど、君に教えられる程度には、知っているはず」

 つまり筆おろしを終わらせるという、初経験だ。私の胸の奥がじんとしてくる。何気に、ズボンの奥の、太ももの付け根あたりも熱くなっている。今日の夜、彼とするのか。どうやってしよう。彼に素敵を味あわせてあげなきゃ。

 ちょっとした姉心的な気持ちが、私の感動欲を増長させる。

「私、一度でいいから男の人の初めて奪ってみたかったんだよね? わお、私も初経験じゃない?」
「そんな軽くていいのか?」
「軽くないよ、全然。葛城が真剣だから、私も真剣に考えた結果だよ」

 葛城の呟きに、私は首を捻る。

「さっさと一緒になっておかないと、変に遠慮するでしょ、お互いに」

 自分で言いながら納得する。葛城の喉が鳴り、緊張感が増す。そうだ、この距離感は早く過ぎないといけない。でも、今は、今日はこれこそが大切。

「葛城、こっち向いて」

 私の願いに、葛城がそっと顔を向けてくる。することは一つ。私はそっと顔を寄せていく。手を繋いだまま、そっと顔を寄せると、葛城の方も私に寄ってくれた。瞼を少し閉じながら、そのままそっと、私から彼を覆う。
 顔を斜めにして、彼も逆に倒してきて、吐息を唇で感じる。

「んっ」

 本当に触れるようなキスに、声を漏らしたのは葛城だ。けれどその可愛い声に、きゅんとしたのは私の方。ちゅっと音を立てて私は離れる。
 ゆっくりと顔を放していく。ここはゆっくりと、急ぐのと焦るのとは違う。私の呼吸が彼の前髪を揺らす。彼の頭が俯いている。夜の中、その身はふるふると震えて見えた。

「震えてる?」
「そりゃ、ね」

 目の前に葛城の顔がある。その状態で、私は彼に囁くように言葉を漏らす。「もう一回、しよう」呟き、彼の手が私の背中に伸びてくるのを気配で知る。そっと抱きしめられて、今度は葛城の方からキスをする。二度目のキスは、一度目よりも丁寧だった。

「キスも練習しなきゃ、ね」
「もう一度」
「んっ」

 葛城の唇が私の唇を奪ってくる。今度の声は私から漏れた。葛城は思っていた通り丁寧で、熱い。三度、四度とキスをして、私らは離れた。手はつないだまま、空を見ながら静かに、互いの胸の鼓動を感じて、黙り続けた。

 ○○○

「んっ、相原の唇、熱い」

 部屋に入ってすぐ、私は彼の唇を奪った。玄関で彼が靴を脱ごうとしたところを、上から抑え込んで唇を塞いだ。葛城の手首を私が押さえ付けて、かなり強引なキスをする。

「葛城のも、熱いよ」

 どれだけ飢えていたんだろうと思われそうな強いキスを、私は葛城に施していく。葛城も私につられて、舌を入れてくる。舌を絡め合う強い口付けに、葛城の身体が震えている。私は彼に覆い被さっているので、彼は身動きが取れない。
 彼の手が、私の身体を抱きしめてくる。優しく、力強い腕だ。

 駐車場を出て、私らはコンビニに寄った。それから夜食の追加と、コンドームを買った。彼は恥ずかしそうにしていて、私が買った。店員がつまらなさそうな顔をしていた。幸せそうでしょ、と思いながら、二人で手を繋いでコンビニを出て、車に乗って、彼の部屋へと向かった。

 彼は助手席で、携帯の光を当ててコンドームの箱の説明書きを一生懸命に読んでいた。

 それがちょっと、可笑しかった。
 

「もっと触れていいよ」

 1Kの彼の部屋は確かに汚かった。「ちょっと待ってて」と言われて玄関に置き去りにされそうだった私は、彼の背に抱きついて飛び乗ったわけだけれど、おかげで二人とも、靴は履いたままだ。玄関で倒れたまま、キスをし続けている。やばい私、思っている以上に欲情してる。

「んっ、震えてるね。大丈夫だよ、私は逃げないから」
「むしろ襲われたんですけど」

 彼の失笑に私も笑わずにはいられない。何やってんだろう私、だ。しかし葛城の身体に触れれば更に、気持ちは高ぶっていく。深夜一時、私の心は上がる一方だ。

「ズボン苦しそう」
「相原も胸苦しい?」
「そうだね。服、脱がせてくれる?」

 葛城と私は靴を脱ぎ捨て、玄関の前で倒れたまま、互いの身体に触れている。私が先に触れ、彼もそれに従うように触れていく。彼がその気になっていなければ、私は痴女確定だ。

「君の服、脱がしていい?」

 しかし葛城こそも気持ちは高ぶっているのが伝わってくる。部屋の電気も付けずに私らは抱き合い、互いの服をまさぐり出している。私の熱に、彼が感染し始めている。

 葛城の手が恐る恐る私の服に触れてくる。女の子の服は脱がせにくい。私はゆっくりと、「ここを外すんだよ」「ここを持ちあげて」と教えていく。彼は焦らず、ゆっくりとそれにしたがっていく。
 私も彼の服を脱がしにかかり、二人半裸で抱き合った。熱と熱が伝わってきて、葛城は温かいなと、心臓の音を聞きながら思った。

「相原、次どうしたらいい?」
「舐めてみて……私が見本、って感じで君のここ舐めてみるから」

 彼は奥手というより紳士的だった。焦らず私に聞いてくれるので、お互いの気持ちを確かめるように、じっくり感じられる。私は彼の身体に触れて、そっと舌を伸ばす。

「んっ、ぅ」

 葛城の鎖骨から、胸の先へと唇と舌を添えていく。葛城の身体が震えていて、可愛いなと思った。

「男がされるのって変じゃないのか?」
「どうかな。そうでもないよ。嫌だ?」
「凄くいい。何かぞくぞくする」

 素直に感想を述べる葛城に、私も気持ちが増す。胸を曝け出して、葛城の方へ身を乗り出していく。彼の手が自然と私の方に伸びてくる。胸に、彼の手が振れる。

「あ、手、熱い」
「もっと触れるね」

 葛城が頷き、今度は舌を伸ばしてくる。緊張感。葛城の舌が私に触れる。仔犬のような振れ具合。あまり感じないけれど、これはこれで良い。葛城の頭を抱きながら、互いに気持ち良い部分を教え会っていく。

 二人床の上で、組み合うようにキスをし尽して、更に深く息を吐く。互いに声は押し殺し気味で、囁き声同士の会話になっている。

「ここ気持ちいい?」
「うん、いいよ。もっとして」
 
 葛城に自分の気持ちを伝えながら、私らの夜は更に深みを増していく。


<続く>
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