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新学期編

小西杏は助けてもらいたい

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「なぁ、ちょっと待ってくれよ」

「と、時斗!?」

俺の突入に気づいた五人は、一瞬焦った顔をした

が、俺が一人ということを知ると、嘲笑った。

「あぁ?誰かと思ったら星野じゃねぇか。おぼっち

ゃまが手出ししていいことじゃねぇんだよ」

「なに?ヒーロー気取り?まじウケんですけど!」

「川竹、成瀬、真立に振られたのか?あいつらビッ

チだったりしてな」

「あんたたちやめてよー。笑いが止まんないし」

「てゆかこいつ助けに来る価値ないしー。早くホテ

ル戻ったら?」

これらの事を聞いて、どこに怒ったかもわからない

が、俺はキレた。

「五人集まって、クラスメイトをいじめってか?し

ょうもねぇ事しやがって。杏は俺の班だ。手ぇ出し

たらぶっ飛ばすぞ!」

「あぁ?いってくれんじゃねぇか!」

「三対一で勝てると思ってんのか?」

「いくぞ?」

いうが早いか、男子三人が襲いかかってくる。女子

もニヤニヤしながらこっちを見ている。

こうなったらしょうがない。

俺は向かってくる三人に向かって右手の、、、、

デロデロスライム×10を投げつけた!

説明しよう。

デロデロスライムとは、スター会社一押しのスライ

ム型のおもちゃである。

名前の通り、スライムであり、手のひらでころがし

たり、水に浮かべたりして遊ぶ。

一見赤ちゃんには危なくて渡せないおもちゃではあ

るが、そのスライムは、口に入っても大丈夫な成分

でできており、なおかつゼリーのように詰まらな

い。

大人から子供まで、幅広く遊べるおもちゃなのであ

る。

「うわっ!キモ!」

「なんかくっついたし!」

「フザケンナよ、テメェ!」

ちなみに俺が投げたデロデロスライムは、爺により

作り出された改良版である。辛子が入っているの

だ。

だから当然。

「いってぇ!」

「目にしみる!」

「どこ行きやがった!星野ぉ!」

こうなるよな。

俺は三人の男子が倒れ、女子が駆け寄った隙に、杏

の手を引いて逃げ出した。

格闘術は身につけていない俺は、あそこでもたもた

していたら、おそらくあの後ボコボコにされていた

だろう。

「杏、大丈夫か?」

走りながら杏に尋ねる。

「あ、ありがと時斗」

「何もされてねぇよな?」

「うん。時斗が来なかったら、私、、、」

気が抜けたのか、杏は立ち止まり、座り込む。

「しょうがねぇな。おぶってやる」

「え、そんな、悪いよ」

「いいから」

俺は杏をおんぶしてホテルの部屋に帰った。

時刻は消灯時間を過ぎており、咲と日和は爆睡し、

光と雪もスヤスヤ寝ていた。

「やっと着いたな」

「本当にありがと!時斗!」

「いいって」

話を聞くと、杏は王様ゲームのあと、トイレに行っ

た際、連れていかれたらしい。咲と日和と雪には、

メールでちょっと散歩してくる。と送られたそう

だ。

「まぁ、とりあえず寝ようぜ?あいつらもここまで

は来ねぇと思うし、明日もあるしな」

「う、うん。おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

そう言って布団に入る。

疲れていたのか、はたまた気が抜けたのか、俺はす

ぐに寝入った。






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