食べ残しなんてありえない

三池

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〜3〜

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「んーん。」
少年は声を漏らしながら伸びをし、目を開けた。
「あれ?夢?」
が、隣で眠っている悪魔を見て混乱した。
「え?死んでない?」
ひと通り混乱し終えると、事情を説明してもらうため、悪魔の体を揺らした。
「悪魔さん?悪魔さん!」
何回揺すっても起きない悪魔を呆れながら見ていたが、ふと、その頬に触れてみた。
すると、その瞬間、バチッと目を覚まし、少年と目が合う。
「おはよう。」
「っ!…いや、おはようじゃないですよ。」照れ隠しなのか、少し怒ったように言った。
「ああ、お前が死ななかったことか?それにはちゃんと理由がある。契約違反ではないから安心しろ。」
粋が困惑していると悪魔は続けた。
「人によって魂の質は違う。お前の魂はまだまだ、質が良くない。だから、もうちょっと育てようと思って。」
「育てる?養殖的なこと?」
「うーん。まあ、そんなとこだろうな。魂は心の満足度とほぼ直結してる。一つの結晶みたいになっていて、それがどんどん大きくなって質がいいものになっていくんだ。」
「そっか。僕、質悪いんだ。」
粋のつぶやきに悪魔はきまり悪そうに言った。
「あー、別にお前のせいじゃないよ。」
「うん…。じゃあ、美味しくなったら食べてくれるんだよね。僕、頑張って、美味しくなる。」
少年が真面目な顔で宣言をすると、悪魔は言った。
「人間にこんなの言われたのは初めてだ。やっぱ、なんか面白いな、粋。」
少年は不思議そうな顔をして、笑いころげる悪魔を見つめていた。
しばらくして、少年は悪魔に訊いた。
「まず、魂よりも先に、体を美味しくするには運動だよね。で、ここ、どこ?」
「今さら聞くのかよ。お前専用に作った空間を、魔界の俺の屋敷に転移させただけだ。あとで案内する。敷地内だったらどこ行ってもいいぞ。」
そして、真面目な顔で続けた。
「でも、絶対に敷地外には出るなよ。お前、ぼーっとしてたらすぐ喰われそうだから。」

大広間、中庭、キッチンといろいろな部屋を回った。その中で少年は『え?金持ち?』なんて思っていた。
「えーっと、次は図書室とかどうだ?確か、本嫌いじゃないだろ?」
少年が頷いたとき、どこからか鐘の音のようなものが聞こえた。
悪魔は顔をしかめると、粋にその場で待っているように告げ、玄関に向かっていった。
どうやら来客が来たようだった。
玄関まで行くと、悪魔はドアを開けながら言った。
「セラ、今日は来んなって伝えといただろうが。って、ん…?」
だが、そこには誰の姿もなかった。

「わー!確かに、可愛い顔してんじゃん。」
後ろからそんな声が聞こえ、粋は振り返った。
見たことのない青年が宙を飛びながら粋に話しかけていたようだった。
「うんうん。この幸薄そうな顔、あいつ好きそうだわ。」
粋は、なんだか失礼なことを言われたような気がしたが、それについては触れないことにした。
「あの、すみません。どなたですか?」
「あ、ごめんごめん。忘れてた。」
天使の羽のようなものをはばたかせながら、青年は笑顔で答えた。
「俺の名前は、セラ。ヨナガの親友かな?」
「なにが親友だよ。腐れ縁ってとこだろうが、嘘吐き天使が。」
玄関から戻ってきた悪魔は言い放った。
「えー嘘だなんて、ひどい言い方するなあ。」
セラは笑って粋の方を向き直った。
「粋くん?だっけ。これからよろしくね。」
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