童貞を奪ったら、責任を取れって迫られました

志熊みゅう

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 学園では、すぐに私たちが婚約解消したことが広まった。社交的なエマ嬢は学園で男女問わず、人気があった。エマ嬢を真似て縦巻きロールにする令嬢も多かった。殿下がエマ嬢を卒業パーティーでエスコートすると、「地味でフラれた令嬢」と令嬢たちは私をあざ笑った。

 殿下の卒業後、私はヘアスタイルをダウンスタイルに変え、メイクは自然で碧眼が際立つものに変えた。令嬢たちの流行と違うせいか、私のこのわずかな外見の変化を令嬢たちは「野暮ったい」と陰口をたたいた。

 ――馬鹿ね。私はあえて清楚可憐に見えるよう工夫したというのに。

 派手な女が好きという殿下のような男性もいるが、大抵の男はこういう女の方が好きだ。私は次々と学園の令息たちを堕としていった。カードゲーム感覚だった。上目遣いでしな垂れかかると、簡単に堕ちた。私をあざ笑う令嬢の婚約者もいた。目の前で劣情にあえぎ、愛をささやく男たちを目にするたびに、いい気味だと思った。これは令嬢たちへの復讐だけではない。国によっては純潔が尊ばれる国もある。国外での縁談探しに躍起する父への当てつけでもあった。

 男たちを受け入れると、一時的に心が満たされた。でも心に穴が開いているようで、すぐに空っぽになった。だからむなしいことをしているということは十分よく分かっている。でもやめられなかった。

 今日は生徒会だ。将来の王妃としてしかるべき人脈や人望を得ようと所属したが、もはやその必要性もなくなった。けれど一応書記として役職についているので活動は継続している。

「皆さま、お待たせいたしました。授業が少し長引いたもので。」

 生徒会室に入ると、既に他のメンバーは集まっていた。生徒会長で王家の縁戚にあたる公爵令息のグスタフ、副会長で高名な学者の息子の侯爵令息のカレル、会計で元平民だが大きな商会の息子である男爵令息のコンラート、庶務で空気のように目立たない伯爵令息のルカーシュ。そう私は紅一点。男たちが頬赤らめながら、熱っぽくこちらを見つめている。

 ――男はみんな馬鹿だ。私がルカーシュを除く全員と関係を持っているとも知らずに。

 私は彼らに婚約者たちから得られないものを与えた。グスタフの婚約者は高圧的な他国の姫君。従順でしおらしくした。カレルの婚約者は幼なじみの子爵令嬢。彼女は難しい話が分からないといつもこぼしてる。だから妃教育で学んだ知的な会話で魅了した。コンラートの婚約者は平民の商会の娘。貴族令嬢らしく高貴に振舞った。

 皆、溺れるように堕ちてきた。

 唯一、ルカーシュには決まった婚約者がいない。だから私も興味を持たなかった。彼は学年随一の優等生のカレルと同じくらい成績が良く、学園長の推薦でこの生徒会に入ってきた。でも、もさっとした黒髪で顔の半分が隠れ、どことなく印象に残らない男だった。いつも皆に押し付けられた仕事を黙々とこなしていた。

 今日の生徒会のテーマはサマーパーティーについて。次々と討論を進めていく。私は速記文字で彼らの発言を記録していった。さすがこの国の次代を握る男たちだ。グスタフはリーダーシップに優れているし、カレルは他国の貴族学校を例に挙げてとてもいい案を出す。即座に予算の概算を計算するコンラートも優秀だ。でも、将来国の中枢を担うだろう男たちも色恋の前では無力だ。簡単に狂っていく。

「――今日の議題はここまで。解散とする。」

 会議は日が沈む前に終わった。カレルが待ってましたとばかりに声をかけてくる。

「ミリアム嬢、海外から輸入される鉄鉱石の件で君の意見を聞きたい。今日この後、少し時間あるかい?」

「ええ、もちろんですわ。カレル様。」 

 カレルは男たちの中で唯一政略的な意味合いの少ない婚約だった。学園入学まで婚約者の子爵令嬢・テレザとは相思相愛で仲睦まじかったと聞く。――だけど、今は誰よりも私に沼っている。
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