童貞を奪ったら、責任を取れって迫られました

志熊みゅう

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 こうして私は生徒会の全員とふしだらな関係を楽しむようになった。快楽は空虚な自分を埋めてくれる気がした。生徒会のメンバーは、ルカーシュ以外は、私が他のメンバーとも私が関係を持っていることを知らない。皆が"自分だけが特別"だと信じている。それに生徒会の中は意外とブラックボックスだ。他の生徒たちも中がここまで爛れているとは気づいていないようだ。

 私は少し潔癖なルカーシュとの関係を継続させるために、彼に快楽と羞恥を与え続けた。この前は、裏庭のガゼボで自慰をさせた。人通りが少ない場所だが、耳元で「ルカーシュ、優等生のあなたが、屋外でこんなことしていて誰かに見られたらどうするの?」と囁くと、羞恥に身を震わせ果てた。そんな彼の耳朶に優しくキスを落とすと、恍惚として私を見つめた。完全に堕ちたなと思った。

 サマーパーティーの準備も順調に進んだ。変わったことと言えば、カレルの婚約者であるテレザが生徒会室に自分で作ったというお菓子を差し入れるようになった。テレザはいかにも貴族令嬢といった感じで、茶色の髪を縦巻きロールに、濃い目のメークをしている。焼き色がまだらなクッキーを、必死に作った笑顔で差し出す。私と婚約者に挟まれたカレルは、私が少し切なそうに目を伏せると、迷惑だといわんばかりにテレザを追い払った。私は、テレザが面白おかしく私の陰口をたたいているのを何度か目にしたことがある。そんな彼女が悲しそうな顔して去っていくのが楽しくてたまらなかった。

 サマーパーティーは、グスタフは同級生で縁戚の王女殿下を、カレルとコンラートはそれぞれの婚約者をエスコートする。皆、私に申し訳なさそうにする。私はエスコートをルカーシュに頼んだ。同じ生徒会で、目立たぬもの同士、気に留めるものはいないだろう。ちょうどいい相手だった。

 彼が自分の瞳の菫色のドレスを贈ってきたことに少し腹が立ったが、デザインは本来の私の趣味に近い華美過ぎないAラインのドレスで、デコルテがレースで覆われた上質なものだった。

「今まで自分の趣味で服を選んだことなんてなかったのに、私が好むものがよく分かったわね。」

「……いえ、ただあなたに似合うと思ったんです。」

 今日のルカーシュは髪の毛をきちんとセットしていて、菫色の瞳も、恥じらう中性的な顔立ちもはっきりと分かる。

「それと髪の毛をちゃんとセットしてくるなんて、ルカーシュにしては生意気ね。」

「……変でしょうか?」

「女の子みたいでかわいい顔しているなって思って。」

 思わず、顔をポッと赤くするルカーシュ。

「あら、女みたいって言われてまた興奮しているの?もうすぐ入場よ。今日は男らしくエスコートしてね。」

 赤くなった頬のまま、ルカーシュはしっかりと私の手を取った。

 会場は、学園の講堂。シャンデリアが輝き、この日のために用意された楽団が生演奏を奏でる。彼らは王立の音楽学校の生徒だ。これはコンラートのアイディアだが、格安で招くことができて大成功だ。

「ルカーシュ様、ミリアム様!」

「コンラート!」
 
 コンラートは黒髪の縦ロールの令嬢をエスコートしていた。コンラートのパートナーは婚約者のサーラだ。彼女は貴族ではないので、特別ゲストとしてここに来ている。コンラートの実家と同じくらい大きな商会の娘と聞いてはいたが、大ぶりの宝石をたっぷり身に付け、貴族令嬢顔負けの派手さだ。

「あ!私、あなたのこと知っているわ!地味で王子に捨てられたってご令嬢ね。たしかに華がないわね~。」

 サーラはそう言って笑いだした。ある意味、無邪気なんだろうけど、この娘は貴族社会で生きていけないだろうと思った。

「――サーラ嬢、今の発言は僕のパートナーへの侮辱ととらえます。謝って頂けませんか?」

 ルカーシュが私を掴む手が強くなって、一歩前に出た。慌ててコンラートが止めに入った。

「おいサーラ、ミリアム様は気安く接してくれるが、公爵家の令嬢なんだぞ。恥ずかしいからおかしなことを言うのはやめてくれ。」

「あら!何よ、あなたまで。貴族貴族って。爵位まで買って権威に媚びちゃって。」

 私は、品がないこの女にコンラートが愛想を尽かせていることをよく知っている。だからにっこりと淑女の笑みを浮かべた。

「地味な私が準備した会ですが、どうぞ楽しんで。」

 ルカーシュとともに、コンラートのもとを去る。こうやって会場を見渡すと、縦ロールに似たドレスの量産型貴族令嬢ばかりだ。彼女らに個性というものはないのか?

「失礼な女でしたね。」

「ふふ。ねえ知っている?コンラートは彼女に愛想を尽かせているのよ。」

「……そうですか。」

 彼の言葉が寂しげに震えた。

「あら、妬いているの?私にとってあなたは何でもない存在だと言っているでしょ。」

「……わきまえています。でも、今日は僕がエスコートしているので、一曲目は僕と踊ってください。グスタフでも、カレルでも、コンラートでもなく。」

「ええ。」

 ルカーシュと踊るワルツは息が合って、踊りやすかった。頭でっかちな彼がダンスが上手いとは思わなかった。身体がわざと近づけて、そっとささやく。

「ダンス上手なのね。意外だわ。」

「僕も一応貴族令息ですから。あと少し練習しました。ミリアム様に恥をかかせたくなかったので。」

 一曲目が終わると、生徒会の他の三人が急いで私を取り囲んだ。一足早く私のもとに訪れたカレルと二曲目を踊る。カレルは同じ優等生でもルカーシュと比べてダンスは上手くなかった。何度も足を踏まれそうになるのをうまく避ける。でも彼は私に夢中みたいで、私だけに聞こえる小さな声で「かわいい」「好きだ」とささやいた。 

 曲が終わると同時に、テレザが仲間の貴族令嬢を連れて、駆け寄ってきた。

「ミリアム様!カレル様を返してください。――私には彼しかいないんです。」

「どうぞ。ダンスは終わりましたのでお返ししますわ。」

 私は淑女の微笑で返した。するとカレルは明らかに不機嫌な顔でテレザをにらんだ。そして私の腰に手をまわして抱き寄せた。

「君は令嬢たちと歓談していろと言っただろう?どういうつもりだ。」

「最近は定期のお茶会もおざなり、はじめは生徒会のお仕事がお忙しいのかと思っていました。カレル様は、ミリアム様に懸想されているんですよね?婚約破棄されてかわいそうだから。カレル様はお優しい方です。私は小さい頃からカレル様のことを知っているから分かるんです。そこに取り入ろうとするなんて!」

「分かったような口を利くな。君には論理というものがないのか?全く理屈になっていない。」

 いつも冷静なカレルが声を荒げている。彼らしくない。

「……テレザ様、ご安心なさってください。私の婚約相手は父上がお決めになります。今は国外の王家を考えていらっしゃるようですよ。」

 面倒事は厄介だ。次はグスタフと踊ろう。そう思ってその場を去ろうとすると、グイっと私の腕を掴んで、テレザににらみつけられた。

「……あなた、私のカレルに"何"をしたの?」

「いえ、"何"も?」

「いい加減にしろ。ミリアムに手を出すな。」

 知性派の侯爵令息である彼が、公爵令嬢を名前で呼び、婚約者を威嚇する。これだけでも、十分な醜聞だった。テレザは泣き出して、そのまま会場を後にした。
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