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サマーパーティーからすっかり潮目が変わった。カレルが正式にテレザに婚約破棄を言い渡したのだ。理由はテレザには学者の家に嫁ぐ覚悟がないというもの。確かにお世辞にもテレザの成績は良いとはいえなかった。彼女は学問よりも貴族令嬢の交流を大切にしていたから。特別な才のない子爵令嬢がこの歳で新たな婚約を探すのはなかなか難しい。よくて老貴族の後妻か、新興貴族の妻か。彼らの婚約は本人たちの意志に基づくもので、もともとはお互いに好きあっていた。自分を苦しめた『真実の愛』が目の前で崩れていくのが、とても愉快だった。
いつのまにか、私の通り名は"地味な令嬢"から"毒婦"にランクアップした。私がカレルを寝とったと噂が流れたのだ。以前は聞こえよがしに私の悪口を言っていた令嬢たちも、今は私を見るや逃げていく。嘲笑から畏敬の存在に変わっても、私は空虚なままだった。
カレルのアプローチが激しくなると、グスタフとコンラートはいつのまにか引いていった。彼らも婚約者には満足していない。だが、家のことを考えるとカレルのように無下にはできないのだろう。己の身のふりを考えれば、賢い選択だ。
カレルは婚約破棄のほとぼりが冷めるやいなや、私の父に求婚を願い出た。しかし、父はそれを突っぱねた。それはそうだ。長年妃教育も受けた私を学者の嫁にするわけにいかないのだろう。だが、カレルも諦めが悪い。何度も何度も婚約を願い出た。そしてついに私への接近を禁じられるまでに至った。
結局、カレルは生徒会もやめることになった。せっかく生徒会をコンプリートしたのに、残ったのはルカーシュだけだ。いつも従順な彼に、私は"躾け"を継続した。最近は行為の時に乳首を舐め続けたら、遂に乳首を舐められるだけで達するようになった。私は自分の手で壊したルカーシュが愛おしくて仕方なくなっていた。
「ルカーシュはかわいいね。またイっちゃったの?そんなに気持ちよかった?」
「……ミリアム、好きです。愛しています。」
「もう、変なこと言わないで。あなたが好きなのは私に与えられる快楽でしょう?」
「違う。そんなじゃない。私は本当にあなたを愛している。」
「『愛してる』『好きです』皆そう言うわ。空虚よね。」
「僕は、あなたが抱える空虚さも知っています。でも好きなんです。」
「あなたまで、そんなことを言いだすなんて。興ざめだわ。」
「――ミリアム様、ごめんなさい。余計なことを言いました。」
そう言って、私にしがみつく。飼い主に捨てられまいと纏わりつく犬みたいだ。彼の黒い髪を撫でてやる。
「……このまま言うことを聞いてくれるなら、飼い続けてあげたいけど。」
そう言って、彼の首筋にキスを落とす。
「お願いです。僕を捨てないで。」
「――ずっとは無理ね。私はいずれ国外にお嫁に出されるから。」
押し倒されて、ほの暗い闇を孕んだ菫色の瞳に射抜かれた。
「ねえ、僕の純潔を奪って、性癖をぐちゃぐちゃにして、今更捨てようなんて絶対に許さないから。」
私に必死に縋りつく姿に、ひょっとしたら彼も自分と同じものを抱えているのかもしれないと、背筋がゾクっとした。
ただルカーシュが私に懇願したところで、伯爵家の令息である彼と私が交差する未来はない。もし、あったとしてもその先にあるのは破滅だけだ。こうやって交わることができるのもせいぜい学園の卒業までだろう。自分と同じ闇を内包した瞳を思い出す度に、彼とならこのままどこまでも堕ちていきたいと願ってしまう。
いつのまにか、私の通り名は"地味な令嬢"から"毒婦"にランクアップした。私がカレルを寝とったと噂が流れたのだ。以前は聞こえよがしに私の悪口を言っていた令嬢たちも、今は私を見るや逃げていく。嘲笑から畏敬の存在に変わっても、私は空虚なままだった。
カレルのアプローチが激しくなると、グスタフとコンラートはいつのまにか引いていった。彼らも婚約者には満足していない。だが、家のことを考えるとカレルのように無下にはできないのだろう。己の身のふりを考えれば、賢い選択だ。
カレルは婚約破棄のほとぼりが冷めるやいなや、私の父に求婚を願い出た。しかし、父はそれを突っぱねた。それはそうだ。長年妃教育も受けた私を学者の嫁にするわけにいかないのだろう。だが、カレルも諦めが悪い。何度も何度も婚約を願い出た。そしてついに私への接近を禁じられるまでに至った。
結局、カレルは生徒会もやめることになった。せっかく生徒会をコンプリートしたのに、残ったのはルカーシュだけだ。いつも従順な彼に、私は"躾け"を継続した。最近は行為の時に乳首を舐め続けたら、遂に乳首を舐められるだけで達するようになった。私は自分の手で壊したルカーシュが愛おしくて仕方なくなっていた。
「ルカーシュはかわいいね。またイっちゃったの?そんなに気持ちよかった?」
「……ミリアム、好きです。愛しています。」
「もう、変なこと言わないで。あなたが好きなのは私に与えられる快楽でしょう?」
「違う。そんなじゃない。私は本当にあなたを愛している。」
「『愛してる』『好きです』皆そう言うわ。空虚よね。」
「僕は、あなたが抱える空虚さも知っています。でも好きなんです。」
「あなたまで、そんなことを言いだすなんて。興ざめだわ。」
「――ミリアム様、ごめんなさい。余計なことを言いました。」
そう言って、私にしがみつく。飼い主に捨てられまいと纏わりつく犬みたいだ。彼の黒い髪を撫でてやる。
「……このまま言うことを聞いてくれるなら、飼い続けてあげたいけど。」
そう言って、彼の首筋にキスを落とす。
「お願いです。僕を捨てないで。」
「――ずっとは無理ね。私はいずれ国外にお嫁に出されるから。」
押し倒されて、ほの暗い闇を孕んだ菫色の瞳に射抜かれた。
「ねえ、僕の純潔を奪って、性癖をぐちゃぐちゃにして、今更捨てようなんて絶対に許さないから。」
私に必死に縋りつく姿に、ひょっとしたら彼も自分と同じものを抱えているのかもしれないと、背筋がゾクっとした。
ただルカーシュが私に懇願したところで、伯爵家の令息である彼と私が交差する未来はない。もし、あったとしてもその先にあるのは破滅だけだ。こうやって交わることができるのもせいぜい学園の卒業までだろう。自分と同じ闇を内包した瞳を思い出す度に、彼とならこのままどこまでも堕ちていきたいと願ってしまう。
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