童貞を奪ったら、責任を取れって迫られました

志熊みゅう

文字の大きさ
7 / 8

7. *

しおりを挟む
 サマーパーティーからすっかり潮目が変わった。カレルが正式にテレザに婚約破棄を言い渡したのだ。理由はテレザには学者の家に嫁ぐ覚悟がないというもの。確かにお世辞にもテレザの成績は良いとはいえなかった。彼女は学問よりも貴族令嬢の交流を大切にしていたから。特別な才のない子爵令嬢がこの歳で新たな婚約を探すのはなかなか難しい。よくて老貴族の後妻か、新興貴族の妻か。彼らの婚約は本人たちの意志に基づくもので、もともとはお互いに好きあっていた。自分を苦しめた『真実の愛』が目の前で崩れていくのが、とても愉快だった。

 いつのまにか、私の通り名は"地味な令嬢"から"毒婦"にランクアップした。私がカレルを寝とったと噂が流れたのだ。以前は聞こえよがしに私の悪口を言っていた令嬢たちも、今は私を見るや逃げていく。嘲笑から畏敬の存在に変わっても、私は空虚なままだった。

 カレルのアプローチが激しくなると、グスタフとコンラートはいつのまにか引いていった。彼らも婚約者には満足していない。だが、家のことを考えるとカレルのように無下にはできないのだろう。己の身のふりを考えれば、賢い選択だ。

 カレルは婚約破棄のほとぼりが冷めるやいなや、私の父に求婚を願い出た。しかし、父はそれを突っぱねた。それはそうだ。長年妃教育も受けた私を学者の嫁にするわけにいかないのだろう。だが、カレルも諦めが悪い。何度も何度も婚約を願い出た。そしてついに私への接近を禁じられるまでに至った。

 結局、カレルは生徒会もやめることになった。せっかく生徒会をコンプリートしたのに、残ったのはルカーシュだけだ。いつも従順な彼に、私は"躾け"を継続した。最近は行為の時に乳首を舐め続けたら、遂に乳首を舐められるだけで達するようになった。私は自分の手で壊したルカーシュが愛おしくて仕方なくなっていた。

「ルカーシュはかわいいね。またイっちゃったの?そんなに気持ちよかった?」

「……ミリアム、好きです。愛しています。」

「もう、変なこと言わないで。あなたが好きなのは私に与えられる快楽でしょう?」

「違う。そんなじゃない。私は本当にあなたを愛している。」

「『愛してる』『好きです』皆そう言うわ。空虚よね。」

「僕は、あなたが抱える空虚さも知っています。でも好きなんです。」

「あなたまで、そんなことを言いだすなんて。興ざめだわ。」

「――ミリアム様、ごめんなさい。余計なことを言いました。」

 そう言って、私にしがみつく。飼い主に捨てられまいと纏わりつく犬みたいだ。彼の黒い髪を撫でてやる。

「……このまま言うことを聞いてくれるなら、飼い続けてあげたいけど。」

 そう言って、彼の首筋にキスを落とす。

「お願いです。僕を捨てないで。」

「――ずっとは無理ね。私はいずれ国外にお嫁に出されるから。」

 押し倒されて、ほの暗い闇を孕んだ菫色の瞳に射抜かれた。

「ねえ、僕の純潔を奪って、性癖をぐちゃぐちゃにして、今更捨てようなんて絶対に許さないから。」

 私に必死に縋りつく姿に、ひょっとしたら彼も自分と同じものを抱えているのかもしれないと、背筋がゾクっとした。

 ただルカーシュが私に懇願したところで、伯爵家の令息である彼と私が交差する未来はない。もし、あったとしてもその先にあるのは破滅だけだ。こうやって交わることができるのもせいぜい学園の卒業までだろう。自分と同じ闇を内包した瞳を思い出す度に、彼とならこのままどこまでも堕ちていきたいと願ってしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

最強魔術師の歪んだ初恋

黒瀬るい
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。 けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

元上司に捕獲されました!

世羅
恋愛
気づいたら捕獲されてました。

【完結】私は義兄に嫌われている

春野オカリナ
恋愛
 私が5才の時に彼はやって来た。  十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。  黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。  でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。  意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

処理中です...