ねえ殿下、私に堕ちてきて~ポンコツと噂の廃嫡王子を籠絡したい

志熊みゅう

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こんなはずでは

3. 第四騎士隊の派兵

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それから数日後、王都から騎士隊が派遣されてきた。騎士団には大きく分けて五つの部隊がある。近衛警備を主任務とする第一騎士隊、国家公安と治安維持を担う第二騎士隊、国防を担当する第三騎士隊、魔獣討伐を専門とする第四騎士隊、そして、諜報活動を主任務とする第五騎士隊。もちろん、今回派遣されてきたのは第四騎士隊だ。

「このたびは遠路、辺境の地までお越しいただき感謝いたします。ブロワ侯爵代理のエリカ・ブロワですわ。」

「これはこれは、ブロワ侯爵代理。ご無事で何よりです。第四騎士隊の隊長、ナタン・モランです。以後、よろしくお願い申し上げます。」

第四騎士隊は騎士隊としてはかなり小規模だ。これで全員なら四十人くらいだろうか。この人数なら、我が領の私兵用の兵舎で事足りるだろう。

騎士隊一同を兵舎に案内し、隊員たちに今回のスタンピードで発生した魔獣の種類と特徴、この辺りの地形、さらに近辺に出没する可能性がある魔獣について、一通り説明を行った。一応学園入学前にこの領地について叩き込まれている。これくらいは朝飯前だ。

すると、さらさらの金髪に紫色の瞳の青年が手を挙げ、立ち上がった。王都でも見たことがないくらい整った容姿で、思わず見入ってしまった。

「ヴィクトル・ルミエールだ。今の話だと魔獣の生息地とスタンピードで大量発生している魔獣に矛盾があるように思うが。」

誰かと思ったら、この国の王子様だ。三年前に"ある事件"を起こして、廃嫡になった"ポンコツ王子"。できる限り顔に表情を出さないように、アルカイックスマイルを決める。

「殿下、ご質問ありがとうございます。実は父も同じところに引っかかっておりまして、――これは人為的なスタンピードの可能性があります。」

隊員たちがざわついた。

「あくまで、父の見立てですが、何らかの魔法効果を帯びた上級魔獣の死肉が今回のスタンピードの発生源ではないかと。」

「……ふむ。ではブロワ侯爵からも直接話を聞きたい。」

「はい、もちろんです。ただ現在、体調を崩しておりますので、面会は少人数でお願いします。」

「分かった。モラン隊長と二人で行く。」

「承知しました。」

「それと――この町の結界だが、ざっと見ただけでも緩んでいる箇所がいくつもあった。後日、張り直してよいか?」

「大変助かります。お願いします。」

殿下の申し出に頭を下げながら、ふと気づいた。たしかうちの城と城下町の結界って、先王のブロワ領行幸の際にかけて頂いたって聞いたけど、それから特別な手入れもせず、そのままになっている。

この国の王位継承の条件の一つに魔法属性が光であることが挙げられる。殿下ももちろん光属性だ。光魔法は魔獣の浄化に結界、あと治癒魔法を操ることができる。光属性であれば誰であれ結界の小さなほころびくらいは補修は可能だが、町全体の結界を張り直すには強大な魔力が必要だ。"ポンコツ"と言われているけど、殿下も王族。魔力は強いのだろう。とてもありがたい話だ。
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