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第2話
初めての「温もり」と、消えない幻
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湯気のこもった狭い浴室で、オレは震える手でシャワーを莉愛に向けた。
白い肌に水滴が弾け、陶器のような質感が露わになる。記憶を失い、赤子のように無防備な彼女は、オレに身を委ねてじっとしている。
「……あ、あつくないか?」
「……はい。あったかい、です……」
莉愛が小さく呟く。その声の響きさえ、オレにとってはアニメの特等席で聴くプロの声優の演技より、ずっと鼓膜を震わせた。
彼女の体を洗ってやる。細い背中に、石鹸の泡を滑らせる。
だが、正面に回った瞬間、オレの指先は凍りついた。
薄い鎖骨の下、そこにはやはり、現実のものとは思えない圧倒的な質量の胸が鎮座していた。
スレンダーな肢体には不釣り合いなほどの、重たげな膨らみ。指を触れれば、吸い付くような柔らかさと、トク、トクと刻まれる彼女の鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「っ……」
下腹部に熱い塊が込み上げるのを必死で抑え、オレは彼女の体を拭い、自分の予備の白いワイシャツを着せた。
ぶかぶかの袖、太ももの中間まで隠れる裾。
だが、胸のボタンだけは、そのボリュームに耐えかねて今にも弾けそうに引き絞られている。
「……マスター、これ、いい匂いします」
莉愛が自分の袖に顔を埋め、オレの洗剤の匂いを嗅ぐ。その無邪気な仕草に、オレは直視できず目を逸らした。
その夜、オレは一睡もできなかった。
狭いワンルーム。布団を莉愛に譲り、オレは床に座り込んで彼女の寝顔を眺めていた。
時折、莉愛が寝返りを打つたび、ワイシャツの隙間から柔らかな肌が覗く。
(これは、夢なんじゃないか……?)
明日目が覚めたら、部屋にはまたオレ一人の、アニメのポスターに囲まれた日常が戻っているだけではないか。そんな不安が、胸を締め付けた。
翌朝、カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
莉愛はまだ眠っている。オレは台所に立ち、ぎこちない手つきで食パンを焼き、インスタントのコーヒーを淹れた。
香ばしい匂いに誘われるように、莉愛が目を覚ます。
「おはよう、莉愛。……食えるか?」
「……おはよう、ございます。マスター」
トーストを小さくちぎって口に運ぶ彼女。その唇が動くたび、昨日拾ったのが幻ではなかったのだと、少しずつ実感が湧いてくる。
「会社に、行ってくる。……ここで、待っててくれるか?」
「はい。待ってます、ずっと」
その言葉を支えに、オレは後ろ髪を引かれる思いで玄関を出た。
仕事中も、莉愛のことばかりが頭をよぎる。会議の資料も、上司の小言も、すべてが遠い世界の出来事のようだった。
(帰ったら、もういないかもしれない。警察に保護されたか、あるいは、ふっと消えてしまったか……)
不安に駆られ、定時と同時に駆け足で帰路についた。
アパートのドアを開ける。
「……ただいま」
恐る恐る声を出すと、朝、オレが貸したワイシャツ姿のままの彼女が、ちょこんと椅子に座ってこちらを向いた。
「おかえりなさい、マスター」
夕闇に包まれた部屋で、莉愛が初めて、ほんの少しだけ口角を上げて微笑んだ。
その瞬間、オレの心の中の何かが、決壊したような音がした。
それから、少しずつ「日常」が積み重なっていった。
莉愛は、洗濯物の畳み方を覚え、簡単な皿洗いを手伝ってくれるようになった。
慣れない手つきで包丁を握り、キャベツを刻む彼女。
その横顔を眺めながら、オレは思う。
この「真っ白なヒロイン」を、もっとオレの色に染めたい。
もっと、俺なしではいられない体に、心に、作り変えていきたい――と。
白い肌に水滴が弾け、陶器のような質感が露わになる。記憶を失い、赤子のように無防備な彼女は、オレに身を委ねてじっとしている。
「……あ、あつくないか?」
「……はい。あったかい、です……」
莉愛が小さく呟く。その声の響きさえ、オレにとってはアニメの特等席で聴くプロの声優の演技より、ずっと鼓膜を震わせた。
彼女の体を洗ってやる。細い背中に、石鹸の泡を滑らせる。
だが、正面に回った瞬間、オレの指先は凍りついた。
薄い鎖骨の下、そこにはやはり、現実のものとは思えない圧倒的な質量の胸が鎮座していた。
スレンダーな肢体には不釣り合いなほどの、重たげな膨らみ。指を触れれば、吸い付くような柔らかさと、トク、トクと刻まれる彼女の鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「っ……」
下腹部に熱い塊が込み上げるのを必死で抑え、オレは彼女の体を拭い、自分の予備の白いワイシャツを着せた。
ぶかぶかの袖、太ももの中間まで隠れる裾。
だが、胸のボタンだけは、そのボリュームに耐えかねて今にも弾けそうに引き絞られている。
「……マスター、これ、いい匂いします」
莉愛が自分の袖に顔を埋め、オレの洗剤の匂いを嗅ぐ。その無邪気な仕草に、オレは直視できず目を逸らした。
その夜、オレは一睡もできなかった。
狭いワンルーム。布団を莉愛に譲り、オレは床に座り込んで彼女の寝顔を眺めていた。
時折、莉愛が寝返りを打つたび、ワイシャツの隙間から柔らかな肌が覗く。
(これは、夢なんじゃないか……?)
明日目が覚めたら、部屋にはまたオレ一人の、アニメのポスターに囲まれた日常が戻っているだけではないか。そんな不安が、胸を締め付けた。
翌朝、カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
莉愛はまだ眠っている。オレは台所に立ち、ぎこちない手つきで食パンを焼き、インスタントのコーヒーを淹れた。
香ばしい匂いに誘われるように、莉愛が目を覚ます。
「おはよう、莉愛。……食えるか?」
「……おはよう、ございます。マスター」
トーストを小さくちぎって口に運ぶ彼女。その唇が動くたび、昨日拾ったのが幻ではなかったのだと、少しずつ実感が湧いてくる。
「会社に、行ってくる。……ここで、待っててくれるか?」
「はい。待ってます、ずっと」
その言葉を支えに、オレは後ろ髪を引かれる思いで玄関を出た。
仕事中も、莉愛のことばかりが頭をよぎる。会議の資料も、上司の小言も、すべてが遠い世界の出来事のようだった。
(帰ったら、もういないかもしれない。警察に保護されたか、あるいは、ふっと消えてしまったか……)
不安に駆られ、定時と同時に駆け足で帰路についた。
アパートのドアを開ける。
「……ただいま」
恐る恐る声を出すと、朝、オレが貸したワイシャツ姿のままの彼女が、ちょこんと椅子に座ってこちらを向いた。
「おかえりなさい、マスター」
夕闇に包まれた部屋で、莉愛が初めて、ほんの少しだけ口角を上げて微笑んだ。
その瞬間、オレの心の中の何かが、決壊したような音がした。
それから、少しずつ「日常」が積み重なっていった。
莉愛は、洗濯物の畳み方を覚え、簡単な皿洗いを手伝ってくれるようになった。
慣れない手つきで包丁を握り、キャベツを刻む彼女。
その横顔を眺めながら、オレは思う。
この「真っ白なヒロイン」を、もっとオレの色に染めたい。
もっと、俺なしではいられない体に、心に、作り変えていきたい――と。
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