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序
4.話が急展開すぎて、正直ついて行けてません。
しおりを挟む取り敢えず、翌日まで様子を見ていたが特に何もなかったので、いつも通り昼は裏庭へ行く事にした。
あの事があってなのか、俺は自然にノートの持ち主で間違いないであろう彼を目で追う。
心なしか顔色が悪いし、落ち着きがない…
あの後、何かあったのか?と心配になった。
そして、昼…俺は普段と変わらないように努めた。自分で言うのもなんだが、偉いと思う。
彼が俺の後をつけて来ている事をバレないように細心の注意をはらいながら確認する…
俺の後をつけて来るのは日課のようだ…いつもは全く気づかなかった気配だが…今日は凄くその気配を感じる。
心ここにあらず…と言ったところか…
不審に思われないように弁当を広げた。彼は相変わらず挙動不審だ…少し可愛く思えた。
自分の能力を駆使して逃げられないように回り込むと声をかけた―…
★
それがなぜ、こうなった?
結果的に言うと、その日からボッチ飯ではなくなった。名前は「リン」というらしい…
そして、知り合って暫くした頃から弁当も作ってくれるような仲になっていた。
使用人の弁当も美味いが、リンの弁当も凄く俺の口に合う。良い嫁になるだろうと思ってしまうくらいには美味しいという事だ。
俺と居る時はハイテンションでマシンガントークをしてくる。他の者の前だと普通なテンションであり、マシンガントークもしない…
しかも、俺と居る時の話題の殆どは、いかに『ウィル様』が素敵であるかの話だ。ソレを熱弁する…
正直、反応に困る…
『誰だよそれ…誰の事を言ってるんだ?』と思うのが殆んどである。
リンが俺を見る時の目には『素敵に見えるフィルター』が何重にも重なっているらしい…という事で納得しておく…
最終的には「ふーん」とか「そうか」やら「それで?」など「わかった」、「良いぞ」などの言葉をローテーションで使い返事をするまでになった。
いや、だってほら…アレだ!リンが語る『ウィル様の素敵談』を真剣に聞くと恥ずかしい思いをする!だから仕方ないと思ってほしい…
本人はそれで満足しているようなので、そっとしておく事にした。
そして、その日からリンは俺の後をついて回るようになった。狐だけど小型犬に見えてしまうのは末期なのだろうか…
よく分からないが公認になったとかなんとか言っているようだ。
取り敢えず、人生初の友だちをゲットしたのだった…
★
そして、リンとの出会いから数ヶ月たった頃…
相変わらず、リンは俺に向かってウィル様、ウィル様と話しかけてくる。
別に嫌な気もしないのでいつも通り適当に相槌を打っていたのが悪かったのか…
「本当ですか!?」というリンの声に現実へと引き戻された。そして、その勢いに押されて「ああ…」と返事をしてしまい、聞き返す事ができなかった…
俺は一体、何に返事をしてしまったんだ!と焦っていたが、内容は帰ってから嫌というほど理解した…
「ウィル、来なさい」と威厳たっぷりに言い放った親父の後について行った。
何でも『混血の狐族』の1つである家系の長男との正式な婚約の打診があったらしい…長男の名は『リン』…
聞き覚えのありすぎる名だ…
その正式な文書の最後に「これが、息子の妄想でない事を願います」などと書かれていた。
素早く文書に目を走らせた俺は安心した。どうやら『婿』として行くらしい…それが意味するのは『孕ます側』だという事…
俄に信じられないと言ったような親父の口振り…
本来、『混血』の者が『純血』の者の元へ嫁ぐ事は赦されない…これは暗黙の了解みたいなものだな…
この場合、俺が行く方が妥当だろう…まぁ、普通ならソレも有り得ないんだけど…
「本当に承諾したのか?」
そう言って訝しげにこちらを見ている…
その様子に今日、リンが「本当ですか!?」と言っていた意味を正しく理解した瞬間だった。
いつも通り適当に相槌を打っており、その時に承諾したのだろう…
適当に返事をしたとはいえ、リンをどうしたいのか、リンとどうなりたいのか…リンをどう思っているのかを考えてみる…
確かにリンは可愛い…女と間違ってしまいそうになるくらいには…その上、小柄であり華奢であり、その存在は庇護欲を掻き立てる…
俺的にはここが一番重要だが―…彼は俺を避けない稀有な存在である。しかも、全身全霊で好意を向けてくる…それを悪く思ってない自分が居るのも確かだ…いや、寧ろ好ましく思っている。という方が正解かもしれない…
それに、いずれは誰かと番わなくてはならない…ならば、この機を逃す手はない…
「お前に心当たりがないのなら…」
そう言った親父の声音は不穏なものだった。その不穏な空気にギョッとした俺は慌てて承諾をした事を話した。
いや、だってねぇ…今にもその『狐族』消しに行きそうだったんだ…そんな事はさせない…
いつもの事とはいえ、適当に相槌を打っていた自分が悪い…まぁ、そのお陰でリンの事を改めて考える機会となり、己の心を知ることができたんだけど…
『責任は取るぜ』という意味を込めて親父を見据える…
すると、俺の前に立ち、静かに腕を振り上げると、勢いよく振り下ろしてきた…鈍い音と共にありがたくない痛みが俺の脳天に走る…
親父の拳骨を脳天に頂くことになった…凄く痛い…
痛ぇな!クソジジイ!と叫ばなかっただけ偉いと思ってほしい…
そんな事をしていたら間違いなく流血沙汰だ。どちらも無傷では済まないだろう事は容易に想像できた。
まぁ、親父の言いたいことも分からなくはない…由緒正しき家系だしな…
息子の幸せよりも、『純血』である事の方が凄く大切なのだろう。この両親は…ま、俺はどうでも良いけどな。
それに、『純血』が『混血』と『婚礼の儀』を執り行った前例も数百年以上ないようだ…
まぁ、俺には計り知れないナニかがあるのだろう。
数百年前には『純血』と『混血』が『婚礼の儀』を執り行った事もあったんだろう?と言った所で到底、納得できるわけもないのだろう…
俺はどうでも良いけどな。大切なので2回言っておく。
あいにく俺は家を継ぐ気もないし、兄のスペアでしかない。
俺を後継者に推す声もなくはないが、全く興味がない。
ぼんやりと他人事みたいに思考していると、母親が動いたのが視界に入った。
母親は尚も俺に殴りかかってくる親父を止めに入る。
そして、なぜ、承諾したのかと聞かれれば、「俺の嫁に相応しいから」と、せめてもの抵抗として、上から目線の発言でそう答えるしかない。
その俺の言葉を聞いて、さらに拳を握り込んだが、母親の制止により止まった。
止めたと言っても、俺を心配…というより、これ以上騒ぎが大きくなれば噂がたつ。使用人の口から何を自分たちの親族―…『一族』たちに伝えられるか分からない…これ以上、不名誉な噂を広げられたら困るからだろう。
簡潔に言うならば、世間体が大切…と言ったところか…
★
結論から言うと、「お前みたいな愚息なんぞ要らん!一族の恥晒しが!」と吐き捨てられた俺は『婚礼の儀』の後に一族から除名される事になった。
『狐族』の伴侶となるので、『狼のウィル』という肩書きだけしかなくなる…
『純血』である俺の生まれが上級すぎたのか、親父がブチ切れて絶縁宣言までされたのだ…
母親は静かに目を閉じてこちらを見ようともしなかった。
いつの間にか騒ぎを聞き付けて使用人やら兄やらが来ていたが、心が動く事もなかった…
長年、世話をしてくれていたメイド兼乳母1人と執事1人がついてきてくれる…という事になった。ちなみにこの2人、番同士だったりする…
その2人が親父に土下座で直談判した時には凄くびっくりした。
まさか、ついて来ようとする者が居るとは思わなかったからだ…
「貴様ら『混血の狐族』に―…我が一族より下等な者に仕える事になるんだぞ!誇りはないのか!」
なんて怒鳴り散らしたが…使用人たちは至って冷静だった。
「旦那様、お言葉ですが、私どもにも仕えるべき主を選ぶ権利くらいはあります」
「長年、私はウィル様にお仕えしておりました。我々は内面を見て、仕える主を選びます。認めたその主に仕える事こそ、私どもの至上の喜びでございます」
その台詞を聞いた時、思いがけず泣きそうになった。
俺にとってはこの2人が育ての親だから…そんな2人から言われて嬉しくないはずもないが…
俺はまだ中学生である。「収入なんて無いし、給料なんて払えないぞ」と言ったが、この2人は譲らなかった。
「ウィル様、ご心配には及びません」
「主にご迷惑をおかけする気は毛頭ありませんので安心して下さい。そして、これからもお側でご成長を見守らせてください」
そう言って頭を下げた2人に俺の方が折れた。
兄はその光景を鼻で笑っていたが…どうでも良かった。寧ろ、まだ居たのか程度であった…
*
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