アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ

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Another Story〜求めるアルファと求められるオメガ。〜

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 神無月本家の時期当主として小さい頃から英才教育を受けてきたが、全てを終えるのに時間はかからなかった。

 コレがアルファってヤツか…というのが俺の感想だった…

 何故、本家と呼ばれるのかと問われれば、鬼と番った人物がこの血筋から出たからである。
 俺は全く興味など湧いてくる事は無かったし、『あぁ、そうか』くらいの認識だった。

 この血筋に生まれただけで時期当主だのなんだのと、望んでもいないのに祭り上げられ、挙げ句、英才教育である。
 選ばれし血筋みたいに思われがちだが、それは違う…たまたま神無月の血筋に鬼の運命が生まれただけだ。

 アルファ至上主義のくせに、その時だけオメガだという事を見なかった事にする…オメガが居なければ今の神無月本家の権力とやらも無かった…そういう事だろう…
 自分たちの都合で事実を捻じ曲げアルファ至上主義を貫く…正直、バカバカしいとしか思わなかった。

 そんな血筋に生まれた俺は何をやっても教えてくれていた先生たちを直ぐに追い越し、気がつけば全ての教育が終わっていた。

 その後は何の面白みのない、つまらない毎日を送っていた。

 気づけば表情筋がほぼ死んでしまっていて、何をやっても無表情であり、何をやっても完璧にやりきってしまう。

 新鮮さの欠片もなかった。何も感じない色褪せた毎日を送るのは最早苦痛に近かったが、この家のアルファとして生まれた運命さだめだと思って生きてきた。

 癒やしを求めて犬を飼った事もある。動物自体は好きだ。見ていて癒やされる。しかし、別れが凄く辛かった。
 唯一、俺を怖がらず、愛嬌を振りまき懐いてくれていた小型犬が亡くなった時に初めて涙が出たくらいだ。泣けた自分に驚いたくらいだが…勿論、人がいない所で泣いた。

 弱さを見せるのは愚か者のする事だと教えられたからだ。

 別れが悲しすぎるので犬猫を飼うことはやめた。そんな頃だった…、時期当主として受け継ぐ為にいろいろと任され始めたのは…

 不利益になれば容赦なく切り捨てた。非情だ無慈悲だと騒ぐ者も居たが…長い目で見ても不利益しか生まない無能な連中はさっさと切り捨て黙らせた。

 昔の規律が悪いとは言わないが…固執しすぎるのはよろしくない…それに、部下を虐げて自分の手柄のように振る舞っている上司…害悪な連中が必要だとは思わなかったからだ…

 お陰で近寄ってくるのは卑しいオメガどもだけだった。

 そして、気がつけば冷徹無慈悲の完璧主義者とまで言われるようになっていた。

 そんな時だった『運命の番』という存在が世界のどこかにいる事を知ったのは…

 『運命の番』について調べた。それはもう今までにないくらい熱心に…
 俺の側近…冷静沈着を具現化したようなアルファである冬樹ふゆき和人かずとが引くくらいには調べ尽くした。

 権力の有無に関わらず、自分だけを見て、自分だけを求めてくれる魂の半身…

 生涯唯一、俺だけの伴侶…

 考えただけで胸が震えた。ついぞなかった心が歓喜した瞬間だった…

 物凄く欲しくなった…

 しかし、残念な事に死ぬまでに会えるか会えないかというかなりの低確率でしか出会えない。

 全てを捨てて身一つになれば直ぐにでも会えると言われれば喜んで全てを捨てて、その『運命』に自分の人生を賭けてしまうのに…

 いや、諦めてなるものか…文献には写真だけでも運命かどうか分かると書いてあった。それに運命は自分より10歳以上は離れていないと記されている。小さい希望ではあるが、全く無いわけではない…

 絶対に見つけ出してみせると自分に誓った。


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