84 / 91
Another Story〜求めるアルファと求められるオメガ。〜
前
しおりを挟む神無月本家の時期当主として小さい頃から英才教育を受けてきたが、全てを終えるのに時間はかからなかった。
コレがアルファってヤツか…というのが俺の感想だった…
何故、本家と呼ばれるのかと問われれば、鬼と番った人物がこの血筋から出たからである。
俺は全く興味など湧いてくる事は無かったし、『あぁ、そうか』くらいの認識だった。
この血筋に生まれただけで時期当主だのなんだのと、望んでもいないのに祭り上げられ、挙げ句、英才教育である。
選ばれし血筋みたいに思われがちだが、それは違う…たまたま神無月の血筋に鬼の運命が生まれただけだ。
アルファ至上主義のくせに、その時だけオメガだという事を見なかった事にする…オメガが居なければ今の神無月本家の権力とやらも無かった…そういう事だろう…
自分たちの都合で事実を捻じ曲げアルファ至上主義を貫く…正直、バカバカしいとしか思わなかった。
そんな血筋に生まれた俺は何をやっても教えてくれていた先生たちを直ぐに追い越し、気がつけば全ての教育が終わっていた。
その後は何の面白みのない、つまらない毎日を送っていた。
気づけば表情筋がほぼ死んでしまっていて、何をやっても無表情であり、何をやっても完璧にやりきってしまう。
新鮮さの欠片もなかった。何も感じない色褪せた毎日を送るのは最早苦痛に近かったが、この家のアルファとして生まれた運命だと思って生きてきた。
癒やしを求めて犬を飼った事もある。動物自体は好きだ。見ていて癒やされる。しかし、別れが凄く辛かった。
唯一、俺を怖がらず、愛嬌を振りまき懐いてくれていた小型犬が亡くなった時に初めて涙が出たくらいだ。泣けた自分に驚いたくらいだが…勿論、人がいない所で泣いた。
弱さを見せるのは愚か者のする事だと教えられたからだ。
別れが悲しすぎるので犬猫を飼うことはやめた。そんな頃だった…、時期当主として受け継ぐ為にいろいろと任され始めたのは…
不利益になれば容赦なく切り捨てた。非情だ無慈悲だと騒ぐ者も居たが…長い目で見ても不利益しか生まない無能な連中はさっさと切り捨て黙らせた。
昔の規律が悪いとは言わないが…固執しすぎるのはよろしくない…それに、部下を虐げて自分の手柄のように振る舞っている上司…害悪な連中が必要だとは思わなかったからだ…
お陰で近寄ってくるのは卑しいオメガどもだけだった。
そして、気がつけば冷徹無慈悲の完璧主義者とまで言われるようになっていた。
そんな時だった『運命の番』という存在が世界のどこかにいる事を知ったのは…
『運命の番』について調べた。それはもう今までにないくらい熱心に…
俺の側近…冷静沈着を具現化したような男である冬樹和人が引くくらいには調べ尽くした。
権力の有無に関わらず、自分だけを見て、自分だけを求めてくれる魂の半身…
生涯唯一、俺だけの伴侶…
考えただけで胸が震えた。ついぞなかった心が歓喜した瞬間だった…
物凄く欲しくなった…
しかし、残念な事に死ぬまでに会えるか会えないかというかなりの低確率でしか出会えない。
全てを捨てて身一つになれば直ぐにでも会えると言われれば喜んで全てを捨てて、その『運命』に自分の人生を賭けてしまうのに…
いや、諦めてなるものか…文献には写真だけでも運命かどうか分かると書いてあった。それに運命は自分より10歳以上は離れていないと記されている。小さい希望ではあるが、全く無いわけではない…
絶対に見つけ出してみせると自分に誓った。
*
33
あなたにおすすめの小説
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
運命の番は姉の婚約者
riiko
BL
オメガの爽はある日偶然、運命のアルファを見つけてしまった。
しかし彼は姉の婚約者だったことがわかり、運命に自分の存在を知られる前に、運命を諦める決意をする。
結婚式で彼と対面したら、大好きな姉を前にその場で「運命の男」に発情する未来しか見えない。婚約者に「運命の番」がいることを知らずに、ベータの姉にはただ幸せな花嫁になってもらいたい。
運命と出会っても発情しない方法を探る中、ある男に出会い、策略の中に翻弄されていく爽。最後にはいったい…どんな結末が。
姉の幸せを願うがために取る対処法は、様々な人を巻き込みながらも運命と対峙して、無事に幸せを掴むまでのそんなお話です。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
本当にあなたが運命なんですか?
尾高志咲/しさ
BL
運命の番なんて、本当にいるんだろうか?
母から渡された一枚の写真には、ぼくの運命だという男が写っていた。ぼくは、相手の高校に転校して、どんな男なのか実際にこの目で確かめてみることにした。転校初日、彼は中庭で出会ったぼくを見ても、何の反応も示さない。成績優秀で性格もいい彼は人気者で、ふとしたことから一緒にお昼を食べるようになる。会うたびに感じるこの不思議な動悸は何だろう……。
【幼い頃から溺愛一途なアルファ×運命に不信感を持つオメガ】
◆初のオメガバースです。本編+番外編。
◆R18回には※がついています。
🌸エールでの応援ならびにHOTランキング掲載、ありがとうございました!
【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜
葉月
BL
《あらすじ》
カトラレル家の長男であるレオナルドは双子の弟のミカエルがいる。天真爛漫な弟のミカエルはレオナルドとは真逆の性格だ。
カトラレル家は懇意にしているオリバー家のサイモンとミカエルが結婚する予定だったが、ミカエルが流行病で亡くなってしまい、親の言いつけによりレオナルドはミカエルの身代わりとして、サイモンに嫁ぐ。
愛している人を騙し続ける罪悪感と、弟への想いを抱き続ける主人公が幸せを掴み取る、オメガバースストーリー。
《番外編 無垢な身体が貴方色に染まるとき 〜運命の番は濃厚な愛と蜜で僕の身体を溺れさせる〜》
番になったレオとサイモン。
エマの里帰り出産に合わせて、他の使用人達全員にまとまった休暇を与えた。
数日、邸宅にはレオとサイモンとの2人っきり。
ずっとくっついていたい2人は……。
エチで甘々な数日間。
ー登場人物紹介ー
ーレオナルド・カトラレル(受け オメガ)18歳ー
長男で一卵性双生児の弟、ミカエルがいる。
カトラレル家の次期城主。
性格:内気で周りを気にしすぎるあまり、自分の気持ちを言えないないだが、頑張り屋で努力家。人の気持ちを考え行動できる。行動や言葉遣いは穏やか。ミカエルのことが好きだが、ミカエルがみんなに可愛がられていることが羨ましい。
外見:白肌に腰まである茶色の髪、エメラルドグリーンの瞳。中世的な外見に少し幼さを残しつつも。行為の時、幼さの中にも妖艶さがある。
体質:健康体
ーサイモン・オリバー(攻め アルファ)25歳ー
オリバー家の長男で次期城主。レオナルドとミカエルの7歳年上。
レオナルドとミカエルとサイモンの父親が仲がよく、レオナルドとミカエルが幼い頃からの付き合い。
性格:優しく穏やか。ほとんど怒らないが、怒ると怖い。好きな人には尽くし甘やかし甘える。時々不器用。
外見:黒髪に黒い瞳。健康的な肌に鍛えられた肉体。高身長。
乗馬、剣術が得意。貴族令嬢からの人気がすごい。
BL大賞参加作品です。
無能扱いの聖職者は聖女代理に選ばれました
芳一
BL
無能扱いを受けていた聖職者が、聖女代理として瘴気に塗れた地に赴き諦めたものを色々と取り戻していく話。(あらすじ修正あり)***4話に描写のミスがあったので修正させて頂きました(10月11日)
運命を知っているオメガ
riiko
BL
初めてのヒートで運命の番を知ってしまった正樹。相手は気が付かないどころか、オメガ嫌いで有名なアルファだった。
自分だけが運命の相手を知っている。
オメガ嫌いのアルファに、自分が運命の番だとバレたら大変なことになる!? 幻滅されたくないけど近くにいたい。
運命を悟られないために、斜め上の努力をする鈍感オメガの物語。
オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω
『運命を知っているアルファ』というアルファ側のお話もあります、アルファ側の思考を見たい時はそちらも合わせてお楽しみくださいませ。
どちらかを先に読むことでお話は全てネタバレになりますので、先にお好みの視点(オメガ側orアルファ側)をお選びくださいませ。片方だけでも物語は分かるようになっております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
コメント欄ネタバレ全解除につき、物語の展開を知りたくない方はご注意くださいませ。
表紙のイラストはデビュー同期の「派遣Ωは社長の抱き枕~エリートαを寝かしつけるお仕事~」著者grottaさんに描いていただきました!
運命だなんて言うのなら
riiko
BL
気が付いたら男に組み敷かれていた。
「番、運命、オメガ」意味のわからない単語を話す男を前に、自分がいったいどこの誰なのか何一つ思い出せなかった。
ここは、男女の他に三つの性が存在する世界。
常識がまったく違う世界観に戸惑うも、愛情を与えてくれる男と一緒に過ごし愛をはぐくむ。この環境を素直に受け入れてきた時、過去におこした過ちを思い出し……。
☆記憶喪失オメガバース☆
主人公はオメガバースの世界を知らない(記憶がない)ので、物語の中で説明も入ります。オメガバース初心者の方でもご安心くださいませ。
運命をみつけたアルファ×記憶をなくしたオメガ
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる