アルファな彼とオメガな僕。

Main Story〜アルファな彼とオメガな僕｡〜

18

　
　「崇陽様、威圧のフェロモンを抑えてください。扉の外まで届いてます」

　そう言いながら入ってきたのは冬樹さん。その表情はかたく、少し顔が強張っている。

　「ならばどうしろと？俺はこの不愉快なオメガに自分の立場を分からせてやったまで」

　バカにしたように鼻で笑い冬樹さんを見た。僕には全く分からなかったが、フェロモンで威圧していたらしい…
　ポカーンとしている僕をそっちのけで話が進んでいき、僕の背中をあやすように優しく撫でると、くるりと身を翻した。
　冬樹さんとすれ違う瞬間、崇陽さんは「処理しろ」と言ってそのまま更衣室を出た。

　伸び上がって肩越しに更衣室を覗くと、あのオメガ君に近づいて行く冬樹さんの姿を最後に扉が閉められる。

　『処理』という言葉に不穏な空気を感じ取りどういう事かと問えばー…
　「気にしなくて良い。今後、このような事をしてこないようにするだけだ。目には目を、歯には歯を。恩には恩を、仇には仇をというヤツだ。」

　そう言って話を切り上げた崇陽さんに首を傾げるも、話を言及なんてチキンな僕にはできるはずもなく、その話は終わった。

　何で崇陽さんが更衣室へ来たかというと、更衣室に居たオメガたちが崇陽さんに知らせたらしい。ちなみにこの事は冬樹さんが教えてくれた。

　後でお礼を言いに行くと皆、強張った表情で気にしなくて良いよと言ってくれた…その瞳に恐怖の色が見えた気がした…

　その後、あのオメガ君が僕に絡みに来る事は二度となかった…

☆

　何事もなく平和な日常を過ごしていると発情期が間近に迫っていた。
　オメガの発情周期は３ヶ月に１回、１週間程度続く。フェロモンは崇陽さん以外に反応しないのでそこは安心している。
　それに、今いるクラスは『番持ち』に対してのありがたい制度があり、安心して発情期を迎える事ができる。

　この学校はそれぞれのクラスで少し制度が異なる。第二の性に対する制度が付け加えられており、自分が適したクラスに振り分けられる。よって、状況に応じてクラスチェンジが行われたりする。
　
　話は戻るが、発情期が間近に迫った事でいろいろと準備が必要になってくる。しかし、今現在、僕は何もしていない…何故かと問われると、答えは崇陽さんが必要な物は全て準備しているからだ…

　当日僕は発情して行為になだれ込むだけとなる。準備してくれるのは非常に助かるが、少々恥ずかしくもある。何かこう、落ち着かない。そんな感じ…

　自分の心とは裏腹に数日後、僕は発情期を迎えた…
　
　
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