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負債を抱えたメイドはご主人様と契約を
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「や、やっぱり無理です……」
足首まである黒いアフタヌーンドレスに、肩からストラップを回しウエストで締めたエプロンを着け、後ろできっちり結った頭にカチューシャを着けたマリー・シェヴァルメは声を震わせた。
「だったら今すぐ返せ」
ベッドサイドのテーブルに頬杖をつきながら意地悪そうな目つきで言い放つ。
目の前に映る、高い鼻梁に切れ長で真っ青に澄んだターコイスブルーのような瞳の持ち主はマリーが今日から仕えるロンダ家の長男、アラン・エル・ロンダだ。
「自分で脱げよ」
その言葉にビクッと肩が震え身をこわばらせる。
どうしてこのような事態に陥っているのだろうかーー
『<借金ある人歓迎>未経験でも稼げる高収入なバイト!食事付きの住み込み!
※掃除やアラン様の身の回りのお世話など』の求人に釣られてのこのこやってきたのが始まりだった。
それほどまでにマリーは必死だった。
父が友人に頼まれ渋々と連帯保証人になってしまったのだが、友人が逃げ、父は借金苦で自殺未遂をしてしまい、
母は夜中まで必死に働き憔悴、妹は高校に通えなくなるかもしれない事態なのだ。
ポストに求人チラシが入っており、普段であれば不審に思うのだが感覚が麻痺していたようで、藁にも縋る思いでマリーはロンダ家の門を潜った。
バイトの面接に通ったマリーは他に仕えている女中達に混じり、掃除洗濯を終わらせ、拍子抜けするほどあっさりとした作業に、勇気を出して来てよかったーーと安堵の微笑をもらしていたところ、執事のニコラに呼び止められ、本日午後9時にアラン様の部屋へ挨拶に来るようにと命じられた。
アラン様の身の回りの世話も仕事に入っていたと思い出し部屋を訪れ、
部屋に入るなりアランはマリーを品定めするように上から下まで見る。
「マリー・シェヴァルメと申します。本日からよろしくお願いいたします」
その嫌な視線にじっとりと汗ばむの感じるが、意識的に口角を少し上げ腰を折り挨拶をする。
「おまえの借金は先ほど俺が全額立て替えた」
予期しない発言にマリーは理解が追いつかず時が止まったように腰を折った姿勢で停止する。
「お前は俺が買ったんだ」
「えっ……」
マリーは狼狽し顔を上げると、アランが証明書のようなものを手に持ちヒラヒラさせている。
「だからお前の体をすみずみまで味あわせろ、俺に対して逆らうな、家族がどうなってもいいのなら話は別だが」
射るような視線にマリーはさあっと青ざめ、怖さで震えてうつむく。
萎縮した態度に気をよくしたアランは愉しそうに笑い、尊大な態度で告げる。
「今日は味見だ。服を脱ぐんだ、従わなかったら分かってるな」
マリーは今にも泣き出そうな顔で思考を巡らせる。
私が従わなかったら家族はどうなるのだろうかーー
震える手で肩に回してあるストラップに手を掛けるが、手が止まる。
全身が震えてただただその場に立ちつくした。
「仕方ない、最初だけだからな」
アランはこれ以上はマリーが動かないと判断してふう、とわざわざ声に出しわざとらしいため息をついて立ち上がり、マリーを引き寄せベッドに縫い付ける。
足首まである黒いアフタヌーンドレスに、肩からストラップを回しウエストで締めたエプロンを着け、後ろできっちり結った頭にカチューシャを着けたマリー・シェヴァルメは声を震わせた。
「だったら今すぐ返せ」
ベッドサイドのテーブルに頬杖をつきながら意地悪そうな目つきで言い放つ。
目の前に映る、高い鼻梁に切れ長で真っ青に澄んだターコイスブルーのような瞳の持ち主はマリーが今日から仕えるロンダ家の長男、アラン・エル・ロンダだ。
「自分で脱げよ」
その言葉にビクッと肩が震え身をこわばらせる。
どうしてこのような事態に陥っているのだろうかーー
『<借金ある人歓迎>未経験でも稼げる高収入なバイト!食事付きの住み込み!
※掃除やアラン様の身の回りのお世話など』の求人に釣られてのこのこやってきたのが始まりだった。
それほどまでにマリーは必死だった。
父が友人に頼まれ渋々と連帯保証人になってしまったのだが、友人が逃げ、父は借金苦で自殺未遂をしてしまい、
母は夜中まで必死に働き憔悴、妹は高校に通えなくなるかもしれない事態なのだ。
ポストに求人チラシが入っており、普段であれば不審に思うのだが感覚が麻痺していたようで、藁にも縋る思いでマリーはロンダ家の門を潜った。
バイトの面接に通ったマリーは他に仕えている女中達に混じり、掃除洗濯を終わらせ、拍子抜けするほどあっさりとした作業に、勇気を出して来てよかったーーと安堵の微笑をもらしていたところ、執事のニコラに呼び止められ、本日午後9時にアラン様の部屋へ挨拶に来るようにと命じられた。
アラン様の身の回りの世話も仕事に入っていたと思い出し部屋を訪れ、
部屋に入るなりアランはマリーを品定めするように上から下まで見る。
「マリー・シェヴァルメと申します。本日からよろしくお願いいたします」
その嫌な視線にじっとりと汗ばむの感じるが、意識的に口角を少し上げ腰を折り挨拶をする。
「おまえの借金は先ほど俺が全額立て替えた」
予期しない発言にマリーは理解が追いつかず時が止まったように腰を折った姿勢で停止する。
「お前は俺が買ったんだ」
「えっ……」
マリーは狼狽し顔を上げると、アランが証明書のようなものを手に持ちヒラヒラさせている。
「だからお前の体をすみずみまで味あわせろ、俺に対して逆らうな、家族がどうなってもいいのなら話は別だが」
射るような視線にマリーはさあっと青ざめ、怖さで震えてうつむく。
萎縮した態度に気をよくしたアランは愉しそうに笑い、尊大な態度で告げる。
「今日は味見だ。服を脱ぐんだ、従わなかったら分かってるな」
マリーは今にも泣き出そうな顔で思考を巡らせる。
私が従わなかったら家族はどうなるのだろうかーー
震える手で肩に回してあるストラップに手を掛けるが、手が止まる。
全身が震えてただただその場に立ちつくした。
「仕方ない、最初だけだからな」
アランはこれ以上はマリーが動かないと判断してふう、とわざわざ声に出しわざとらしいため息をついて立ち上がり、マリーを引き寄せベッドに縫い付ける。
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