7 / 81
エピソード.1 funny
1-7 擦り傷
しおりを挟む
さて翌日の放課後を迎えたわけだが、図書室の扉の前で自分は立ち尽くしていた。
これまで通りなら、蕪木わたはこの扉の先に居るはずだ。だけど、脅迫(まがい)事件があってから二日目。たったの二日しか経っていないのだ。普通に考えれば居ないだろう。むしろ、居たらびっくりする。
まあ、火事の現場なんかでは犯人が現場に戻ってくるなんて話があるわけだ。万が一も考えて今日ここに来たわけだが……流石に脅迫現場に戻ってくるようなやつは。
「居たよ」
グラウンドが見える窓際の席、西日がよく入る日当たりの良い席に蕪木わたは針金でも入っているのか背筋をぴんと伸ばして座り、ノートを開いてペンを走らせていた。
その姿を見て自分は思わず頭を抱えた。ここまできたら心臓が合金でできているんじゃないかって疑いたくなる。
とは言えだ、ここに居るのなら話は早い。
自分は半分呆れながらも目的を達成させるために蕪木の元に歩み寄った。
「これ以上、近づかないで」
「っ」
残り二歩という距離まで近づいたところで、蕪木に制止させられた。視線はノートに視線を向けたままのはずなのに、気配を感じ取ったのだろうか? まるで漫画の中の忍者だな。
その蕪木はペンをノートの上に置くと、額を抑え大きく息を吐く。
「どうやら言葉が足りなかったようね。もう一度言うわ。わたしに関わらないで。と言ったのよ」
「そう言われたってな、はい分かりました。で引き下がるほど素直に育ってないんすわ」
「……本気で痛めつけられたいと?」
自分の余計な一言が琴線に触れてしまったのだろう、蕪木はオレンジのペンケースの中からカッターを取り出し、自分に向けた。収納こそされているが刃は装填されていて、蛍光灯の光を反射していた。
流石に刃が装填されている状態で向けられては笑い話にも出来ないわけで、自分は頬と背中に冷や汗が流れる。
「蕪木が本気で関わってほしくないって思っているのなら、そうすれば良いさ」
なんの根拠もなく自信満々に自分が言うものだから蕪木は警戒したのだろう、こちらを睨みつけるばかりで何もしてこない。ただその代わりに自分へと質問をしてきた。
「あなたは昨日のことでわたしに謝罪でも求めているのかしら?」
「別に、あれはお前がああでもしないとまともにしゃべれないから、仕方のないことじゃないのか」
「そうね。だから今日もそうしようかしら」
「ここまで普通にしゃべっているんだ。もう通じねえぞ」
スライダーに添えていた指を自分に向けスライドさせようとした蕪木。流石にまずいと思った自分は制止するように言うと、少し間をおいてから蕪木はテーブルの上にカッターを置いた。
出来ることならペンケースに戻してほしかったけれど、話が進まなくなるので放っておこう。
「あんまりオブラートに包むのが得意じゃないから直接言うけどよ、蕪木、お前は何を後悔しているんだ?」
「……今あなたに話したところで、わたしの機嫌がリーマンショックを受けた株価のように急降下するだけよ」
「まじかよ」
ただでさえ、不機嫌そうに受け答えしているのに、蕪木の機嫌の底はまだあるらしい。
「言ったはずよ。忘れてくれれば、それ以上何も必要ないと」
「っ。だけど、お前はおれに過去が変えられるのか尋ねただろ」
「…………」
「お前は後悔を消したいんじゃないのか?」
「うるさい!」
図書室中に響き渡るような声で叫んだ蕪木。再びカッターを手にすると、自分の鼻先へと突きつける。出てこそいないが間違いなく装填されている刃を恐れた自分は、大きくのけぞった。それだけなら良かったのだけれど、最近の自分はどこまでもついていないのだろうか、足がもつれてしまい盛大に尻餅ちをついてしまう。
その姿が滑稽だったのか、それとももう関わることすら面倒になったのか、蕪木は自分の心臓を射抜かんとばかりに睨みつけた後、乱暴に勉強道具を鞄に片づけた。そして自分を避けて通り、わたし怒っています。と言わんばかりにつかつかと早歩きで図書室を出ていった。
これまで通りなら、蕪木わたはこの扉の先に居るはずだ。だけど、脅迫(まがい)事件があってから二日目。たったの二日しか経っていないのだ。普通に考えれば居ないだろう。むしろ、居たらびっくりする。
まあ、火事の現場なんかでは犯人が現場に戻ってくるなんて話があるわけだ。万が一も考えて今日ここに来たわけだが……流石に脅迫現場に戻ってくるようなやつは。
「居たよ」
グラウンドが見える窓際の席、西日がよく入る日当たりの良い席に蕪木わたは針金でも入っているのか背筋をぴんと伸ばして座り、ノートを開いてペンを走らせていた。
その姿を見て自分は思わず頭を抱えた。ここまできたら心臓が合金でできているんじゃないかって疑いたくなる。
とは言えだ、ここに居るのなら話は早い。
自分は半分呆れながらも目的を達成させるために蕪木の元に歩み寄った。
「これ以上、近づかないで」
「っ」
残り二歩という距離まで近づいたところで、蕪木に制止させられた。視線はノートに視線を向けたままのはずなのに、気配を感じ取ったのだろうか? まるで漫画の中の忍者だな。
その蕪木はペンをノートの上に置くと、額を抑え大きく息を吐く。
「どうやら言葉が足りなかったようね。もう一度言うわ。わたしに関わらないで。と言ったのよ」
「そう言われたってな、はい分かりました。で引き下がるほど素直に育ってないんすわ」
「……本気で痛めつけられたいと?」
自分の余計な一言が琴線に触れてしまったのだろう、蕪木はオレンジのペンケースの中からカッターを取り出し、自分に向けた。収納こそされているが刃は装填されていて、蛍光灯の光を反射していた。
流石に刃が装填されている状態で向けられては笑い話にも出来ないわけで、自分は頬と背中に冷や汗が流れる。
「蕪木が本気で関わってほしくないって思っているのなら、そうすれば良いさ」
なんの根拠もなく自信満々に自分が言うものだから蕪木は警戒したのだろう、こちらを睨みつけるばかりで何もしてこない。ただその代わりに自分へと質問をしてきた。
「あなたは昨日のことでわたしに謝罪でも求めているのかしら?」
「別に、あれはお前がああでもしないとまともにしゃべれないから、仕方のないことじゃないのか」
「そうね。だから今日もそうしようかしら」
「ここまで普通にしゃべっているんだ。もう通じねえぞ」
スライダーに添えていた指を自分に向けスライドさせようとした蕪木。流石にまずいと思った自分は制止するように言うと、少し間をおいてから蕪木はテーブルの上にカッターを置いた。
出来ることならペンケースに戻してほしかったけれど、話が進まなくなるので放っておこう。
「あんまりオブラートに包むのが得意じゃないから直接言うけどよ、蕪木、お前は何を後悔しているんだ?」
「……今あなたに話したところで、わたしの機嫌がリーマンショックを受けた株価のように急降下するだけよ」
「まじかよ」
ただでさえ、不機嫌そうに受け答えしているのに、蕪木の機嫌の底はまだあるらしい。
「言ったはずよ。忘れてくれれば、それ以上何も必要ないと」
「っ。だけど、お前はおれに過去が変えられるのか尋ねただろ」
「…………」
「お前は後悔を消したいんじゃないのか?」
「うるさい!」
図書室中に響き渡るような声で叫んだ蕪木。再びカッターを手にすると、自分の鼻先へと突きつける。出てこそいないが間違いなく装填されている刃を恐れた自分は、大きくのけぞった。それだけなら良かったのだけれど、最近の自分はどこまでもついていないのだろうか、足がもつれてしまい盛大に尻餅ちをついてしまう。
その姿が滑稽だったのか、それとももう関わることすら面倒になったのか、蕪木は自分の心臓を射抜かんとばかりに睨みつけた後、乱暴に勉強道具を鞄に片づけた。そして自分を避けて通り、わたし怒っています。と言わんばかりにつかつかと早歩きで図書室を出ていった。
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる