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エピソード.2 heath
2-6 勝負と甘い鼓動
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「それじゃあ早速やりましょうか」
「ああ」
自分たちは互いに構えて、
「じゃんけん、ぽん!」
互いに勢い良く手を前に出した。
結果は、
「おれの勝ちだな」
自分はグーを出したのに対し、蕪木はチョキ。言わずもがな自分の勝ちである。
はずなのに。
「わたしの勝ちね」
「はあ?」
蕪木はまるで自身が勝ったかのように、得意げな顔をした。
ここで自分は思う。蕪木の頭がおかしくなってしまったのかと。
「まさかルール知らないわけがないよな?」
「失礼ね、知っているわよ」
「じゃあ、負けた者が勝ちってルールで」
「いいえ、わたしが勝ったのよ。負けたわけがないじゃない」
「はい?」
蕪木の訳の分からない言動に、自分の頭はこんがらがる。
それを見ている蕪木は、面倒ね。とでも言いたいのか一つため息を吐くと、事の理由を説明しだした。
「グーを石。チョキを鋏。パーを紙としたとき、グーはチョキに勝って、チョキはパーに勝って、パーはグーに勝つとあなたは言っているのでしょ」
「そうだよ。それが当たり前だろ」
「想像力に乏しい人ね。だからあなたは凡人なのよ」
「前者は認める。だが、後者は言い過ぎだ」
「あら、認めるの?」
意外そうに目を大きく開けて答える蕪木に、自分は奥歯を噛みながら小さく頷く。
普段から部長に想像力を高めなさい。と散々言われているから自覚しているのだ。
「ともかく、考えてみなさい。紙は紙でもタウンページを一度に鋏で切断は出来るかしら?」
「え? そりゃあ、あんだけ厚かったら無理だろうな」
「石は一個だったら紙を破くのは中々難しいけれど、二個だったら火を起こせるわ」
「……確かに」
「そして鋏だけれど、確かに石を切ることはできないわ。だけど、鋏の切れ味を良くするは砥石よ。石は鋏より強いように見せて、その実鋏のために削られているのよ」
「…………」
やばい、何も言い返せない。それくらい蕪木の言葉に自分は納得してしまった。
「だから、あなたはグーでわたしはチョキだったから私の勝ちよ」
「ああ、そうだな」
自分は半分やけになりながら蕪木の主張を認めた。
ただ、認めるんだが。
「結局お前普通に勝っていたらそんな余計な説明しなかっただろ?」
「あら、そうかしら?」
「お前は最初から何を出しても勝てるように考えていたな」
「あら、良く分かったわね。褒めてあげるわよ」
「……少しだけ嬉しいのは何でだろうな」
それに、さっきの説明も納得いくところがあったから余計に腹が立つ。
「固定概念にとらわれず、想像力を膨らませれば万事上手くいくものよ」
「そういうものかね」
「ええ、そうよ」
蕪木は上品にも口元に手を当てて微笑むと、自分の自転車の荷台に座る。
そして、
「本多、想像力を高めなさい。そうしたら人生は豊かになるわ」
「え? それって」
「ほら。もたもたしていると日が暮れるわ」
蕪木が口からでてきた聞き慣れた言葉に、自分は疑問を抱く。だけど、蕪木はその疑問について精査する間を与えるつもりがないのか、それとも悪戯のつもりなのか自分の背中にそのしなやかな体を預ける。
「っ」
心臓が跳ね上がる。
胸の外へ飛び出しそうという表現が大袈裟じゃないくらいに。どくん。と心臓の鼓動が波打ったのだ。
「…………」
くそ、蕪木め。嫌でも意識がそっちに向いてしまうじゃないか。
抱いた疑問を押し殺し、自分は自転車のペダルを漕ぐ力を強める。
体が重なっているため相手の鼓動がこちらに伝わってくる。伝わってきた鼓動がこちらの鼓動と重なった時、より大きな鼓動になって反響する。
だけどその鼓動はどこか心地良くて、少し到着するのが先になってくれないかと願ってしまうのだった。
※ この物語はフィクションであり、現実の人物・団体と関りはありません。
また、道路交通法および法令違反を推奨するものではありません。
「ああ」
自分たちは互いに構えて、
「じゃんけん、ぽん!」
互いに勢い良く手を前に出した。
結果は、
「おれの勝ちだな」
自分はグーを出したのに対し、蕪木はチョキ。言わずもがな自分の勝ちである。
はずなのに。
「わたしの勝ちね」
「はあ?」
蕪木はまるで自身が勝ったかのように、得意げな顔をした。
ここで自分は思う。蕪木の頭がおかしくなってしまったのかと。
「まさかルール知らないわけがないよな?」
「失礼ね、知っているわよ」
「じゃあ、負けた者が勝ちってルールで」
「いいえ、わたしが勝ったのよ。負けたわけがないじゃない」
「はい?」
蕪木の訳の分からない言動に、自分の頭はこんがらがる。
それを見ている蕪木は、面倒ね。とでも言いたいのか一つため息を吐くと、事の理由を説明しだした。
「グーを石。チョキを鋏。パーを紙としたとき、グーはチョキに勝って、チョキはパーに勝って、パーはグーに勝つとあなたは言っているのでしょ」
「そうだよ。それが当たり前だろ」
「想像力に乏しい人ね。だからあなたは凡人なのよ」
「前者は認める。だが、後者は言い過ぎだ」
「あら、認めるの?」
意外そうに目を大きく開けて答える蕪木に、自分は奥歯を噛みながら小さく頷く。
普段から部長に想像力を高めなさい。と散々言われているから自覚しているのだ。
「ともかく、考えてみなさい。紙は紙でもタウンページを一度に鋏で切断は出来るかしら?」
「え? そりゃあ、あんだけ厚かったら無理だろうな」
「石は一個だったら紙を破くのは中々難しいけれど、二個だったら火を起こせるわ」
「……確かに」
「そして鋏だけれど、確かに石を切ることはできないわ。だけど、鋏の切れ味を良くするは砥石よ。石は鋏より強いように見せて、その実鋏のために削られているのよ」
「…………」
やばい、何も言い返せない。それくらい蕪木の言葉に自分は納得してしまった。
「だから、あなたはグーでわたしはチョキだったから私の勝ちよ」
「ああ、そうだな」
自分は半分やけになりながら蕪木の主張を認めた。
ただ、認めるんだが。
「結局お前普通に勝っていたらそんな余計な説明しなかっただろ?」
「あら、そうかしら?」
「お前は最初から何を出しても勝てるように考えていたな」
「あら、良く分かったわね。褒めてあげるわよ」
「……少しだけ嬉しいのは何でだろうな」
それに、さっきの説明も納得いくところがあったから余計に腹が立つ。
「固定概念にとらわれず、想像力を膨らませれば万事上手くいくものよ」
「そういうものかね」
「ええ、そうよ」
蕪木は上品にも口元に手を当てて微笑むと、自分の自転車の荷台に座る。
そして、
「本多、想像力を高めなさい。そうしたら人生は豊かになるわ」
「え? それって」
「ほら。もたもたしていると日が暮れるわ」
蕪木が口からでてきた聞き慣れた言葉に、自分は疑問を抱く。だけど、蕪木はその疑問について精査する間を与えるつもりがないのか、それとも悪戯のつもりなのか自分の背中にそのしなやかな体を預ける。
「っ」
心臓が跳ね上がる。
胸の外へ飛び出しそうという表現が大袈裟じゃないくらいに。どくん。と心臓の鼓動が波打ったのだ。
「…………」
くそ、蕪木め。嫌でも意識がそっちに向いてしまうじゃないか。
抱いた疑問を押し殺し、自分は自転車のペダルを漕ぐ力を強める。
体が重なっているため相手の鼓動がこちらに伝わってくる。伝わってきた鼓動がこちらの鼓動と重なった時、より大きな鼓動になって反響する。
だけどその鼓動はどこか心地良くて、少し到着するのが先になってくれないかと願ってしまうのだった。
※ この物語はフィクションであり、現実の人物・団体と関りはありません。
また、道路交通法および法令違反を推奨するものではありません。
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