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エピソード・3 injury
3-11 ひねくれた心
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「実は噂には続きがあるんだ。蕪木さんの心を開かせた強者のおかげで、蕪木さんの表情が柔らかくなったという続きの話がね」
「…………」
「今日みたいなのは難しいのかもしれないけれど、少なくともクラスメイト達には心を開き始めているみたいだよ。まあ、梅からしたら独占できなくなって、不満かもしれないけどね」
「どこがじゃ。そもそも独占したなんて一度も思ったことないわ」
放課後の図書室だって殆ど来ないとは言え、自分たち以外の利用者は居る。何より、姿を見せなくても土居原先生は居るし。
ただ、万次郎が言うように蕪木の表情が柔らかくなった。というのは本当なのだろう。
相変わらずの悪態を(特に自分へ向けて)吐いてこそいるが、その表情は今年の春の頃と比べれば格段に柔らかくなっている。
その理由は間違いなく後悔を取り除き、心が救済されたからだろう。
「…………」
神様は言う、「君も使って良いんだよ」。と。
甘い言葉だ。だが、確かに手を伸ばしたくなるほどの効果が、自分の目の前で何度も実証されている。
「まさか、お前までおれに使えとか言わないよな」
「言わないよ、梅。何より言えた立場じゃないさ」
「そうか?」
「そうだよ。僕だっていざ神紙を使おうって時は中々割り切れなかったからね」
「まあ、あんときのお前の顔は酷かったな」
「あはは。だけど、そんな僕の背中を押してくれたのもまた、梅だったわけだ」
「……忘れたよ」
すぐにばれてしまう嘘を吐いた自分。対して万次郎は苦笑いを浮かべたのだろう、視線を逸らして口をつぐむ。
いつもだったら軽口をたたき合えるのに、どうしても後悔を挟むと口は重たくなり、次第に心が重たくなる。
そして心が重くなる時、神様の気まぐれかそれとも悪意があってのことなのか、重しが重なってやってくるものだ。
「?」
ズボンの右ポケットに入れていたスマホが震えた。
自分は友だちからのメッセージを確認するように、何も考えずにスマホの画面に視線を落とす。
『梅。用事ができたので明日そちらへ行きます。ご飯もそちらで食べるつもりです。欲しいものがあれば、明日の正
午までに』
現在の空とは真逆の人工的な眩い画面に映し出されたメッセージ。
かあさんからのメッセージだった。
「…………」
自分は返信をすることなくスマホの電源を落とす。
そのことに気づいた万次郎が、自分に尋ねた。
「どうしたんだい、梅?」
「……万次郎。明日、お前と夜飯食べたことにしといてくれ」
「……オッケー、梅。いつものやつだろう」
「悪いな」
視線だけを万次郎に向け自分は礼を言う。
対して万次郎はこちらを見ずに手をひらひらと振った。
「いいさ。納得いくまで付き合ってやるのが親友だろう」
「……恩に着るよ」
「構わないさ。むしろ、付き合ってもらうって意味ではお互い様だからね」
万次郎はそう言うと、黙って帰路へとつく。自分もまた万次郎を追うように家へと歩き出した。
「…………」
「今日みたいなのは難しいのかもしれないけれど、少なくともクラスメイト達には心を開き始めているみたいだよ。まあ、梅からしたら独占できなくなって、不満かもしれないけどね」
「どこがじゃ。そもそも独占したなんて一度も思ったことないわ」
放課後の図書室だって殆ど来ないとは言え、自分たち以外の利用者は居る。何より、姿を見せなくても土居原先生は居るし。
ただ、万次郎が言うように蕪木の表情が柔らかくなった。というのは本当なのだろう。
相変わらずの悪態を(特に自分へ向けて)吐いてこそいるが、その表情は今年の春の頃と比べれば格段に柔らかくなっている。
その理由は間違いなく後悔を取り除き、心が救済されたからだろう。
「…………」
神様は言う、「君も使って良いんだよ」。と。
甘い言葉だ。だが、確かに手を伸ばしたくなるほどの効果が、自分の目の前で何度も実証されている。
「まさか、お前までおれに使えとか言わないよな」
「言わないよ、梅。何より言えた立場じゃないさ」
「そうか?」
「そうだよ。僕だっていざ神紙を使おうって時は中々割り切れなかったからね」
「まあ、あんときのお前の顔は酷かったな」
「あはは。だけど、そんな僕の背中を押してくれたのもまた、梅だったわけだ」
「……忘れたよ」
すぐにばれてしまう嘘を吐いた自分。対して万次郎は苦笑いを浮かべたのだろう、視線を逸らして口をつぐむ。
いつもだったら軽口をたたき合えるのに、どうしても後悔を挟むと口は重たくなり、次第に心が重たくなる。
そして心が重くなる時、神様の気まぐれかそれとも悪意があってのことなのか、重しが重なってやってくるものだ。
「?」
ズボンの右ポケットに入れていたスマホが震えた。
自分は友だちからのメッセージを確認するように、何も考えずにスマホの画面に視線を落とす。
『梅。用事ができたので明日そちらへ行きます。ご飯もそちらで食べるつもりです。欲しいものがあれば、明日の正
午までに』
現在の空とは真逆の人工的な眩い画面に映し出されたメッセージ。
かあさんからのメッセージだった。
「…………」
自分は返信をすることなくスマホの電源を落とす。
そのことに気づいた万次郎が、自分に尋ねた。
「どうしたんだい、梅?」
「……万次郎。明日、お前と夜飯食べたことにしといてくれ」
「……オッケー、梅。いつものやつだろう」
「悪いな」
視線だけを万次郎に向け自分は礼を言う。
対して万次郎はこちらを見ずに手をひらひらと振った。
「いいさ。納得いくまで付き合ってやるのが親友だろう」
「……恩に着るよ」
「構わないさ。むしろ、付き合ってもらうって意味ではお互い様だからね」
万次郎はそう言うと、黙って帰路へとつく。自分もまた万次郎を追うように家へと歩き出した。
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