(3章完結)今なら素直に気持ちを伝えられるのに

在原正太朗

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波打ち際の幽かな戀 ー今なら素直に気持ちを伝えられるのに外伝ー

外伝ー2 家族を襲った嵐

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 突然だけれど、僕には四つ上の兄さんがいる。
 特別に年が近いわけでもなければ、離れているわけでもない。中学生に上がれば同じ学校に行くことは絶対になくなる。そのため幼い頃からお互いを遊び相手に選んでいたわけじゃないし、喧嘩するようなこともない。そんな関係だった。
 だけど、僕にはその距離感が心地良かったのだと思う。
 よく知らないからこその憧れ。とでも言うべきなのだろうか。兄がやっているゲームや読んでいる漫画、好きなお菓子も真似をしたし、お下がりの服を嫌うことなく身につけていた。
兄がそれをどう思っていたのかは知らない。異国の文化に魅了されてから、家に帰って来ることが殆どなくなってしまったから、顔すら見なくなってしまったためだ。

 そんな兄さんのことを慕う僕に対し、母たちは真逆と言って良い感情を抱いていた。
 と言うのも兄さんは自頭が良く勉強ができる人だった。
 いや、出来すぎたのかもしれない。
 出来が良すぎたが故に母たちは難関高校への受験を期待し、中学に進学した当時から相当な量の勉強を課していた。課し、過ぎていた。

 何が起こったのかは、聡明な皆様ならすぐに分かったと思う。
 空気を吹き込みすぎた風船は耐えきれなくなってはじけ飛んでしまうように、母たちに課せられ続けた期待と勉学の重荷に耐えきれなくなって、小さな家の中で破裂した。

 冷静で物腰の柔らかい兄さんのどこに隠されていたのか分からない怒号。初めて聞いた怒りの声。そんな声をぶつけられた母は、応戦せんとばかりにヒステリックな声を上げた。
 まるで嵐の夜だ。電気を点けず布団の中に潜りやり過ごそうとした僕。そんな僕のことをお構いなしに、兄さんと母は互いを罵り合う。

 嵐が過ぎ去りようやく家の中が静かになると、僕は布団の中から顔を覗かせた。
 瞳も声も交わることない兄さんと母。そして、事情を聞き全てを諦めてしまった父。

 もう家の中にかつての家族の面影はなかった。

 それからだ。母たちは僕に言う、お前は兄さんたちのように成るなよって。

 あんなのになってはいけないって。

 僕は、「分かっているよ」。と笑って返すけれど、言葉と心は全く反対の位置にあった。
 どうしたって兄さんを憎めはしない。悪者にできやしないから。

 だけど言葉にはしなかった。いや、出来なかった。
 中学三年生の自分には親に抵抗するだけの勇気がなかったからだ。

 ただ、何も言わなければ溜まるばかりで、もし兄さんのように破裂をしてしまったなら、ギリギリのところで保たれている家族の形が全て崩れてしまう。

 捨てたい。この想いを、全て。

 行き場のない想いを吐き捨てられる場所を僕は探した。
 探し続けた先に僕は、海を目指した
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