生きる世界と冒険譚

山田浩輔

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中空を舞う

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 ~シードル国~
 「ようやく国境を越えましたよ」
 地図を見ながらフォルトは皆に言う、ロイが馬車から顔を出すとフォルトに聞く。
 「シードルって中央帝国がある場所だよな、どれくらいで着くんだ?」
 ロイの質問にフォルトは地図を指差す。
 「ここですよ、今僕たちがいるのはシードルの西側、もう少し南東に向かえば着くので.....だいたい4日ほどですかね?」
 フォルトの言葉にロイは腰を下ろす。
 「うはー! 長いなあ!」
 周りは草原、山に囲まれた盆地を馬車が進む、クルードとは違い温暖なシードルだが、そろそろ冬なため、厚着をしている。
 「まあクルードの冬ほど寒くはないけどこっちも寒いなあ...」
 ウィリアムは肌で寒さを感じつつ毛布で全身を包む。
 
 そうして進んでいるとヒューズの耳が立つ
 「.......周りに何か.....ゴブリンがいる、10体以上入るな...どうする?」
 「じゃあ速度を上げましょう、あっちに矢文を———」
 次の瞬間馬車が激しく揺れる、10秒ほどで収まったが、馬車は動かない、サムが降りて確認するとタイヤが一つ破損していた。
 「これは一体...」
 
 剣を引き抜き、警戒を始める、すると後ろにいた女子側の馬車が止まる。
 「どうしたの? 何かあった?」
 フェイルがサムに聞く
 「ゴブリンがいるらしい....タイヤを壊された」
 冷や汗を垂らし周りを警戒するが決して出てこない、長い間膠着が続く。
 
 「ヒューズ、どこにいるかわかるか?」
 ウィリアムがヒューズにゴブリンの場所を聞くがヒューズは首を横に振る。
 
 「草原ごと燃やしてしまうのはどうですか...?」
 エレナが提案をするとウィリアムが止める。
 「草原なんか燃やしたら馬車に燃え移るかもしれないし...後のことを考えると絶対却下」
 エレナはタイヤの予備を馬車から取り出すとタイヤを結衣と一緒に付け直す。
 「いざという時はまかせますよ、ウィリアム」
 結衣は工具を取り出し急いで作業に入る。

 そして10秒も経たない内に、草むらから矢が飛び出してウィリアムに向かう。
 剣で防ごうとするが防げずに左上腕に矢が刺さる。
 「ぐあ......痛ってえ....」
 ウィリアムは痛みでしゃがみ込みながらも矢を引き抜くと包帯を巻き、またすぐに立ち上がると魔力結石を取り出すと矢尻に縛りつけてロイに渡す。
 「それを草むらに向かって撃ってくれ!」
 「わかったぞ!」
 ロイが弓を撃つとウィリアムは詠唱する。 
 「ウィンドカッター!」
 矢が通るとその部分の草がスパッと一瞬で切れると、鉄兜のみが草むらから15体ほど見える。 
 
 「そこだ!」
 サムが剣を兜の下の方を刺し進む。
 結衣が鉄兜をそのまま狙撃していく。
 しかしそこで異変は起きた。
 「待ってくれ! これはゴブリンじゃない! ただのカカシだ!」
 サムが声を上げるとともに地面から飛び出した3体のゴブリンが結衣を掴む。
 「いやあああああ!」
 ロイとフェイルが武器を構えるがゴブリンは結衣の首にナイフを突き立てる。
 「なんで! こんな知能あるはずが....」 
 ウィリアムが声を漏らすとサムが説明する。 
 「ウェポンゴブリンですよ...シードルにしかいないけど...厄介ですね...」
 そうしてゴブリンがゆっくりと後退りをした時だった。
 突然ゴブリンが中空を舞う。
 「なんだ!?」
 皆が一瞬驚いたがロイがすぐさまゴブリンを狙撃するとウィリアムは結衣をゴブリンから離そうとするが次の瞬間ウィリアムもゆっくりと空を浮き始める。
 「何がどうなって....!?」
 しかしそう言ったのも束の間にウィリアムは地面に落ちる。
 「痛ってえええええええ!」 
 頭から激突し頭を抑えていると草むらからリーデットの男が現れる。
 「大丈夫か? 俺が助太刀するよ」
 「あなたは一体...?」
 サムが話しかけようとすると男はゴブリンの頭を掴むと違うゴブリンに向けて投げつける。
 「俺の名はマーク! 自由の放浪人さ!」
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