生きる世界と冒険譚

山田浩輔

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帝都シードル

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　「放浪人？」
　突然姿を現した男に疑問を覚えながらも、加勢してもらうことにし、ウィリアムは話しかける。　
　「まあいいや、頼むぜ、マークさん！」
　「おうよ！」
　マークは元気よく応答をするとゴブリンに突っ込むとゴブリンを掴み、別のゴブリンの頭上に投げると突然地面に垂直に落ちる、独特の戦い方に魔法を疑うが、リーデットは魔法を使えない、おそらく祈祷の部類だと考えウィリアムは戦いに集中する。
　一体ずつ確実に倒していくとゴブリンは突然逃げ出す。
　追おうとするも草原の中を走り去ったため姿を見失ってしまった。
　「はあ...終わったか....」
　ウィリアムは安心して腰を地面に下ろすとマークの方向を向く。
　「ありがとな、マークさん」
　マークは満面の笑みで親指を立てると「おうよ！」と元気な声で言った。
　「ごめんなさい...私のせいで」
　結衣が皆に謝るとマークが結衣の肩を叩く。
　「まあまあ、誰だってそんなことはある！　気にするだけ無駄だ！」
　元々皆怒っていたりするわけではないが、なんだか雰囲気が良くなっていく気がした。　
　「このおっさんの言う通りだな！　気にすんな気にすんな！」
　ロイが結衣に言うとマークはロイの頭を掴む。
　「俺はおっさんじゃあない！！　まだ29だ！」
　ロイの頭をブンブンと振り、怒るとフェイルが笑う。
　「また面白い人が来たわね」
　「ええ、ウィリアムさんに近い人ですね」
　フォルトも自然と笑みが溢れた。

　「まあ...こんなものでしょうか...？」
　結衣が工具を箱に戻す。
　「ありがとな、結衣」
　ヒューズが結衣の頭をポンポンと叩きながら言うとウィリアムは指を指す。
　「イチャイチャしてやがる！！」
　結衣はその言葉に動揺するがヒューズは平然と「馬鹿か」と返す。
　　
　「マークさんはどこに行かれるんですか？」
　フォルトの言葉に相変わらず満面の笑みで答える。
　「俺は帝都に行くつもりだ、やることがあってな！」
　その言葉にウィリアムが会話に入る。
　「だったら俺達の馬車に乗ってけよ、助けてもらったし、お礼ってことにならねえか？」
　ウィリアムの言葉にマークは目をキラキラとさせる。
　「いいのか！　そりゃありがたい！　ぜひ乗せてくれ！」
　そうしてマークが馬車に同行することとなった。

そうして4日が経つと、帝都にたどり着いた。

　「それじゃあな！　少年少女！」
　マークは手を振るとダッシュで消えてしまった。
　「私のような人だった....」
　サムが唖然としながら言うとウィリアムは馬車から降りる。
　「そんじゃあ布教活動行ってくるわ」
　「僕も行きます！」
　ウィリアム、フォルトが消えると皆はそれぞれのことをすることにした。
　「じゃあ...俺は馬車を預けてくる...」
　ヒューズは馬車を馬預かり所に持って行った。
　フェイル、結衣、エレナは3人で買い物に
　ロイ、サムは食事に行った。

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　「どうしてこんな路地裏に...」
　フォルトが尋ねるとウィリアムは答える。
　「ここはスラム街だ、金や食糧に困ってる人間ほど助けやすいからな」
　周りには死んでいるのか生きているのかわからない子供、壊れかけの家や娼婦などがいた。
　「そこのお兄さん方...私と遊んでいかない？」
　娼婦が声をかけるとウィリアムは娼婦に返す。
　「悪いんですがそう言うのには興味はなくて...ですが、炊き出しを行おうと思っていましてね、ぜひ来てください、私は聖職者なので」
　娼婦は不満そうな顔をするが後をついてきた。
　「大丈夫ですか....こんなところで炊き出しなんかして襲われたら...」
　「食は原動力だ、こんな元気のない人間しかいないここじゃ最悪返り討ちにもできる、まあできるだけ丁重に扱うがな」
　そういうとウィリアムは簡易机を出すとレンガで窯を作る
　「そんじゃあ作っていくか...」
　ここで使うのは街で売ってた新鮮な食材を鍋に入れかき混ぜる、シンプルな料理ではあるがこの場では十分であろう、子供がのっそりとゆっくり立ち上がり始めこちらに近いてくるとウィリアムは息を大きくすう。
　
　「ええ！！　皆さん並んでください！！　いくらでもありますので焦らずにどうぞ！！」
　そうして料理を皿に注いでいく
　意外と順番無視などは少なく、全員に配られた段階で、ウィリアムは色々な人間に話しかける。
　「大丈夫、いくらでもあるから焦らずに食べてね、ミメーシス様の温情だよ」
　笑顔で甘い言葉を語り続け、傷があった場合魔法で癒していく。
　「ウィリアムさん...確かに善行を積むのはいいことですが...もしもここを離れることになったらこの子達はどうなるんですか...」
　フォルトは不安そうにウィリアムに聞くとウィリアムは答える。
　「この子達に仕事を与える、ある程度職業訓練をさせたいと思っているんだ」
　そうしてウィリアムは職業訓練を、特に子供を中心に教えた。
　冒険者は戦闘だけが仕事ではない、薬草採取やどぶさらい、掃除など雑用もいくつかある、その中で皮鞣しや薬草の知識、仕事の受け取り方などを教えた、そしてもう一つ、模倣の精霊の恩恵も教えた。
　リフェルテッド村の村民もだが模倣の精霊の力を使える、しかし信仰者ができるのは今の所は声、顔などの断片的なものではある、しかしそれで旅芸人などに使うこともできる、声の変え方など様々なことを教えていった。

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