44 / 77
思伝の力
しおりを挟む
獣人の少年は常に笑みがなかった、感情がないわけではない、喜怒哀楽、全ては存在する、しかし幸せとは時に残酷である、幸せの罪悪感、何もできなかった無力感、そして、怒りと悲しみ、それが消えてしまうこと、その全てが申し訳ない、少年はずっとそう考えた。
少年の本心は冷静でも合理的でもない、そう繕い続け、何かに縋り、そして意味のある死を求めていた、誰かの役に立つための死である。
「あ...あ...あ...あああああああああああああ.....!!」
結衣はその視界に入ったものに絶望する、涙が滝のように流れ、その場に膝から崩れ落ちる、そこにあったのは口から肛門を柱で貫かれたヒューズの死体であった、ハエが集り、歯、爪、眼球、陰部のないその死体は絶望という二文字を体現していた。
「ヒュー....ズ...さん....」
フォルトはあまりの光景に目を疑う、悲痛の声が響き渡り、避けたくなるような現実を直視しなければならないのだから。
「ヒューズ、まあ予想できてはいたが...こんな...」
ウィリアムは考えつく限りの言葉を捻り出し、無念と言わんばかりに下を俯く。
「許さない...こんなことをした人を....絶対に!!」
怒りに満ちた結衣に顔、その顔は般若とは言えない、しかしそれ以上の感情の起伏にウィリアムは恐怖した。
「そうだな、行こう、終わりは近い」
ウィリアムはヒューズの死体を横目に流すとそのまま最深部の扉を開ける。
そこにはたくさんの信者の死体の山、そしてその中央でまさに今、三神器の一人、テプラを男が殺した
「おまえ...誰だ...?」
ウィリアムが男に声をかけると男はこちらを振り向くと笑う。
「お、ウィリアムじゃん、やっほー!! トゥリアだトゥリア!」
ウィリアムはあまりに拍子抜けで力を抜き、地面に倒れる。
「はあああ....お前本当に....」
「ウィリアム、この人は?」
結衣がウィリアムに耳打ちをするとウィリアムは答える。
「こいつはトゥリア、フェルリートとまともに戦える唯一の人間だ、俺らの味方だ、安心しろ」
結衣はなんとも言えない表情をする、諸悪の根源、ヒューズを殺した人間は既に皆殺しにされていたからである。
しかしそれも束の間、爆音が轟くとトゥリアが吹っ飛ぶ。
そこにはウィリアムの手足、ヒューズの左腕、リカル、エレナの命を奪った人間、フェルリートがいたからである。
「まずい!!」
ウィリアムはすぐに剣をとるがフェルリートは既にウィリアムの後ろを取り、首に刃を当てていた。
「お前は騙されている」
ウィリアムはフェルリートの言葉に疑問を抱く。
「何を言っているんだ...お前!」
ウィリアムが殺気を放つがフェルリートの冷静な顔は崩れない、結衣が銃を向けようとするとウィリアムの首に刃を少し押し当てる。
「話を聞け、お前らは、トゥリアに騙されている」
「.....わかった、話してくれ」
ウィリアムは剣を捨て、両手を上げる。
「話が早いな」
フェルリートがウィリアムを解放すると結衣は即座に銃を構える。
「待て! 待て、どうせ勝てない、話を聞くべきだ」
ウィリアムが結衣を止めると結衣はゆっくりと銃を下ろす。
そしてフェルリートが口を開こうとすると後ろから声が聞こえる。
「いいや、飽きたし、教えてやるよ」
フェルリートが居合いの構えをするとトゥリアが両手を上げる。
「待て待て、せっかく話をするんだろう? 俺から話してやるからよ!」
トゥリアの今までの笑顔、何も変わらない笑顔、それなのに、今までと違い、根源的に嫌悪する、そんな気持ち悪さをウィリアム達は感じた。
「まあ色々話すことはあるけどなあ、んじゃあまずウィリアム! お前に秘密を教えてやろう!」
ウィリアムは怪訝な目つきでトゥリアを見る、そうして衝撃の一言を明かされる。
「リリアン、知ってるだろ? ヒューズの母親だ、と言うか皆殺しにしたのは俺だよ」
「何を....言って...」
「リリアンの殺され方、明らかにおかしいだろ? 抵抗されたにしても目には普通刺さねえだろ、面倒臭えし、それに家畜まで殺すにはあり得ない、遺体の数が合わないのは俺が趣味で使っただけだからな!」
いつもの笑顔でトゥリアは口にする、あまりにも、とても衝撃の告白とは思えない、そんな無邪気な笑顔で
「お前が...おばさんを...」
ウィリアムの言葉にトゥリアはきょとんとする。
「あー、そういえば言ってないけど、リリアンって俺のことだぞ?」
あまりの情報量の多さに脳が処理できずにウィリアムは呆然としているとトゥリアはフォルトの方を向く。
「あ、そうそう、フォルト、お前の馬車を襲ったのも俺だ、わかるか? 俺だ!」
「さっきからあなたは...何を言って...」
「主従媒体だけぶっ壊れる確率なんて相当低いぞ? 俺がわざと壊したに決まってんだろ!」
結衣はトゥリアに銃口を向けるがトゥリアは一切動揺しない。
「お前らの旅、仲間、精霊、敵、死亡者、全て俺の計算通りってわけなんだよ」
トゥリアの言葉にウィリアムは口を開く。
「嘘だ...そんなこと...いくらなんでも一人でできるわけがない、それに大人数でやったとして...なんの意味があるんだ...」
「そうだな、楽しいからだな!!」
トゥリアの言葉にウィリアムは更に動揺する。
「そんなので協力者なんて...」
「じゃあそろそろ種明かしだ、俺はスキル、[思伝]を持った人間だ! 人に声を送る能力がある!」
「止まれ!!」
騎士達がゾロゾロと現れるとフェルリートが叫ぶ。
「そこの男だ!! そいつが全ての元凶だ!!」
少年の本心は冷静でも合理的でもない、そう繕い続け、何かに縋り、そして意味のある死を求めていた、誰かの役に立つための死である。
「あ...あ...あ...あああああああああああああ.....!!」
結衣はその視界に入ったものに絶望する、涙が滝のように流れ、その場に膝から崩れ落ちる、そこにあったのは口から肛門を柱で貫かれたヒューズの死体であった、ハエが集り、歯、爪、眼球、陰部のないその死体は絶望という二文字を体現していた。
「ヒュー....ズ...さん....」
フォルトはあまりの光景に目を疑う、悲痛の声が響き渡り、避けたくなるような現実を直視しなければならないのだから。
「ヒューズ、まあ予想できてはいたが...こんな...」
ウィリアムは考えつく限りの言葉を捻り出し、無念と言わんばかりに下を俯く。
「許さない...こんなことをした人を....絶対に!!」
怒りに満ちた結衣に顔、その顔は般若とは言えない、しかしそれ以上の感情の起伏にウィリアムは恐怖した。
「そうだな、行こう、終わりは近い」
ウィリアムはヒューズの死体を横目に流すとそのまま最深部の扉を開ける。
そこにはたくさんの信者の死体の山、そしてその中央でまさに今、三神器の一人、テプラを男が殺した
「おまえ...誰だ...?」
ウィリアムが男に声をかけると男はこちらを振り向くと笑う。
「お、ウィリアムじゃん、やっほー!! トゥリアだトゥリア!」
ウィリアムはあまりに拍子抜けで力を抜き、地面に倒れる。
「はあああ....お前本当に....」
「ウィリアム、この人は?」
結衣がウィリアムに耳打ちをするとウィリアムは答える。
「こいつはトゥリア、フェルリートとまともに戦える唯一の人間だ、俺らの味方だ、安心しろ」
結衣はなんとも言えない表情をする、諸悪の根源、ヒューズを殺した人間は既に皆殺しにされていたからである。
しかしそれも束の間、爆音が轟くとトゥリアが吹っ飛ぶ。
そこにはウィリアムの手足、ヒューズの左腕、リカル、エレナの命を奪った人間、フェルリートがいたからである。
「まずい!!」
ウィリアムはすぐに剣をとるがフェルリートは既にウィリアムの後ろを取り、首に刃を当てていた。
「お前は騙されている」
ウィリアムはフェルリートの言葉に疑問を抱く。
「何を言っているんだ...お前!」
ウィリアムが殺気を放つがフェルリートの冷静な顔は崩れない、結衣が銃を向けようとするとウィリアムの首に刃を少し押し当てる。
「話を聞け、お前らは、トゥリアに騙されている」
「.....わかった、話してくれ」
ウィリアムは剣を捨て、両手を上げる。
「話が早いな」
フェルリートがウィリアムを解放すると結衣は即座に銃を構える。
「待て! 待て、どうせ勝てない、話を聞くべきだ」
ウィリアムが結衣を止めると結衣はゆっくりと銃を下ろす。
そしてフェルリートが口を開こうとすると後ろから声が聞こえる。
「いいや、飽きたし、教えてやるよ」
フェルリートが居合いの構えをするとトゥリアが両手を上げる。
「待て待て、せっかく話をするんだろう? 俺から話してやるからよ!」
トゥリアの今までの笑顔、何も変わらない笑顔、それなのに、今までと違い、根源的に嫌悪する、そんな気持ち悪さをウィリアム達は感じた。
「まあ色々話すことはあるけどなあ、んじゃあまずウィリアム! お前に秘密を教えてやろう!」
ウィリアムは怪訝な目つきでトゥリアを見る、そうして衝撃の一言を明かされる。
「リリアン、知ってるだろ? ヒューズの母親だ、と言うか皆殺しにしたのは俺だよ」
「何を....言って...」
「リリアンの殺され方、明らかにおかしいだろ? 抵抗されたにしても目には普通刺さねえだろ、面倒臭えし、それに家畜まで殺すにはあり得ない、遺体の数が合わないのは俺が趣味で使っただけだからな!」
いつもの笑顔でトゥリアは口にする、あまりにも、とても衝撃の告白とは思えない、そんな無邪気な笑顔で
「お前が...おばさんを...」
ウィリアムの言葉にトゥリアはきょとんとする。
「あー、そういえば言ってないけど、リリアンって俺のことだぞ?」
あまりの情報量の多さに脳が処理できずにウィリアムは呆然としているとトゥリアはフォルトの方を向く。
「あ、そうそう、フォルト、お前の馬車を襲ったのも俺だ、わかるか? 俺だ!」
「さっきからあなたは...何を言って...」
「主従媒体だけぶっ壊れる確率なんて相当低いぞ? 俺がわざと壊したに決まってんだろ!」
結衣はトゥリアに銃口を向けるがトゥリアは一切動揺しない。
「お前らの旅、仲間、精霊、敵、死亡者、全て俺の計算通りってわけなんだよ」
トゥリアの言葉にウィリアムは口を開く。
「嘘だ...そんなこと...いくらなんでも一人でできるわけがない、それに大人数でやったとして...なんの意味があるんだ...」
「そうだな、楽しいからだな!!」
トゥリアの言葉にウィリアムは更に動揺する。
「そんなので協力者なんて...」
「じゃあそろそろ種明かしだ、俺はスキル、[思伝]を持った人間だ! 人に声を送る能力がある!」
「止まれ!!」
騎士達がゾロゾロと現れるとフェルリートが叫ぶ。
「そこの男だ!! そいつが全ての元凶だ!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる