生きる世界と冒険譚

生

　死体の山の上でフォルトがゆっくりと立ち上がる。
　「ん....うぅ...ここは...そうだウィリアムさん！！」
　振り向くとそこには心臓を撃ち抜かれた結衣、刀で身体を貫通させられたウィリアムの死体であった。
　「ウィリアムさ....うう...」
　胸に激痛を感じフォルトは胸を抑える、その中で結衣に撃たれたことを思い出す。
　「そうだ...僕は撃たれて...でもなんで...？」
　そうして穴の空いた服を触ると硬い感触を見つける。
　「これは...」
　そこにはひしゃげたペンダントがそこにあった。
　「こんなもの...防げたのか...？」
　ペンダントを呆然と見つめていると騎士達が部屋に入る。
　「そこのお前！　止まれ！！」
　「あいや！　僕は——！！」
　言い訳をする間もなくフォルトは拘束され、縄で縛られる。
　「捕まえたぞ！！」
　そうしてフォルトは拘束され、牢獄へと捕えられた。

　～数日後～
　フォルトの感覚ではどれほど居るかわからない、貧しい食事の中で脱獄を企てることもなく、全てを失ったことを嘆いていると騎士が現れる。
　「そこのお前、来い」
　騎士の言葉に死を覚悟しながらフォルトは檻を出ると、看守室で会ったのはフェルリートであった。

　「まあ座れ...」
　フェルリートの重々しい口調に警戒しながらも椅子に座るとフェルリートは話を始める。
　「はっきり言ってお前は罪人だ、これから処刑されるだろう」
　「....やっぱりそうですか.....何か用でも？」
　フォルトは覇気もなく静かに聞くと予想とは違う言葉に耳を疑う。
　「お前を逃してやる」
　「は.....？」
　思わず疑問の声を上げるがフェルリートは話を続ける。
　「これはお前の罪が免除された訳ではない、俺の独断だ」
　
　「そうですか...しかしそんなことをして大丈夫ですか？」
　「構わない、トゥリアを殺すことを手伝ってくれたお前に対する俺からの礼だ」
　フェルリートの言葉にフォルトは心の中で安堵しながらも冷静な対応をこなす。
　「ありがとうございます...これから僕は追われる身となるのですか？」
　「いや、お前が抵抗し、俺が殺したことにする、あまり長居はできない、すぐに準備をしろ」
　「わかりました」
　そうしてフォルトは手錠を外されると、外に出る、そこにはウィリアム達が乗ってきた飛行機があった。
　「これで行け、お前達が乗っていたんだろう？」
　「ええ...でも僕は操作が...」
　フォルトは操作ができないことを説明しようとすると頭の中に声が入る。
　(そこは任せろ、我が操縦する)
　「.......あなたは一体...？」
　(我の名はミメーシス、貴様らが進行していた精霊だ)
　「そうですか...あなたが...」

　「どうした？　フォルト」
　「いえ...なんでもないです」
　フォルトは飛行機に乗り込むとエンジンが起動する。
　「それではお願いします、ミメーシスさん」
　(了解した)


　そうしてフォルトは沢山の人を失い、沢山の経験をし、そしてシードルを出ていくのであった。

　リライプル編　完