生きる世界と冒険譚

第一話 ウィダー諸島

　かつて竜戦争というものが存在した。
　アルテクス全域に存在したドラゴンを滅ぼすため、四英雄の奮闘により、ドラゴンはウィダー諸島に追われた、混沌とした熱帯地方に、一人の少女がいた。
　少女の名はココ、彼女は龍の翼を持つ、龍人であった。
　少女は龍人の末裔であり、彼女の親は既に死んでいた。


　第九紀　九六七年
　「ふあぁぁ」
　ココは大きなあくびをすると伸びをする、森の中を一人で歩き続ける。
　幼く、服も着ず、あどけない身体であるが生きる知恵は持っている、棍棒一本を手に、ココはひたすらに歩き続けた。
　「あ！　果物」
　鮮やかな黄色の果物を見つけたココは翼をバサバサと羽ばたかせると果物を千切る。
　「いただきまーす」

　パクりとそれを食らうと、口を窄める。
　「す...酸っぱい...」
　舌を出し、指で果汁を拭うとそのまま歩き出す。
　
　「最近は美味しい果物が少な——」
　物音がし、ココは身を隠す、翼を折りたたみ、ゆっくりと音のした方向を見ると人間が4人歩いていた。
　カルダー人3人とドワーフ1人であった。
　「.....バレてない...かな...？　ママが人間には絶対にバレないようにしないと一生働かされるっていうし...」
　
　そうやってココが人をやり過ごすと、また歩き出す。
　「人ってどんな生活をしてるんだろ？　地面の中で暮らしてるらしいし、見たことないし...」
　そんなことを考えていると突然、木から猿が飛び出し、ココに噛みつこうとする。
　「うわっ！！」
　ココは腕を硬化させ防ぐと、猿を地面に叩きつけ、棍棒で頭を殴り潰す。
　「よっしゃー肉ゲット！！」
　そうして猿を解体しようとココは家に持ち帰ろうと引きずって帰ろうとすると女が突然、茂みから飛び出す。
　「わっ....！！」
　女はココの姿、そして翼を見ると、ダガーを振るう。
　ココは腕を硬化させ、一撃を弾くと、棍棒を力強く振り下ろす。
　女は側転で攻撃を交わすと、一度距離を取ると女は声をかける。
　「....お前はなんだ？　その翼は....」
　ココは何も返さず棍棒を投げ飛ばすと拳を固め、女の顔に殴りかかるが、女はそれを避けるとココの腕に縄を巻き、捕えようとする。
　「あわわ！！」
　ココは翼を広げるとゆっくりと羽ばたき、女ごと宙に浮こうとすると女はダガーで縄を切る。

　「危なかった～」
　ココはそのまま空を飛び、逃げようとすると、ドラゴンが急接近する。
　「ドラゴン！！」
　ココは地面に落ちるが、女はドラゴンを見ると、その場を離れた。
　　
　ドラゴンは落ちたココを狙い、地面におりると、ドシドシと音を立てながらココに近づく。
　ココは全速力で走り、茂みの中を進む。
　「まずいまずいまずいまずい！！」
　
　そうして走っていくとココは木の根に足を引っ掛け、沼にダイブする。
　棍棒だけが奥の茂みに落ち、ドラゴンは茂みの方へと向かう。
　ココは沼の中で息を潜めるとドラゴンは立ち去っていった。
　「ふう...なんとか撒いたかな...」
　沼から上がるとそのまま家に帰ることにした。


　～地下～
　「大変です！　南方に龍の翼を持つ少女が現れました！！」
　女の名はユリア、カルダー諸島の地質探索班である。
　「翼の生えた少女？　モンスターの類いじゃあないのか？」
　ドワーフの男、イワンは話に取り合おうとはしない
　「違うんだ！　あれは明らかに人語を...」
　ユリアは話を続けようとするがイワンは話を無理矢理止める。
　「まあ落ち着け、今はそれよりも、野営地についてなんだが、今晩は何者かに破壊された」
　「あの野営地には手練も多かったはずだぞ！？　なんでそんなことに！？」
　「おそらくドラゴン信仰勢の仕業だろう...今はそっちを消す方がずっと大事だ」
　イワンは話を終わらせると、解散を言った。