生きる世界と冒険譚

第二十五話 熱と鉄

　「状況は？」
　「やつは龍信仰を利用した、ただの詐欺師にすぎない、へーリオスも、竜人も、全てはやつが私欲のために行なったものに過ぎない」
　ルーカスの言葉にルーベルはイワンに向けて杖を構える。
　「なるほどな、まあいい、俺は嘘が嫌いなんだよ」
　ルーベルが口を開こうとした時、イワンは上空に白く輝く光を放つと逃走する
　「終わりだ」
　天に飛び出した光は分裂し放物線を描きながら地面を照らす。
　「まずい...！」
　皆何かはわかってはいない、しかし明らかな攻撃、一同避け続けていると突然、咆哮が鳴り響く。
　「まさか！？」
　ルーカスが後ろを振り向くとそこにはドラゴン達が真後ろまで来ていた。
　ドラゴンはルーカスを捕食しようとし、ジャンが飛び出す。
　「危ない！！」
　ジャンはルーカスを押し、なんとか攻撃を交わすが、それと同時に2人は体勢を崩す。
　「2人とも！　危ない！」
　ユリアが銃を構えようとしたその時、銃弾の雨がドラゴンを襲う。
　
　「フォルトさんに...アストラさん...」
　ユリアは唖然としているが自らの頬を叩くとすぐに状況を説明する。
　「イワンさんです！　この黒幕はイワンさんだったんです！　逃走してます、早く追わないと」
　「イワンさんが...了解です...」
　
　「その武器は一体...？」
　ルーカスが聞くとフォルトは答える。
　「これは私がウィダーに来る際に使用した戦闘車両の固定砲台を改造したものです、残弾に限りはありますが、あと二百発ほどは打ち出せます、ここは僕が食い止めます、先へ！」
　「俺も手伝おう」
　「わかりました、どうぞ、行ってください！」

　「ありがとうございます、行くぞ！」
　そうしてフォルト、ルーカスが残り、ジャン達はイワンの足取りを追った。


　
　「まだついてくるのか？　ルーカスだけであのドラゴンを止められるとはとても思えないがな」
　イワンは太陽球を出すと辺りを熱気が囲み、地面はとけ始める。
　太陽球はゆっくりと動き出し、ジャンの方向へと向かう。
　「熱っ！！」
　ユリアの服は燃え始め、ユリアは服を脱ぎ捨て、魔力結石を持ち、上へと掲げる。
　「ウォーター！」
　水浸しのなるとユリアはイワンに近づき襟元を掴むと押し倒す、しかしイワンはユリアの腰を掴むと手からマグマを放出する。　
　「ああああああああ！！」
　あまりの激痛にユリアは悶絶するがユリアは必至の思いでイワンの首を締める。
　「今です！」
　「了解した」
　身体をドロドロに溶かされ背骨が露出し始めるがそれでも力はやまない、ルーベルが走り出しイワンに杖を向けた瞬間にイワンはユリアの腕を掴み溶かし、脱出する。
　ユリアは上半身だけがその場に倒れ伏し、虫の息になる。
　ルーベルは杖を構えると詠唱する。
　「タイフーン！」
　マグマが風に巻き込まれ、炎の台風となり、イワンへ向かう、イワンは風の中に飛び込み、ルーベルの顔を鷲掴みにする。
　「残念だが、精霊のマグマは俺には当たらないんだよ」
　イワンがルーベルを溶かそうとしたその時、違和感に気づく。
　「ジャンはどこだ？」
　その瞬間、上空からジャンが落下し、イワンに向かって落ちる。
　「がはっ！」
　イワンは地面に仰向けに倒れ、ジャンは体重をかける。
　「あの風は揺動、本当の目的は上昇気流で一気に飛び上がり、奇襲を仕掛ける、こんなに上手く行くとは思いませんでしたよ！」
　ジャンはナイフを取り出し、イワンに刺そうとすると同時にイワンはジャンを掴もうとする、そしてそれと同時に壁が開き、大量のクロスボウが現れ、一斉にボルトが放たれる。
　「ファイ......ア....」
　ユリアが銃弾を撃ち、イワンの腕を撃ち抜く、ジャンはボルトを全身にくらい、身体が一瞬よろめき、その瞬間にイワンはジャンを突き飛ばす。
　「ウィンドカッター！」
　風の刃がイワンの首を狙うがイワンは紙一重で攻撃を避けると銃を構える。
　「ファイア」
　銃弾はルーベルの肩をを撃ち抜く。
　「頭を狙ったんだがな、運のいいやつだ」
　「クソが....！」