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サンブレッドは戦う、そして‐‐‐‐
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「……なにが、起こってるのです?」
"ゴーレムが、主であるはずのマスティスを取り込んだ"。
言葉にしたらそういう状況なのだけれども私、サンブレッドの前で行われている現象はそういう事である。
「(なにが、起きてるの?
ゴーレムの命令が狂った? いや、それだけじゃ……)」
サンブレッドは油断をせずに、ただ今一度、《乱用の戦乙女》を行って力を強める。
相手が倒されるのをその目できちんと確認したその時こそが、サンブレッドが戦闘形態を解除する時である。今はまだ、ゴーレムが相手を取り込んだだけで、倒されたのを確認した訳ではない。
《グォォォォン!》
「‐‐‐‐ほら、やっぱり」
ゴーレムはマスターだったマスティスなるスケルトンを完全に取り込んだらしく、その姿は今までとはまったく別のものに変わっていた。
頑丈さが特徴だった大きな身体は人並み程度に縮んでおり、さらにあの怖そうな黒い龍の顔も消えている。
ただ強力なる力が、四肢に詰まっているのは分かる。
強敵には違いないだろうが……今の、サンブレッドなら対処できる。
「今の私の強化は、15回。これだけ強化すれば、足が速い獣系の魔物だろうと追いつけないほどの速さ! そして、攻撃力の高さも折り紙付き!」
ゴーレムは先程と比べれば装甲の薄さから、明らかに防御力が格段に落ちている。
あれならば、今のサンブレッドならば相手の後ろに回り込んで、そこから殴り飛ばす事など簡単である。
「‐‐‐‐喰らえ、《サンブレッド背面パンチ》っ!」
ネーミングセンスはさておき、サンブレッドは相手の後ろに回り込み、そのままの勢いで変化したゴーレムを殴っていた。
「(勝ったっ! 今の感触は、確実に相手の背中にぶち当たった感触!
そしてこの私の必殺技、《サンブレッド背面パンチ》は、相手に触れた瞬間にエネルギーを送り込んで相手の体内の魔力をかき乱して壊す技っ! これが決まった瞬間、相手の敗北は決まったも同然っ!)」
相手が倒せるまで油断しないサンブレッドが生み出したこの技は、逆を言えば喰らえば必ず相手を倒す秘技である。
防御も貫通し、相手の体内を直接狙って破壊する大技であり、これはたとえ自身のような生命力の高い吸血鬼であろうとも倒せる技。
「(たとえ、ゴーレムであろうとも、そのコアに直接響く秘技。
相手のゴーレムのコアに自動修復機能があろうとも、この技はその回復機能すらも乱して効く……これが当たった、つまりこちらの勝ちっ!)」
ニヤリ、とサンブレッドはそう思っていた。
‐‐‐‐自分の拳が抜けなくなっているのに気づく、その時までは。
「……っ?! 抜けないッ!?」
目の前に自身の拳が突き刺さっているのは、黒い魔力で出来た壁であった。
その壁は意思を持っているかのようにサンブレッドの攻撃を防いでおり、その拳を壁そのものが取り込んで逃がさないようにしていた。
そして、変化はそれだけではなかった。
‐‐‐‐いくら、相手が速くなっても‐‐‐‐
「……?! 声?!」
そう、明確な意図を持って、サンブレッドに"誰か"が声をかけてきている。
先程までいたマスティスではない、それとは別の重厚感がある声。
まるで、ゴーレムが意思を持って語り掛ければ、こんな感じがするだろうなという感じがこもった、重厚感がある声だった。
----こうして逃げないように抑え込めば、意味のない問題ですね‐‐‐‐
「だっ、誰っ!? 誰が話しかけているのっ?!」
----そして、このまま一気にっ! 相手を取り込んで、倒すっ!‐‐‐‐
黒い、サンブレッドの拳を取り込んで止めている壁とは別である。
それとは別に、新たな黒い拳がサンブレッドに向かって殴りかかていた。
「防御をっ!」
慌てて、サンブレッドは自らに防御魔法を施して拳から自身を守ろうとする。
しかし、何故か魔法は、途中で書き消えてしまっていた。
「……っ?! 魔法が、消えたっ?!」
----相手を取り込んでいる、押さえつけている。それならば、魔法への干渉も可能‐‐‐‐
「……そんなっ、理屈がありますかっ!」
それが事実ならば、全ての生物は相手を抱え込むだけで、相手の技を全て無効と化す恐ろしい世界が出来ているということになる。
いくらなんでも、そんな事はあり得ない。
理屈に合ってない。
それが事実ならばっ!
「‐‐‐‐ぜひ、私にもその方法のご教授をっ!」
‐‐‐‐‐えっ?‐‐‐‐
声の主は引いていた。
おかしな話である、私はそう思っていた。
相手が強くて、魅力的な技を持っているならば教えを願い請う。それが普通のはずだ。
事実、私は常にそうやって生きてきた。教えをうかがってきていた。
「肉弾戦に優れた者が居ればっ! 行って、殴られて教えを請いっ!
優れた剣の使い手がいればっ! 行って、斬られながらも教えを請いっ!
魔法に秀でた賢者がいればっ! 行って、愚かしくも蔑まれながらも教えを請いっ!
だけれども、あなたのはそのどれでもないっ! 相手の完璧なる制圧、まさにっ、私が目指す吸血鬼像そのものっ!」
姉は、ニパン・ブラッドレイはそんな私の姿を変だと言った。
「普通、吸血鬼じゃなくても、そんな風に嬉しそうにしながら、相手にやられながら必死にすがりつくだなんて変態の所業」と言っていた。
そんな事はない、あくまでも普通のはずである。
‐‐‐‐えぇ~、なにこいつ。なんでやられてるのに喜んでるの? 意味わかんない‐‐‐‐
「どうかっ! 話せるという事は、この言葉も伝わってるはずっ!
なにとぞ、何卒よろしくお願い申し上げますっ!」
‐‐‐‐人は、私をドエムと呼ぶ。
しかし私はこう答える。
ただ教えを請うているだけの、この姿のどこが変態なのかと。
"ゴーレムが、主であるはずのマスティスを取り込んだ"。
言葉にしたらそういう状況なのだけれども私、サンブレッドの前で行われている現象はそういう事である。
「(なにが、起きてるの?
ゴーレムの命令が狂った? いや、それだけじゃ……)」
サンブレッドは油断をせずに、ただ今一度、《乱用の戦乙女》を行って力を強める。
相手が倒されるのをその目できちんと確認したその時こそが、サンブレッドが戦闘形態を解除する時である。今はまだ、ゴーレムが相手を取り込んだだけで、倒されたのを確認した訳ではない。
《グォォォォン!》
「‐‐‐‐ほら、やっぱり」
ゴーレムはマスターだったマスティスなるスケルトンを完全に取り込んだらしく、その姿は今までとはまったく別のものに変わっていた。
頑丈さが特徴だった大きな身体は人並み程度に縮んでおり、さらにあの怖そうな黒い龍の顔も消えている。
ただ強力なる力が、四肢に詰まっているのは分かる。
強敵には違いないだろうが……今の、サンブレッドなら対処できる。
「今の私の強化は、15回。これだけ強化すれば、足が速い獣系の魔物だろうと追いつけないほどの速さ! そして、攻撃力の高さも折り紙付き!」
ゴーレムは先程と比べれば装甲の薄さから、明らかに防御力が格段に落ちている。
あれならば、今のサンブレッドならば相手の後ろに回り込んで、そこから殴り飛ばす事など簡単である。
「‐‐‐‐喰らえ、《サンブレッド背面パンチ》っ!」
ネーミングセンスはさておき、サンブレッドは相手の後ろに回り込み、そのままの勢いで変化したゴーレムを殴っていた。
「(勝ったっ! 今の感触は、確実に相手の背中にぶち当たった感触!
そしてこの私の必殺技、《サンブレッド背面パンチ》は、相手に触れた瞬間にエネルギーを送り込んで相手の体内の魔力をかき乱して壊す技っ! これが決まった瞬間、相手の敗北は決まったも同然っ!)」
相手が倒せるまで油断しないサンブレッドが生み出したこの技は、逆を言えば喰らえば必ず相手を倒す秘技である。
防御も貫通し、相手の体内を直接狙って破壊する大技であり、これはたとえ自身のような生命力の高い吸血鬼であろうとも倒せる技。
「(たとえ、ゴーレムであろうとも、そのコアに直接響く秘技。
相手のゴーレムのコアに自動修復機能があろうとも、この技はその回復機能すらも乱して効く……これが当たった、つまりこちらの勝ちっ!)」
ニヤリ、とサンブレッドはそう思っていた。
‐‐‐‐自分の拳が抜けなくなっているのに気づく、その時までは。
「……っ?! 抜けないッ!?」
目の前に自身の拳が突き刺さっているのは、黒い魔力で出来た壁であった。
その壁は意思を持っているかのようにサンブレッドの攻撃を防いでおり、その拳を壁そのものが取り込んで逃がさないようにしていた。
そして、変化はそれだけではなかった。
‐‐‐‐いくら、相手が速くなっても‐‐‐‐
「……?! 声?!」
そう、明確な意図を持って、サンブレッドに"誰か"が声をかけてきている。
先程までいたマスティスではない、それとは別の重厚感がある声。
まるで、ゴーレムが意思を持って語り掛ければ、こんな感じがするだろうなという感じがこもった、重厚感がある声だった。
----こうして逃げないように抑え込めば、意味のない問題ですね‐‐‐‐
「だっ、誰っ!? 誰が話しかけているのっ?!」
----そして、このまま一気にっ! 相手を取り込んで、倒すっ!‐‐‐‐
黒い、サンブレッドの拳を取り込んで止めている壁とは別である。
それとは別に、新たな黒い拳がサンブレッドに向かって殴りかかていた。
「防御をっ!」
慌てて、サンブレッドは自らに防御魔法を施して拳から自身を守ろうとする。
しかし、何故か魔法は、途中で書き消えてしまっていた。
「……っ?! 魔法が、消えたっ?!」
----相手を取り込んでいる、押さえつけている。それならば、魔法への干渉も可能‐‐‐‐
「……そんなっ、理屈がありますかっ!」
それが事実ならば、全ての生物は相手を抱え込むだけで、相手の技を全て無効と化す恐ろしい世界が出来ているということになる。
いくらなんでも、そんな事はあり得ない。
理屈に合ってない。
それが事実ならばっ!
「‐‐‐‐ぜひ、私にもその方法のご教授をっ!」
‐‐‐‐‐えっ?‐‐‐‐
声の主は引いていた。
おかしな話である、私はそう思っていた。
相手が強くて、魅力的な技を持っているならば教えを願い請う。それが普通のはずだ。
事実、私は常にそうやって生きてきた。教えをうかがってきていた。
「肉弾戦に優れた者が居ればっ! 行って、殴られて教えを請いっ!
優れた剣の使い手がいればっ! 行って、斬られながらも教えを請いっ!
魔法に秀でた賢者がいればっ! 行って、愚かしくも蔑まれながらも教えを請いっ!
だけれども、あなたのはそのどれでもないっ! 相手の完璧なる制圧、まさにっ、私が目指す吸血鬼像そのものっ!」
姉は、ニパン・ブラッドレイはそんな私の姿を変だと言った。
「普通、吸血鬼じゃなくても、そんな風に嬉しそうにしながら、相手にやられながら必死にすがりつくだなんて変態の所業」と言っていた。
そんな事はない、あくまでも普通のはずである。
‐‐‐‐えぇ~、なにこいつ。なんでやられてるのに喜んでるの? 意味わかんない‐‐‐‐
「どうかっ! 話せるという事は、この言葉も伝わってるはずっ!
なにとぞ、何卒よろしくお願い申し上げますっ!」
‐‐‐‐人は、私をドエムと呼ぶ。
しかし私はこう答える。
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