混色の元ダンジョンマスター様。

摂政

文字の大きさ
40 / 40

ニパンは同盟する、けれどーーーー

しおりを挟む
 ニパン・ブラッドレイは自分の事を、冷静な人間だと思っている。
 妹のサンブレッド・ブラッドレイがかなり武闘派よりな性格になってしまったため、自分はしっかりしなければいけないという責任感の元、そういう性格になってしまったのである。

「そろそろですかね、かね」

 だから、自分に同盟を求めたマスティスと妹のサンブレッドとの戦い。その2つの戦いがもうすぐ決着がつくと、あたりをつけていた。
 流石にどちらが勝つかまでは分からなかったが、そろそろ勝敗がつくだろう、と。

「マスティスが勝ってしまえばあちらに8割もダンジョンの報酬を渡さなければならない、ない。それは本当にかなり、痛すぎる、ぎる。
 こちらが勝てばほぼ無償であちらの強化方法を知ることが出来るのはデカい、かい。それさえあれば、私達の迷宮の質はさらに向上するでしょう、よう」

 出来れば、後者が望ましい所である。
 だけれども、マスティスは渡したばかりのゴーレムを素体として強化しての対戦。その上、こちら側はサンブレッドを始めとした吸血鬼族の精鋭5人組。
 吸血鬼の精鋭4人に勝つのも難しそうだが、その上でサンブレッドに勝つ方が難しいだろう。
 だから勝つ可能性が高いのは明らかにこちら側。

「勝利はこちらの手にあると言っても過言ではありませんね、んね」

 上機嫌で、ニパンは向かっていった……のだが。



「ええっ、これがこうなっているの!? マジで凄くない、ヤバすぎない?!
 こっ、これで殴られたならどんなに良い刺激が……ハァハァ……」
《グォォォン?!》
「早めに、ニパンさん……来ないかなぁ……」

 サンブレッドの勝利を願ってきたが、どうやらそれはダメ、だったらしい。
 ニパンがやって来ると、そこにあったのはドラゴン顔ゴーレムに頬をすり寄せている妹。そしてそれに困惑する骨の魔族マスティス。
 この状況で分かるのは2つ。1つはこちら側が負けたということ、もう1つは妹の厄介な病気が再発してしまっているということ。

「‐‐‐‐まったく、うちの妹が迷惑をかけてるなんて、最悪ですね、すね」

 はぁー、と分かりやすく大きなため息を吐くと、それに気づいたのかマスティスが声をかける。

「やっと来てくださいましたか、ありがとうございます。
 これをどうすれば良いのか、迷っていたところなんですよ」

 骨だけの顔のため分かり辛いが、マスティスは心の底から安どしていた。
 一方で、ニパンの方はマスティスに聞き返す。

「えぇ、あなたの勝ちですね、すね。約束通り、あなたの取り分は8割で構いませんよ、んよ。
 ……ところでなんですが、あの黒いドラゴン顔のゴーレム、れむ。あれがあなたが強化したゴーレムという事で良いんですか、すか?」

「えぇ、僕の強化方法で強化したモノです」

 僕は端的に、ニパンにどう強化したのかを教える。

 既に同盟相手、しかも僕の強化方法というのは恐らく僕専用のスキル、混色能力での効果。
 教えたとしても、僕がいなければ出来ないという訳だ。
 と言うか、最初に教えても別に問題なかった。けれども教えたら教えたで、なにかよからぬ考えになる可能性もあるので止めておいたのだが。

「……なるほど、色を与えることで能力を与えるという固有スキルですか、すか。
 今分かっているスキルの力だけでも、格別に強いとしか言いようがありませんね、んね。なるほど、それならば確かにあの力にも納得が、くが」

「一応、似た説明はサンブレッドさんにもしたんですが……あのように、ゴーレムにべったりで」

 僕とニパン、2人の視線はゴーレム・シルバに踏まれて気持ちよさそうにしているサンブレッドの姿があった。彼女の顔は心の底から嬉しそうにしており、踏まれる事を嬉しがっている。
 ……自分の身体をいたぶるのが、そんなに好きなのだろうか? この変態吸血鬼は。

「とりあえず、あなたの能力の可能性については十二分に理解しました、した。ダンジョンの報酬を8割与えるのも問題ないくらい、ですね、すね。
 ……それにこれなら、アイツとも戦えるはず、ですし」

「アイツ?」

 マスティスはニパンの言葉に対してどういう意味なのかと考えていたが、サンブレッドが踏まれたまま顔を上げて、こちらを見ていた。

「お姉ちゃん……アイツって、【端末】の魔王イキリスタの事、だよね?」

「えぇ、あの【端末】の魔王というヤツよね、よね。通称【初見殺し】の魔王イキリスタ、すた」

 2人の吸血鬼の顔は真剣そのものだった、だけど妹の方はと言うとゴーレムに踏まれているのでイマイチしまらないのだけれども。

「……まぁ、良いでしょう、よう。
 同盟を組みましょうか、マスティス・タウスト。一緒にダンジョンをより豊かにしましょう」

「あぁ、よろしく頼みます」


 この時、僕は知らなかった。
 そんなイキリスタの力を与えられたオークロードがこちらに向かっているなんて事は。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

黒騎士
2017.11.15 黒騎士

最初に感想送らせて貰って以来、お久しぶりです。毎回感想は送れませんが、更新が無いか毎日チェックして楽しみにしてます。
更新頻度が少ない所為で、新作の時期に読者を掴めなかったのは残念ですが…決して残念な作品ではないので、自信を無くさないで下さい。
更新するタイミングを、暇な人が未読の作品を漁る時間帯に合わせられれば少しずつでも読者増やしていけるかもしれません。


さて、今回の最新話で漢字変換からのミスと思われる語句のおかしな箇所が有ったので、再チェックをお勧めします。

それと、ササが眷属やら配下になったのは分かりますが…色々と疑問と違和感を覚えます。
まず、いきなりステータスが表示され、仲間に入った瞬間が不明瞭。主人公も何の疑問も無く受け入れてますし、普通はまず何で勝手に仲間になったのか疑問に思うところでは?
色を塗られたから仲間になったというのは何となく分かるのですが、スライムや狐娘とは違う方法で仲間になった事もあり、このままではもし色が落ちたらその瞬間支配から離れてしまうんじゃないかと思いました。どういう仕様になってるんでしょう?

最後に、これは個人の表現や個性なので他人が口を出す事ではないと思うのですが…あまりに気になってしまうので言わせて頂きますが、聞き流して下さい、
「~~だけれども」という言葉が、とにかく気になります。特に、一段落に3つ4つ入っていると…違和感を通り越して少しイラっとします。
でも、これはお互いに個人の感性なので、気にしないで下さい。

それでは、次の更新お待ちしてます。

2017.11.15 摂政

感想、ありがとうございます。
うん、頑張ります。ちょっと更新時間については考えておきますね。

再チェックと、ササの件につきましてはこの辺は後で確認しておきます。
「~だけれども」も同じなので、ちょっと考えておきますね。

短いですが、感想ありがとうございます。
これからも頑張らさせていただきます。

解除
黒騎士
2017.10.18 黒騎士

初めまして。
コンセプトが気に入り読ませて頂きました。ほんの僅かな誤字と、改行で間を開け過ぎなのが気になった程度でとても読み易かったです。今後の展開に期待させて貰おうと思います。…が、気になった点が有るので挙げさせて貰います。

まず…世界観。完全ファンタジーな異世界なのか、現代地球の文化と混在する世界なのか……
小説の件とか、他様々な単語や用語が一般的なファンタジー異世界には存在するとは思い難い物が多いので世界観が全く掴めません。

次に、主人公は何者なのか?所謂種族は何なのか?
人間の様な印象を受けるのですが、魔王に仕えていたのなら魔族や亜人などの異種族の可能性も有り、特定されてないと主人公の姿がイメージ出来ないんです。

それと…職業が「元ダンジョンマスター」なのはどうかと。それ職業じゃないですよね?「無職」か「なし」と表示されるのが普通なんじゃないかと思いました。

あと、最後に出て来た脳内音声というかガイドというか……アレが何なのか謎です。仕様の説明が有ると良いと思います。今後の話で言及されるならそれも良いです。


…と、職業の件はそういう仕様ですって事でも構いませんが、他は改善すればもっと読者が増えるかもと思います。
最後にツッコミをひとつ…
勇者もどきの鎧と剣、剥ぎ取らんかあーーい!

2017.10.20 摂政

感想ありがとうございます。
コンセプトに関しましては、「自分はこう言うのが惹かれるんだけれども」と思って書いたので、同じように感じてくれる人が居て嬉しいです。誤字は仕方がないとしまして、改行に関しましては場面転換なども兼ねておりますので、その点で考慮していただけると嬉しいです。
色々と疑問に思われていることもあるみたいなので、1つ1つ回答しておきます。

世界観について。
作品の世界観については、基本的には人間や獣人など様々な種族が存在する世界ですね。魔法やスキルなどもあるという世界。
人間達とは別に魔王と呼ばれる者が数多く存在しており、彼らはダンジョンマスターや配下の者を使って領土を支配している……いわゆる、国のようなものですね。

主人公の種族について。
これに関しましては、ちょっとばかり答えられないんですので、申し訳ございません。その辺も後々楽しむ要素なので思っていただけると嬉しいです。
そもそも、自分の容姿につきまして答えるような主人公ではないと考えていましたので。

職業の「元ダンジョンマスター」という記述について。
ステータスはいわゆる名刺みたいな物だと考えておりまして、ですので「無職」と書くよりかは「元ダンジョンマスター」の方が個人を特定する物としては良いかなぁと。
なので、今後もステータスにはおおよそ職業とは言えないような、「忍術の天才」とか、「古代文明の遺産」とかも普通に書いていくつもりです。

音声ガイドについては、第2話にて詳しい詳細を載せておりますので、確認していただけると嬉しいです。
ツッコミについても、第2話である程度その辺に触れてます。

最後に……
読んでくださって、その上感想までいただいてありがとうございます。
これからも楽しんでいただけるよう、誠意努力するつもりですので、応援よろしくお願いします。

摂政より 感謝をこめて

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。