混色の元ダンジョンマスター様。

摂政

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【大足】と、【鉄格子】の正体。

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「あっ、【鉄格子】もきちんと対処してくれたようで嬉しい限りだよねぇ~。
 これで、のるまも達成してくたから、私としてはいう事ないよねぇ~」

 ――――結局のところ、真のラスボス=ジョルグジョルグさま、などという最悪の結末だけは避けられたらしい。

 無駄に上機嫌な様子のジョルグジョルグさまが虚空から突如として現れ、村長の家で話となったのだが……最初にそれを言われてしまう。
 彼女の隣には竜の顔と人の身体、歴戦の戦いで傷付いただろう鎧と刀剣。明らかに上級者としか思えない姿である。ファンデスではなくて、こっちが本物の護衛なのだろう。

「いやはや、しっかし仕事が速いなぁ。仕事が速いというのは、本当に部下として嬉しいですねぇ。
 その強さをさぁ、本当の部下だった頃に見せて欲しいんですけどねぇ」

「そうですね。と、反芻します」

 ぺこりと丁寧に頭を下げる、竜人の護衛。

「あっ、そうだ。そうだ。紹介して置きましょうか。
 ――――彼は私の護衛の中でもとびっきりの精鋭、竜人のグリマくん。空間を自由に操作して、もう1つの別空間を作り上げるという、うちの幹部クラスちゃんだよ」

「初めまして、グリマと申します。空間を操る事に長けておりますが、それ以外の武力の方もしかと出来ますのでよろしくお願い致します。と、頷きます」

 頭を下げたグリマと名乗った竜人の護衛だが、その次の瞬間にはキリリッとした瞳でソラハを見つめていた。

「ジョルグジョルグさま、それからマスティスさま。
 あそこの狐女……少しお借りしても構いませんか? と、提案します」

「私、ですか?」

 キョトンとするソラハさんだったが、俺としては特に違和感もなかったので大丈夫だと許可を出す。
 ジョルグジョルグさまも同じ意見みたいで、「行っといで~」と軽く言い放つ。

「こっちは構わないから、グリマの方は好き勝手にやってくれて構わないさ。なぁーに、私はグリマを信じてるからね、なにか考えがある事は、それが後に役立つ事である事は分かるからね。
 私、グリマのことはふかーく信頼してるから。グリマは、私の信頼を裏切る真似をしない、そう思ってるから」

 ニコッと笑うジョルグジョルグさまに対して、グリマは唐突に胸元を抑えていた。

「多大な信頼に対して、私は応えたいと思っています。と、大きすぎる信頼に対して恐怖を感じてしまいます」

 ペコリと頭を下げていたが、その手は分かりやすく震えていた。
 ……"私の信頼を裏切る真似をしない"。そう言うのは確かに部下としてはそこまで信頼されいると嬉しいのかもしれないが、過大すぎるために胸が痛いのだろう。俺も、同じような状況なら痛いだろう……。
 ソラハさんはグリマに連れて行かれ、突如として虚空へと消える。恐らくは、グリマの空間能力かなにかなんだろうが……。

「ハハハッ、多分だけれどもグリマの悪い癖が出たんだろうねぇ」

「悪い癖……?」

「グリマはね、ああ見えて世話焼きな面が強くてね。力が強そうな印象があるとは思うんだけれどもね。あいつは案外と、教育係の方が好きなんですよ。多分だけどさぁ、ソラハのさっきの戦いぶりから我慢できなくなったんじゃない? 教育係として」

 ……まぁ、それなら嬉しい話だ。
 彼女、ソラハ・テンジョウインは圧倒的に戦闘経験がない。それだからこそ、こうして直々に指導してくれるのは嬉しい限りだ。

「――――さて、と。こちらはこちらで、残りの対処をしとこうかねぇ」

 パチンと両手を叩くと共に、圧が場を支配する。そして、なにか小さなモノが落ちる音がする。

 小さなモノがいきなり落ちたこの力、これがジョルグジョルグさまの魔王としての能力――――その名も【踏み潰すおみ足】である。
 "大足"で全ての物が平等にひしゃげるくらい踏みつぶされるように、見えないけれども確かに質量を感じるモノで相手をぺしゃんこにするという技。その力の前では見えなくても、小さくても、大きくても、硬くても……関係なく、踏み潰される。
 だからこそ絶対的な力を持ち、故にこんな凄すぎる能力を持ってるからこそ巻き込まれたくないから遠くに行きたかった訳なのだが。

 小さなモノが落ちた音が聞こえたのと同時に、それをひょいっとソラハは摘まみあげる。ハエかなにか、小汚いモノを手にするような手付きであった。

「ほいっ、と。これくらいで良いですかねぇ」

 用意していたボトル容器の中に、その摘まんだモノを放り入れるジョルグジョルグさま。
 ボトルを目の前で置かれたので見せて貰うと、中には1匹の小さな蜂が入っていた。その蜂はボトルの中で動き回り、時折こちらを見て怒るようにボトルを揺らしていた。

「――――これが【鉄格子】の、うちの息子の成れの果ての姿。
 ステータス的には……種族としては、タイニーホーネット。って、ところでしょうかねぇ?」

「タイニーホーネット……この小さな蜂が、ファンデス・ノトシクスか」


 ジョルグジョルグさまが教えてくれた通りだと、元々の始まりはファンデスの死体に集った数匹の虫型モンスターから始まったらしい。
 自分でモンスターを刈り取ることが出来ない小型の虫型モンスターの中には、生物の死体などの肉片を食べる事で辛うじて生き長らえているモンスターもいる。
 そうやって辛うじて生きているモンスター達は他の生物が良く死ぬ、つまりは自分の獲物が多い場所に多く存在する。戦場などに良く見られたために、【戦場虫】と言われた彼らは勿論、俺が管理していたダンジョンもその住処として利用していた。

 そんな戦場虫という種類の1匹、タイニーワームはいつものように自分の獲物として死んだファンデスの躯を食べていた。
 その際に、現れた何者か――――

「とりあえず仮の名称ではあるが、私と繋がってる魔王達の間では【ノトシクス】と名付けています。
 これはファンデスを初めとした、そいつの力を受けたと思われる者達が色々な大陸に居るみたいでね」

 この大陸の名前を、俺は知らなかったのだが――――ジョルグジョルグさまによると、この大陸は【ウェル大陸】という名前で、他にも5つほど大陸があるらしいのだが、そこまで覚えてても役に立たなさそうなのでスルー。やっぱり重要なこと以外は忘れちゃうよね、重要なことも忘れる世の中ですが。
 とりあえずジョルグジョルグさまの範囲から外れる【サクリ大陸】という場所に行って見たいと思う。

 サクリ大陸では首都の方はなんだかんだ危険みたいだけれども、田舎の方は結構静かで落ち着いてるからオススメとのこと。
 別に俺は首都なんかは好きじゃない。そりゃあ色々な物が揃っていて便利ではあるけれども、そんなのは要らない。

 首都で強くなるという成り上がりを期待した旗上げもしないし。
 それだったら、田舎で本当に細々とで良いから、のんびりしたい。ゆっくりと、ゆったりと過ごしたい。

 期待に夢躍らせる、サクリ大陸!
 とりあえず、勇者に関わるとろくな目に遭わないことが良く、経験に身に染みて分かったので静かになりたい。


「とにかく、【ノトシクス】には十分注意して置けよなぁ~。私は別に心がない魔王じゃないから、知り合いが消えて嬉しいなぁんて思わないからさ。出来る限り、君が前々から望んでいる通りにお気楽に静かに暮らしとけよなぁ~」

 心にもない事を……などと言う言葉は、言わないでおこう。
 思っていても、余計な事になるのは必至だ。

「任せない、このあばずれ! このササが居る限り、ご主人様には指一本触れさせ――――」

「その前に、謝れ」

 ゴンッと頭を叩いて――――って、いってぇ! なに、これ!? 上の人間の方を叩いたはずなのに、まるで鉄のような感触だったんだけど!?
 上の方が柔らかそうと思ったんだけど、これだと下はどのくらい硬いの!?

「……いやん/// ご主人様ったら///」

 下の蜘蛛の身体の方を見てたら、ササの人間の顔の方が赤く……って、やめい。
 なにを考えてんだ、こいつ……。

 その様子を見て、ジョルグジョルグさまに爆笑されたのだが、とりあえず冗談かなにかだと思っているなら何よりだ。
 後は、グリマという指導係に連れて行かれたソラハの教育が終わったら、すぐさまそのサクリ大陸とやらに直行っ! 直行っ!

 3日ほどって言ってたけど、まだかなぁ~。
 少しは戦えるようになってくれるとありがたいんだけどなぁ~。
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