混色の元ダンジョンマスター様。

摂政

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新規開拓と、厄介事。

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「よしっ、この辺で良いかな」

 ジョルグジョルグさまの居るウェル大陸から、新たな居城を求めて俺達はサクリ大陸へとやって来た。大陸を移動したと言っても、俺達自身に大陸を移動したという実感はまるでない。
 ウェル大陸では見られないスクラやら、それからウェル大陸では見られなかった紫色の花などの若干な変化はあるものの、細々とした違いなのでどうなのかが分かり辛い。

 けれども、俺達は確かに大陸を渡ったのだ。
 ちょっとした満足感に浸りつつも、俺はすぐさま居城作り……ダンジョン作りを開始した。

 ササやソラハ、マッチョスライム、ゴブリン達に捜索して貰ったのは、針山と言っても過言ではない木々が並ぶ森林地帯である。ここに選んだ理由としては森の木々などの自然豊かな点と、前の俺が管理させて貰っていたダンジョンが森の中にあったからである。
 この歳から、今から余生を送ろうとしているのにも関わらず、今までの経験が全く活かせない場所での居城作りは困難の連続だろう。わざわざそんな事をするつもりはないので、前と似たような場所でダンジョンを作ろうと思ったのである。

 ダンジョンを作る場所の条件としては、3つ。
 近くに水場か果実がなる木々がある事、近くに強力な魔物の巣がない事、そして街道から離れている事の3つである。
 1つ目の条件はさほど重要視してないが、残り2つの条件に付いてはかなり重要視している。
 だって静かな余生を邪魔するトラブルになりうるに決まってるから。そんなのは根元から切り落とすに限る。

 とまぁ、そんな風にある程度こだわってダンジョン候補地を探っていたのだが、マッチョスライム達がそれなりに良い土地を見つけて来てくれた。

「ここか……」

 マッチョスライム達が見つけ出した所、それは激しい滝が降り注ぐ滝壺の奥だった。
 滝壺の奥は空洞になっており、ちょっとした空間になっており、ダンジョンを作れそうだった。肝心の入り口に関してなのだが、滝の裏という事で冒険者達から見つけにくいようになっていた。
 とは言え、自分達も滝を通って移動するのは面倒なので、少し遠回りとなるが穴を掘って滝の裏との道を開通した。

 岩をソラハの青い力を込めた魔法で掘り進み、洞窟が崩れないようにササの赤い糸で崩れないように補強しながら道路を作り上げる。
 大がかりな作業のようなモノだが、マッチョスライムとゴブリン達がテキパキと働いてくれたために、作業時間としては2時間ほど、だろうか?


 さてさて、洞窟を滝の裏へと開通させて、通り道を作った後は本題のダンジョン作りである。
 それは、俺の魔王(仮)の力が必要だからだ。

「(仮)付きとは言え、魔王は魔王。上手く言ってくれよ……」

 俺が意識を集中させて、壁に手を当てる。
 目を瞑り、魔力を込めると共に、ステータス画面のような表示が現れる。


=====
【混色】の魔王(仮)、ダンジョン作成申請を確認

使用出来るスペースを形成中です
……
…………
………………完了致しました

=====

 よしっ、上手くいったようだ。
 目を開けると、手を当てていたはずの壁は消え去り、代わりに大きな穴が生まれていた。

 みんなと共に中に入ると、そこには人4人が横一列で並んで通れるくらいの通路。通路を抜けた先には大きな空間。それが網の目状に作り上げられていた。

「どうやら、上手い事作成できたようだ」

 魔王、それは領土を管理する存在。同時に領土を"作り出す"存在でもある。
 ダンジョンマスターはダンジョンを管理する者なのだが、ではそのダンジョンはどうやって生み出されているのか。それは、"魔王によって生み出されている"である。
 魔王の称号が持つ力は配下、そして自らの力の一部を利用して、ダンジョンを作り上げる事が出来る。
 
 とは言え、万能の力ではない。
 ダンジョンを作るのには今のようにお隣さんとの間関係を大事にしないといけないし、闇雲に色々な場所に作ったとしても活用するだけの実力がなければ意味がないからだ。
 ジョルグジョルグさまみたいにダンジョンマスターとして何名かを雇える実力者なら別だろうが、余生を謳歌するだけなら1つダンジョンを作ってそこでじっくりするのもアリだ。

 ダンジョンのある程度の下見をして、特に問題もない事が分かった。
 通路や部屋の大きさは魔力によってある程度調節できるし、内装はおいおい少しずつ作っていこう。焦ることもないし、のんびりやっていこうじゃないか。


「さて、それじゃあ皆で作っていこう!
 ――――夢のダンジョンライフのために!」

 俺の掛け声と共に、俺達のダンジョン作りはスタートした。





 作業は順調に進んだ。
 ササ、もしくはソラハをリーダーとした素材回収班が良い仕事をしてくれるからだ。
 ササは魔法、ソラハは赤い糸を用いてこの辺りに現れる強力な魔物を倒して貰う。その魔物で使える部分や、道中の使える物に関してはゴブリンやマッチョスライム達に運んでもらう。
 俺は主にダンジョンが見つからないようにするための作業、それからダンジョンにトラップを仕掛ける事に時間を費やした。かと言って、ダンジョンに内装も用意し始めていた。内装についてはとりあえず全員が一緒になれる大きめの机や椅子、各々の部屋で必要な物とかだろうか。

 ササは自前の糸で大抵の家具は自作していたが、机など糸だけでは作れないモノに関してはこちらも別で用意した。ソラハには魔法などが載っている本などか。
 ゴブリン達は快適な寝床、マッチョスライム達には筋トレに使うダンベルとかだろうか。
 俺はただ自分が過ごせる部屋。

 ダンジョンというよりかは、快適な集合住宅……。
 いや、静かに暮らすという目的に対してはなにも間違ってはいないのだが、これで冒険者を待ち受けるダンジョンかと言われると正直微妙な気がしてならない。まぁ、その辺の調整はおいおい考えて行こうじゃないか。
 今は快適なダンジョンを作り上げる、それだけを目的としたダンジョン作りで。

 追いかけてくる敵も。
 差し迫る恐怖も。
 自分に対して脅しをかけてくる恐怖も。
 そんな期限もなにもなく、ただ自分達の気の向くまま作り上げる。最高じゃないか。

 机を初めとした生活するのに必要となる家具なども揃いつつある中、そろそろ調度品やら美術品やらを用意しようかなぁと思っていた頃――――そいつらは現れた。

「初めましてっ、魔王さま!
 あなた様にお頼み申し上げたい事がございましてっ!」

 現れたのは真剣な表情でこちらを睨み付ける、5人ばかりの褐色肌が特徴のダークエルフ達。
 着ている服は薄汚れており、首には首輪をかけている。どう見てもどこかに雇われていた奴隷か何かが逃げ出して来たとしか思えない。

 別に奴隷に関して、俺は義憤に燃える熱血漢でも無ければ、もしかしたら恩を植えるかもとかを考える悪人でもない。
 ただ、これには厄介事の臭いしか感じない。

 ダークエルフ達の首輪にはとあるマーク、そこには魔王を意味するマークが描かている。つまり彼らは元はどこかの魔王の所有物、そんな彼らが同じ魔王である俺に助けを求めている。
 魔王が嫌で逃げ出したのならば、同じ魔王である俺に頼るのは可笑しな話。何かの裏があるに違いない。

 魔王から逃げ出した彼らが、同じ魔王に助けを求める理由。
 それくらいの力を持つ者でないと、自分達を助け出せないと彼らはそう言っているのである。
 明らかに厄介事、それもかなり最悪な意味での厄介事。

 相手がどれくらいの地位の人物なのかは分からないが、少なくとも相当高いのは確かである。
 もしかしたらこのサクリ大陸を代表する方なのかもしれない、そんな方に対してわざわざ喧嘩を売る?
 のんびりスローライフの終わりは、目に見えている。


 しかし、それ以上に――――

《受けろよ。面白さを追求するならそうするべきだろ?
 ――――受けろ受けろ受けろ受けろ受けろ受けろ受けろ受けろ受けろ受けろ》

 俺の頭の中にて鳴り響く、《悪魔の声》の厄介さをどうするかが悩み所だった。
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