配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

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第397話 連続殺人犯と戦おう配信(2)

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 ----短距離転移魔法【パッとテレポート】で、私達はクリィム村から少し離れた場所にある丘へと転移していた。私達と言うのは、私とフランシア、そしてクリィム村連続殺人事件の犯人であるロンダリゼの事である。

「あ~ぁ! いきなりクリィム村から離されちゃったら、配信動画の整合性がつかなくて大変だというのにぃ~!」

 クリィム村という、一方的に攻撃できるというボーナスステージを失ったロンダリゼ。しかし、彼女はすっごくリラックスしており、余裕そのものという様子だ。
 彼女、ロンダリゼの動画配信をイータちゃんに解析してもらったが、彼女の動画内容は基本的に他人に迷惑をかけて、それで笑いながら走って逃げるというのが基本スタイル。イータちゃんの行った請求書のように完全に逃げ切るという事はないようだが、それでも純粋な走力勝負なら、ロンダリゼは圧勝している。

「(速度スピードに自信があるからこその余裕リラックス----という訳ではないようですね)」

 ふと見ると、ロンダリゼの手には先程はなかった武器を手にしていた。
 その武器は、傘であった。白い、貴婦人が差しているような傘であり、どう見ても武器には見えないのだが、私はその傘から、ピエームちゃんが持っていたチェンソーブレードと似たものを感じ取っていた。

 あれは、恐らく彼女が言っていた【模造する上昇志向クイーン・レプリカ】というモノなのだろう。それに彼女は、快感のブラッド、ピエームにチェンソーブレードを与えたという魔王ユギーの五本槍の名前を口にしていた。

「(悪魔と契約して、強力な武器を手に入れた、って所か)」

 だとしても、そこまで恐れる事はない。
 彼女が武器を使う瞬間は、この目ではっきりと見た。彼女がなにか鋭利な黒い棒のようなものを振るった瞬間、5人の奥様達は一瞬で真っ二つに切り裂かれ、それと同時に黒い棒から奥様達の模造コピーされた死体が出て来た。

 私が見たのは、傘の中にある骨----もとい、仕込み刀の一種だったのだろう。
 だとすれば、あの傘のような形はこちらを油断させるためのモノであり、中から出て来る仕込み刀にこそ注意を向けるべきである。

「来ないの?」

 私とフランシアが警戒していると、ロンダリゼはそう言って挑発を仕掛けて来る。あまりにも分かりやすすぎる挑発に、かかるはずがないだろうと2人して、そう思っていると、ロンダリゼは傘をクルクルと回転させながら、こちらへと歩いて来る。

「それじゃあ、こちらから参りましょうか」

 とんとんっ。

 それはあまりにも雑な歩き方。基本が何1つとしてなっていない、隙だらけのど素人の歩き方であった。もう逆に、どうしてそこまで隙だらけなのと言いたくなるくらいであった。

「(攻めなきゃ勝てないな)」

 私はそう思い、身体に【オーラ】を纏わせる。【オーラ】を纏う事によって身体能力が向上した私は、彼女がそろりと隙だらけな一歩を踏み出したその瞬間に、【オーラ】を纏わせた拳で殴り掛かった。

 ----完全に入った。

 そう思った次の瞬間、彼女の持っていた傘がキラリと光り輝いた。光り輝くと共に、素人丸出しのロンダリゼの身体に【オーラ】が、いや私が使っている【オーラ】よりも遥かに高次元な"なにか"が、ロンダリゼの身体を包み込む。

 ----かんっ!

 それは、分厚い鉄を殴ったような感覚であった。同時に、ぶよっとした柔らかいスライムを殴ったような感覚であった。
 硬くもあり、同時に柔らかくもある。まさしく、防御における最強の形と言えよう。

 もう一度、今度は【オーラ】を一点に集中させて、『殴る』ではなくて『貫く』を意識して、ロンダリゼの身体に拳を叩きつける。叩きつけられた拳は、彼女の、【オーラ】ではない"なにか"に当たり、私の拳を傷つける事無く、その衝撃を全て受け止めていた。まるで、子供の方は全力で殴ったのに、プロの格闘選手がそれを優しく包み込むかのような、圧倒的な力の差。
 ぶち抜ける気が全然しない。それだけの、圧倒的な力を、ど素人のはずのロンダリゼが手に入れていたのだった。

「おぉっ! これは凄い力を、いきなり模倣コピーできましたねぇ!」

 ニコニコと、笑うロンダリゼ。
 その瞬間、私とフランシアはその傘の効果を理解した。

「厄介ですね、これは……」
「えぇ、ただの迷惑配信者が持つのには勿体なさすぎる凶器です」


「さぁ、どんどんあなた達は攻撃して来てくださいな! そうすれば、私はそれよりも強い能力を私は模倣コピーできるのですから!」


 お騒がせ系配信者ロンダリゼは、自分が悪魔から得た武器を振り回しながら、無邪気にそう笑うのであった。そして、彼女がとんっと、ほんの少し力を込めて地面を蹴ると、その足元に大きな穴が生まれていた。

 そうか、あれだけの力ならば、防御として優れているだけではなく、攻撃に転ずればあれだけの破壊力も出せるのか。
 ----そして、今の感じからして、全然力を入れた様子がないのに、あの威力。ヤバいとしか、言いようがないだろう。

 私の【オーラ】を模倣コピーして、ロンダリゼはそれよりも強い力を手に入れた。一気に、最強の剣と盾を手に入れて、最強冒険者となった新入り----それが彼女、ロンダリゼであった。
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