配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

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第119話 はちゃめちゃ魔女の予想配信

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「魔女スタダムが、犯行声明を出して来た」

 怪盗めしどろぼう対策班----もとい、魔女スタダム捕縛班。
 その陣頭指揮を執っている、冒険者組合のスピリッツ組合長が、1通の手紙を持ってきた。


『むきぃーっ! 良くも私の完璧なるスター計画が台無しになってしまったではないですか!
 こうなれば、私は人々を喜びに導くスター計画から、偉大なる犯罪者ギャングスターになろうと思いました!
 私はこれより、この王都を災いの渦で満たして見せましょう! 私をただの有名人にしなかったことを後悔するが良い! 怪盗めしどろぼう&魔女スタダム』


 それは、魔女スタダムからの脅迫状であった。
 その脅迫状を読み、対策班の面々は一様に顔を見合わせていた。

「「「「逆恨みも、はなはだしいな」」」」

 要するに、承認欲求をこじらせ過ぎた結果、犯罪に手を出したという事だ。
 自分を有名にするための事件を自らが生み出し、それを自らの手で解決して有名になろうというのが、魔女スタダムの計画だったようである。
 自作自演マッチポンプすぎて、対策班の面々は頭を悩ませていた。

「まったく……この魔女は承認欲求が強すぎますね」

 私が頭を悩ませていると、アレイスターは「どういう事ッスか?」と疑問符を浮かべていた。

「そうか。アレイスターはあの魔女の事を知らなかったか……」

 アレイスターは、あの『錬金術師大会』の優勝賞品であったドラゴンの卵を使った魔物ゴーレムだ。
 一方、魔女スタダムと出会ったのは、『錬金術師大会』の決勝戦の一度きり。確かに会う機会がないから、アレイスターは会った事がないか。

「簡単に言えば、スローライフで静かに暮らしている癖に、有名になりたいとほざいている女だ」
「なるほどッス! つまり、マスター・ススリアのようなモノだと!」
「いや、全然違うから。私とは全然違うし」

 千切れんばかりに手を振って、私は必死に否定を貫いた。

 静かにひっそり暮らしている魔女の癖に、承認欲求が強すぎて、このような事件を引き起こす魔女スタダム。
 そんな女に、どうして私が似ているというのだろうか? 全然違うでしょうに……。

「マスター・ススリアは、田舎でスローライフしているのに、都会のやり手商人とばかりに手広くやっておられるッスよね?
 魔女スタダムは話を聞くに、静かにひっそり暮らしたいのに、貴族か王族かと言わんばかりに有名になりたいんッスよね?」
「…………」

 ……正論であった。確かにそう言うと、似ている感じもするなぁ。

「つまり、こういう事ッスよね? マスター・ススリアなら、怪盗めしどろぼうが次に・・どう動くか・・・・・予想・・できる・・・と!」
「……はい?」

 アレイスターの言葉に、皆が大きな声をあげていた。

「おおっ!」「凄いな、そりゃ凄すぎる!」「相手の行動が予測できれば、対策も簡単だ!」
「魔女と錬金術師、確かに錬金術を使うに似ているぞ」「良し、考えてくれ! ヤツの行動予測を!」

 対策班に攻められるも、私は魔女スタダムの行動予測なんて出来ないんだけど。

「(う~ん? もし私が、承認欲求が強い魔女スタダムだとしたら……か)」

 ヤツは、特殊な錬金術を持っている魔女である。

 『食欲を無くす食べ物』も、『宝石を牛に変える魔道具』も、魔女としての特殊な錬金術を使って作ったのだろう。
 他にも色々と、私の想像も出来ないような錬金術を持っているに違いない。


 ----けれども、魔女スタダムの目的は有名になる事だ。
 ----国を転覆する事はあくまでも有名になるための"手段・・"であって、有名人になる事こそが、魔女スタダムの"目的・・"である。


「そうだとすれば、自分だと知らしめることが重要であって----だとすれば……」

 私の頭の中には、ひどく恐ろしい妄想が浮かんでいた。
 もし私の考えた通りだとすると----。

「----ッ!?」

 バンっと、私が立ち上がると共に、周囲に居た冒険者、そして兵士達の目が私に集まる。

「どうした、ススリア? なにか、分かった事があるのか?」
「えぇ、とびっきり悪い、出来たら叶って欲しくはない想像が」



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ススリアが嫌な想像を、脳内で思い描いていた頃。
 その当人である魔女スタダムは、王都の外れ----資材置き場に居た。

 そこは、大工などの建築業に携わる者達が一時的に資材を置く場所。
 屋根瓦、木材、砂利、それらを運ぶ運搬用の魔道具など、建築に関わる資材が使いやすいように、一カ所にまとめられていた。

 そして、そこには----"石材・・"も置かれていた。

「----それじゃあ、やるぞ! 【マージ・マンジ】!」
「うひゃあああ! やるンゴ! やるンゴ!」

 魔女スタダムの隣にて、特徴的な語尾で話すのは、銀髪の美少女ゴーレムであった。
 胸の真ん中には『卍』という特徴的なマークが刻み込まれており、両腕はうねうねと紅白のコードで出来ていた。

 マージ・マンジと呼ばれたその美少女ゴーレムは、「ウヒヒッ」と不気味な笑い声をあげていた。

「やっていいンゴ? やっていいンゴ?」
「えぇ、今までは抑えてもらっていましたが、もう良いです。----"この石・・・全部を・・・牛に・・変えなさい・・・・・"」
「りょーかい、ンゴ!」

 マージ・マンジは、ペトッと紅白コードの両腕を、資材置き場に置いてあった石材に触れた。
 触れると共に、石はうねうねと揺れ動き、大きな牛へと変わる。

 あっという間に、資材置き場に置かれていた石材は、大量の牛の群れとなっていた。

「----さぁ、マージ・マンジよ! 牛の群れを用いて、王都をぶっつぶせ!」
「了解ンゴ! 世界を、ぜーんぶ、まんじ色に染めてやるぞぉぉぉ~~~!」

 そして、マージ・マンジは牛の群れを率い、王都襲撃を開始するのであった。
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