配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

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第276話 辺境イスウッドのノルカ配信(2)

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「(情報通り、ですね)」

 デルタちゃんは、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】の魔道具本体がある洞窟前へとやって来た、ノルカ・ブックマンを見てそう思う。
 ミリオンがこちらへと送って来た情報通り、彼女の額には【狩猟】の二文字が刻まれており、どう見ても正気とは思えない目をしていた。完全に、ドン・デーロに洗脳されていると見て、間違いない。

「ダヴィンチ、一緒に戦いますよ」
「わぉん! りょうかいです、デルタのアネゴ!」

 デルタの補佐役として、ススリアに任命されたダヴィンチも、気合十分と言った様子で、大きく鼻息を出していた。気合十分、と言った様子である。

 【アルファ・ゴーレムサポートシステム】の魔道具本体を守る、最終防衛ラインであるデルタちゃんとダヴィンチ。
 そんな2人に対して、ノルカはジトッとした目を2人に向けていた。



「そこ、通してもらいますよ!」

 ノルカはそう言って、戦闘用の短刀を取り出すと、それを地面に突き刺していた。短刀を地面へと突き刺すと共に、周囲の地面から大量の剣が草木のように生い茂って生えて来た。

「----【刀剣舞踏ブレード・ワールド】?」

 大量の剣が草木のように生い茂って生えて来たその様子を見て、デルタちゃんはすぐさまその魔術を言い当てた。

 フィールド変化系統魔法【刀剣舞踏】。以前、デルタちゃんがヘルオーガとの対決に使った【武人の空間オーラ・プレイス】のように、自分にとって有利な世界を作り出すフィールド魔法。
 その魔法の効果は、魔法を発動した自分の周囲に、無限に刀剣を生み出すという魔法であるが、そもそも習得難易度が非常に高く、なにより刀剣を生み出してもその刀剣を使いこなすほどの使い手が近くにいるとは限らない。

 無限に刀剣を生み出すだけの魔法、【刀剣舞踏】。
 この魔法を使えるようになる頃には、刀剣なんかに頼らない魔法使いとしての確かな腕を持っているだろうし。かといって、無限に刀剣を生み出してもどれも大量生産品で名刀という訳ではないため、普通に名刀の業物を持ち歩けば済む話。
 そのため、魔法の習得難易度が高い割に、あまり活用されていない魔法の1つであった。



「参ります」

 ノルカはそう言って、生えている刀剣を2本もぎ取るようにして掴み取る。そのまま地面を蹴って飛び上がったノルカは、器用に生えている刀剣を足場にしてその上に立った。
 そしてそのまま、右足を大きく上にあげると、足場にしていた刀剣を蹴り上げてきた。

「----っ! 【オーラ】全力!」

 デルタちゃんはまずいと感じて、【オーラ】を全力で放つ。なにか形にして噴射するような余裕はなく、彼女は【オーラ】を全力で噴射する。
 そのとっさの判断は正しく、ノルカが蹴り飛ばした刀剣は、物凄い勢いで【オーラ】を切り裂いていた。

「(凄いですね、このノルカは)」

 噴出する事により、【オーラ】をバリアのようにしたデルタちゃん。そのバリアを一気に破壊したノルカの攻撃に対して、デルタちゃんは凄いと、ただ一言賞賛した。

 なにせ、ノルカの攻撃は、デルタちゃんの【オーラ】のバリアを破壊したのである。ノルカの攻撃は、デルタちゃんと同じく【オーラ】を纏っているという事は想像できていた。
 恐らくは、ススリアと同じく【オーラ】という力を自力で発見して、なおかつ使いこなしているのだろう。

 デルタちゃんは、彼女を素直に賞賛する。
 商いの国シュンカトウ共和国で商人としての地位に固執しなければ、武芸者として一級品以上の才能を持ち合わせている人物である、と。

「まだまだ行きます」

 ノルカはそう言って、そこら中に生えている刀剣を足場にして、デルタちゃんの方に走って向かって来る。その際、先程の蹴りと同じく、刀剣を蹴って飛ばすという事を忘れずに。

 【オーラ】を纏って、物凄い勢いで飛んでくる刀剣。そして、手にしている刀剣を振るって、飛ばしてくる【オーラ】付きの斬撃波。
 デルタちゃんはそれを厄介だと感じつつ、対処していく。そして、ダヴィンチはそれに対し、【スピリッツ】の力を使う。

「----くらう、わぉん!」

 ダヴィンチが【スピリッツ】の力を使うと、彼女を中心に緑色の稲妻のような力が発動する。そして、その力を用いて、ダヴィンチはノルカが放ってくる刀剣を反発して、跳ね返す。
 ノルカは跳ね返って向かって来る刀剣を、足の指で掴むと、そのまま跳ね返してくる。

「わぉん?!」
「足癖の悪いっ……!?」

 そこら中に生えている刀剣を、意のままに操るノルカ。その動きに一切の迷いもなく、こちらが【オーラ】や【スピリッツ】の力を使って返す刀剣も、使えそうなら足の指で掴んだり、あるいは鞘で跳ね返したりしてくる。
 一撃一撃が、必殺に思えるほどに重い。そして【オーラ】の力に耐え切れなくなった刀剣を彼女は捨て、新たに生えている刀剣を拾い上げて斬りかかる。

 大量の刀剣を、使い捨て前提とした戦法。
 
「この人、商売人なんですかね。本当に……」
「くぅん……」

 【オーラ】を纏わせた刀剣にて、攻め続けるノルカ。それに対して、デルタちゃんとダヴィンチは、倒されないように攻撃し続けるのであった。



(※)魔法魔道具【刀剣舞踏ブレード・ワールド
 フィールド変化系統魔法【刀剣舞踏】を、魔女スタダムによって魔法魔道具化されたモノ。短刀の形状へと加工されたこの魔法魔道具を地面へと突き刺すことで、半径1km中に大量の刀剣を無限に草木のように生やす術式が発動する。効果時間は2時間、その間に短刀を破壊しても効果は持続する
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