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第6話 露呈
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ここからは、私が雇われた『池田昭和建設』における仕事の流れを記していこうと思います。 そして、私がこの『城』の一員となってから、優しかったはずの池田の化けの皮が少しずつ剥がれ始めます。
現場は和の役割でしたから、私は主に事務作業を任されました。しかし、それは私の予想以上に過酷な業務内容でした。
まず朝から晩まで溜まりに溜まった書類の整理、取引先への連絡、見積もり。昼食を取る暇もほとんどなく、それらを全て一人でこなすのです。
「おう恵子、見積もりまだ出てへんのか」
「すいません、もう少しで……なかなか手が回らなくて」
「ええのええの、少しずつ仕事覚えてくれればええんやから。ほなちょっと外出てくるわ」
肝心の池田は雑誌を読み漁り、暇になれば酒屋か競馬に出かけていました。表向きは客先回りと言っていましたが、毎日そんな事の繰り返しでは私でもいい加減気付きます。
こんな状態で今までどうやって経営を維持してきたのか疑問でしたが、私を雇う前は日雇いで事務を雇っていたというのです。
今までも池田がこんな体たらくでありながら、常に事務を日雇いできるだけの利益を出し続けられていたのには、当時の私には到底予想もできないような『からくり』があったのですが、その忌まわしき『からくり』はもう少し後になって発覚することとなります。
私が仕事終えた頃……つまり深夜になれば、和が現場から帰宅すると同時に池田の怒鳴り声が響き渡るのが最早日課となっていました。
「和! お前また現場でヘマしたらしいの、お?」
和を持っていたヘルメットで思い切り殴りつける池田。とても和を同情で引き取った人間が出来る事ではありません。
しかし、それは愛情の裏返しなのだろうと私もあまり口出しする気にはなれませんでした。あくまで池田には和への愛情があるのだと、当時の愚かな私は信じ込んでいたのです。
「ボケがッ、お前のミスで儂とこの会社の評判が下がるやろが! おめぇ儂の城を潰したいんか? わざわざ鷲尾さんが仕事振ってくれたんやぞ!」
「ゥ・・・・・・」
和を必要以上に叱り付ける。これは単なる憂さ晴らしや嫌がらせではなく、池田にとって意味のある行動だったということに当時の私が気付く事はありませんでした。
ちなみに『鷲尾さん』と言うのは、池田と親交のあったやくざの名でした。仕事の斡旋や依頼、建設業界に顔がきくとのことで付き合いがあるのだと池田には教えられたので、やくざと言ってもあまり怖いという印象はありませんでした。
「おら、今から現場行ってヘマした分取り返せや。終わるまで家入れへんぞ」
どちらかと言えば、池田の方がよっぽどやくざのようでした。私に対しての態度と和に対する態度は明らかに違っていたからです。
一度、あまりの横暴さに私は池田に口を挟みましたが、池田は聞く耳を持ちませんでした。
「あかんあかん、こいつ甘やかしたらあかんねん。儂はの、こいつが独り立ちできるよう厳しくしとるんや。こいつも大人や、どんなに厳しくしてでも独り立ちさせるっちゅうんが里親の使命でもあり、義務や」
帰ってくる答えはいつもこの一点張りでした。そう言われれば、私もそれ以上は言い返せず、和は徐々に肉体も精神も極限まで池田に追い詰められていきます。
そして、『池田昭和建設』の日常は着実に狂い始めていくのです。
現場は和の役割でしたから、私は主に事務作業を任されました。しかし、それは私の予想以上に過酷な業務内容でした。
まず朝から晩まで溜まりに溜まった書類の整理、取引先への連絡、見積もり。昼食を取る暇もほとんどなく、それらを全て一人でこなすのです。
「おう恵子、見積もりまだ出てへんのか」
「すいません、もう少しで……なかなか手が回らなくて」
「ええのええの、少しずつ仕事覚えてくれればええんやから。ほなちょっと外出てくるわ」
肝心の池田は雑誌を読み漁り、暇になれば酒屋か競馬に出かけていました。表向きは客先回りと言っていましたが、毎日そんな事の繰り返しでは私でもいい加減気付きます。
こんな状態で今までどうやって経営を維持してきたのか疑問でしたが、私を雇う前は日雇いで事務を雇っていたというのです。
今までも池田がこんな体たらくでありながら、常に事務を日雇いできるだけの利益を出し続けられていたのには、当時の私には到底予想もできないような『からくり』があったのですが、その忌まわしき『からくり』はもう少し後になって発覚することとなります。
私が仕事終えた頃……つまり深夜になれば、和が現場から帰宅すると同時に池田の怒鳴り声が響き渡るのが最早日課となっていました。
「和! お前また現場でヘマしたらしいの、お?」
和を持っていたヘルメットで思い切り殴りつける池田。とても和を同情で引き取った人間が出来る事ではありません。
しかし、それは愛情の裏返しなのだろうと私もあまり口出しする気にはなれませんでした。あくまで池田には和への愛情があるのだと、当時の愚かな私は信じ込んでいたのです。
「ボケがッ、お前のミスで儂とこの会社の評判が下がるやろが! おめぇ儂の城を潰したいんか? わざわざ鷲尾さんが仕事振ってくれたんやぞ!」
「ゥ・・・・・・」
和を必要以上に叱り付ける。これは単なる憂さ晴らしや嫌がらせではなく、池田にとって意味のある行動だったということに当時の私が気付く事はありませんでした。
ちなみに『鷲尾さん』と言うのは、池田と親交のあったやくざの名でした。仕事の斡旋や依頼、建設業界に顔がきくとのことで付き合いがあるのだと池田には教えられたので、やくざと言ってもあまり怖いという印象はありませんでした。
「おら、今から現場行ってヘマした分取り返せや。終わるまで家入れへんぞ」
どちらかと言えば、池田の方がよっぽどやくざのようでした。私に対しての態度と和に対する態度は明らかに違っていたからです。
一度、あまりの横暴さに私は池田に口を挟みましたが、池田は聞く耳を持ちませんでした。
「あかんあかん、こいつ甘やかしたらあかんねん。儂はの、こいつが独り立ちできるよう厳しくしとるんや。こいつも大人や、どんなに厳しくしてでも独り立ちさせるっちゅうんが里親の使命でもあり、義務や」
帰ってくる答えはいつもこの一点張りでした。そう言われれば、私もそれ以上は言い返せず、和は徐々に肉体も精神も極限まで池田に追い詰められていきます。
そして、『池田昭和建設』の日常は着実に狂い始めていくのです。
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