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第10話 末路
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そして翌日、『役目』を終えた和がどのような末路を辿るのか、私はこの時、初めて惨劇を目の当たりにします。
金を借り、鷲尾の送迎で『池田昭和建設』まで戻ってきたのは昼頃でした。普段なら和は現場に出ていて、池田はまだ寝ているか、それとも酒屋か競馬に行っているはずです。
玄関にはまだ靴が残っていたので、まだ寝ているのだとばかり思っていましたが、この日は違いました。
浴室の方から、何やら聞き覚えの無い異様な音が聞こえてきたのです。例えるなら『ぐちゃ、ぐちゃ』という濡れた『何か』をいじくり、摩擦するような不快な音。
それと同時に、嗅いだことのないような異臭……それもとにかく不快なものでした。
嫌な予感がしました。今までの経験にないような不快感を全身が感じていました。ですが、私は当時、ほんの少しだけ興味に近い感情を抱いていました。
怖いもの見たさと言いますか、それが、私の足を浴槽へと向かわせていたのです。
そして、私は浴室の戸を開き、その異音と異臭の原因を知る事となります。
恐らくこの時の光景は一生、忘れることはできないでしょう。何故なら私は、この時に初めて目の当たりにしたのですから。
人間が、人間を惨たらしく『解体』する様を。
目の前の残酷な光景に、私は声を失いました。理解と感情が追いついていなかったのです。
そして、目の前の光景について、その場に座り込んでいる池田に問います。
「なん……ですか、これ」
「なにって、薄情な言い方やなぁ。つい昨日まで同じ屋根の下で暮らしとった家族やろが」
「……和さん、なの? これが」
私は理解することができませんでした。目の前にある、浴室の床に無造作にバラバラと散らばっている濡れた血肉と骨の塊が、昨日まで共同生活をしていた和という人間の末路だということに。
そして、その血肉に付随する白い骨を見て、徐々に理解が進みました。
ああ、これは元々人間の身体だったものなのだと、ようやく理解し始めました。
「おい、金が借りられたんならさっさと『これ』解体するから手伝えや。おう、お前はまず簡単な所からや。そこのノコギリでこの手の肉と骨を切り分けるんや」
「は、は……?」
混乱する私に、池田は強引にノコギリを渡してきました。まるで料理の手伝いを頼むかのように、ごく自然な流れでした。
「臓器は後で鷲尾さんに売っちまうからな、儂が綺麗に取り出す。とりあえずお前は肉と骨を分けろ、ええな?」
私はノコギリを手渡されて、ただ茫然と立ち尽くしていました。恐怖や畏怖ではなく、ただ理解が及びませんでした。
殺人を、こうも簡単に、自然に躊躇いも無く行える人間……いいえ、怪物が実在しているという目の前の光景にです。
手足の痙攣が止まらず、吐き気が一気にこみ上げてきました。
「なんや、今更逃げられんで? 事件が発覚すれば儂と一緒にお前も豚箱や。儂が共犯やてお前の名前出せば、証拠が揃わんでもお前もただじゃ済まんと思うんやがな?」
池田はその血だらけの手で、どこから出したのか私の履歴書を持ち、ちらつかせました。
「儂を裏切るような真似したら……お前の青森の親御さん、こんな風に風呂場で解体することになるかも知れへんな。ええか? 儂は絶対に裏切りは許さへん。儂の『完璧』を脅かす様な真似は、絶対に許さへん」
この時、私は痛感しました。池田が私とその家族の情報を握る理由は、借金の名義のためなどではなかったのです。
逃げ道を絶ち、私を殺人の共犯に引き入れるためだったのです。
「ええか、お前に選択肢をやる。ここで和の死体をバラして儂の協力者になるか、両親と一緒に臓器だけ抜き取られてバラされて、青森の海に沈むかどっちかや!」
血を浴び、そう怒鳴る池田の姿はまさしく鬼畜、怪物と表現できるものでした。
和の死体を解体しながらも、池田はよく話しました。関西人の気質なのだろうか? だとか、そんなくだらない事を考えて、私は必死に気を紛らわせながら肉に刃を立てていました。
「ええか、殺人っちゅうのは死体が見つかんなきゃ殺人にならへんのや。そのためには死体をどうバラして、見つからんようにするかや。けど、不思議やと思わんか? 世の中には人殺しても死体をバラしも隠しもせず、そのまま捕まる阿保ばっかりやろ? 死体を粉々にバラしてうまく処理すりゃええのに、なんでそれをせえへん阿保ばかりなんやって」
肉の紅色と立ち込める死臭に吐き気を覚えながら、そんな話を延々と聞かされました。本当に自分の頭がおかしくなるのではないかと心の底から思ったのは、人生でもこの時間だけです。
「それはの、覚悟が足らんのや。人は殺せても、人をバラバラに切り刻むことに対して覚悟もつけられん腰抜けばっかなんや。くだらん同情や迷いが最終的にそいつらを破滅させるとも知らずにな。だが、儂は違うで。人殺しも、解体も何も怖くあらへん。それが保身のためっちゅうなら、尚更や。迷う事なんかあらへん、何体でも、誰でも切り刻んで、バラバラにしたる」
池田の話が終わる事には、和の死体はもはや人間の原型を留めておらず、ただの汚らしい『何か』と化していました。
例えるなら、魚や動物の腸のような……そんな汚らしい『何か』です。
「ええか、よう覚えとけ。善行も悪行も、極めればそれは大きな武器、強みや。儂は人殺しを極めた。一切の妥協もせず、どんな残酷な真似だってできる。そんだけの覚悟でやって来たから、今まで何十人もここで殺して、解体しても未だに誰も儂を捕まえられん。覚悟を決めろや。儂と一緒に豚箱に入りたくないんやったらな」
池田が怪物たる所以は、他に追従を許さないほどの『残虐性』でした。殺人も、その証拠隠滅のための解体も、一切の躊躇もなくこなすその残虐性こそが、池田を守る鎧でもあり、武器だったのです。
悪を極め、鬼畜を極めた池田と言う男が何故ここまで生き残ってこれたのか。その理由を私はこの浴室での初めての解体で痛感したのです。
解体しただけでは池田の『完璧』には未だ程遠いのです。そこからもまた、証拠隠滅のための作業は続きました。
「肉と骨はしっかり分けろ。ほんで骨は外のドラム缶に入れて灰になるまで燃やすんや。そんで灰になった骨はセメントに混ぜて名簿にある全部の業者に売りつけるんや。ほんで、肉は臭いの一番の元や。せやからのボットン便所に全部流し込んで誤魔化すんや。臭いもんに臭いもん混ぜればまず気付かれへん。木を隠すなら森みたいなことやな、はは!」
切り刻んだ和の血肉を、ボットン便所に流し込みながら池田は軽口を叩いていました。私はただ、便所から立ち込める小便と大便と死臭の混ざった臭いに顔をしかめる事しかできませんでした。
「ほんで糞と小便がある程度溜まったら吸上車が糞と小便と一緒に和の肉も回収してくれるっちゅーわけや」
殺した人間の肉を便所の汚物と混ぜて処理するなんて、普通の神経の持ち主ならまずできません。しかし、この池田という男はやってのけてしまうのです。それが、池田という怪物なのです。
「和の身寄りはほとんど九州方面やからな、あいつ一人消えても誰も気にもせん。役所の連中もしばらく気付かへんやろし、金貸しのチンピラ共もわざわざ和を探し回るより先にあいつの実家取り立てる。しばらくは心配いらへん。まぁ、和が役目終えたっちゅーことは……次はお前の番や、恵子」
和の『役目』というのは、公的扶助や借金のための名義だけではなく、こうして人の形を失い、醜い肉となって便所の汚物と共に処理されることまでを指していたのです。
これが、『池田昭和建設』という『城』に引き入れられた人間の末路なのです。
「お前は和と違って頭も回るし、何より女や。いざとなればどこかの娼館で金稼いでもらうこともできるしな、和みたいな『使い方』はもったいないやろ? だから選べ。儂と協力して、一蓮托生の運命を辿るっちゅう選択を。お前も、儂が完璧な悪党に仕立てたる。空っぽのお前に、『完璧な悪』を伝授したる。悪を極めることが、お前の武器になる」
そして、私もこうして池田の正式な『相棒』として引き入れられ、私と池田の二人の『池田昭和建設』がこの日、始動しました。
金を借り、鷲尾の送迎で『池田昭和建設』まで戻ってきたのは昼頃でした。普段なら和は現場に出ていて、池田はまだ寝ているか、それとも酒屋か競馬に行っているはずです。
玄関にはまだ靴が残っていたので、まだ寝ているのだとばかり思っていましたが、この日は違いました。
浴室の方から、何やら聞き覚えの無い異様な音が聞こえてきたのです。例えるなら『ぐちゃ、ぐちゃ』という濡れた『何か』をいじくり、摩擦するような不快な音。
それと同時に、嗅いだことのないような異臭……それもとにかく不快なものでした。
嫌な予感がしました。今までの経験にないような不快感を全身が感じていました。ですが、私は当時、ほんの少しだけ興味に近い感情を抱いていました。
怖いもの見たさと言いますか、それが、私の足を浴槽へと向かわせていたのです。
そして、私は浴室の戸を開き、その異音と異臭の原因を知る事となります。
恐らくこの時の光景は一生、忘れることはできないでしょう。何故なら私は、この時に初めて目の当たりにしたのですから。
人間が、人間を惨たらしく『解体』する様を。
目の前の残酷な光景に、私は声を失いました。理解と感情が追いついていなかったのです。
そして、目の前の光景について、その場に座り込んでいる池田に問います。
「なん……ですか、これ」
「なにって、薄情な言い方やなぁ。つい昨日まで同じ屋根の下で暮らしとった家族やろが」
「……和さん、なの? これが」
私は理解することができませんでした。目の前にある、浴室の床に無造作にバラバラと散らばっている濡れた血肉と骨の塊が、昨日まで共同生活をしていた和という人間の末路だということに。
そして、その血肉に付随する白い骨を見て、徐々に理解が進みました。
ああ、これは元々人間の身体だったものなのだと、ようやく理解し始めました。
「おい、金が借りられたんならさっさと『これ』解体するから手伝えや。おう、お前はまず簡単な所からや。そこのノコギリでこの手の肉と骨を切り分けるんや」
「は、は……?」
混乱する私に、池田は強引にノコギリを渡してきました。まるで料理の手伝いを頼むかのように、ごく自然な流れでした。
「臓器は後で鷲尾さんに売っちまうからな、儂が綺麗に取り出す。とりあえずお前は肉と骨を分けろ、ええな?」
私はノコギリを手渡されて、ただ茫然と立ち尽くしていました。恐怖や畏怖ではなく、ただ理解が及びませんでした。
殺人を、こうも簡単に、自然に躊躇いも無く行える人間……いいえ、怪物が実在しているという目の前の光景にです。
手足の痙攣が止まらず、吐き気が一気にこみ上げてきました。
「なんや、今更逃げられんで? 事件が発覚すれば儂と一緒にお前も豚箱や。儂が共犯やてお前の名前出せば、証拠が揃わんでもお前もただじゃ済まんと思うんやがな?」
池田はその血だらけの手で、どこから出したのか私の履歴書を持ち、ちらつかせました。
「儂を裏切るような真似したら……お前の青森の親御さん、こんな風に風呂場で解体することになるかも知れへんな。ええか? 儂は絶対に裏切りは許さへん。儂の『完璧』を脅かす様な真似は、絶対に許さへん」
この時、私は痛感しました。池田が私とその家族の情報を握る理由は、借金の名義のためなどではなかったのです。
逃げ道を絶ち、私を殺人の共犯に引き入れるためだったのです。
「ええか、お前に選択肢をやる。ここで和の死体をバラして儂の協力者になるか、両親と一緒に臓器だけ抜き取られてバラされて、青森の海に沈むかどっちかや!」
血を浴び、そう怒鳴る池田の姿はまさしく鬼畜、怪物と表現できるものでした。
和の死体を解体しながらも、池田はよく話しました。関西人の気質なのだろうか? だとか、そんなくだらない事を考えて、私は必死に気を紛らわせながら肉に刃を立てていました。
「ええか、殺人っちゅうのは死体が見つかんなきゃ殺人にならへんのや。そのためには死体をどうバラして、見つからんようにするかや。けど、不思議やと思わんか? 世の中には人殺しても死体をバラしも隠しもせず、そのまま捕まる阿保ばっかりやろ? 死体を粉々にバラしてうまく処理すりゃええのに、なんでそれをせえへん阿保ばかりなんやって」
肉の紅色と立ち込める死臭に吐き気を覚えながら、そんな話を延々と聞かされました。本当に自分の頭がおかしくなるのではないかと心の底から思ったのは、人生でもこの時間だけです。
「それはの、覚悟が足らんのや。人は殺せても、人をバラバラに切り刻むことに対して覚悟もつけられん腰抜けばっかなんや。くだらん同情や迷いが最終的にそいつらを破滅させるとも知らずにな。だが、儂は違うで。人殺しも、解体も何も怖くあらへん。それが保身のためっちゅうなら、尚更や。迷う事なんかあらへん、何体でも、誰でも切り刻んで、バラバラにしたる」
池田の話が終わる事には、和の死体はもはや人間の原型を留めておらず、ただの汚らしい『何か』と化していました。
例えるなら、魚や動物の腸のような……そんな汚らしい『何か』です。
「ええか、よう覚えとけ。善行も悪行も、極めればそれは大きな武器、強みや。儂は人殺しを極めた。一切の妥協もせず、どんな残酷な真似だってできる。そんだけの覚悟でやって来たから、今まで何十人もここで殺して、解体しても未だに誰も儂を捕まえられん。覚悟を決めろや。儂と一緒に豚箱に入りたくないんやったらな」
池田が怪物たる所以は、他に追従を許さないほどの『残虐性』でした。殺人も、その証拠隠滅のための解体も、一切の躊躇もなくこなすその残虐性こそが、池田を守る鎧でもあり、武器だったのです。
悪を極め、鬼畜を極めた池田と言う男が何故ここまで生き残ってこれたのか。その理由を私はこの浴室での初めての解体で痛感したのです。
解体しただけでは池田の『完璧』には未だ程遠いのです。そこからもまた、証拠隠滅のための作業は続きました。
「肉と骨はしっかり分けろ。ほんで骨は外のドラム缶に入れて灰になるまで燃やすんや。そんで灰になった骨はセメントに混ぜて名簿にある全部の業者に売りつけるんや。ほんで、肉は臭いの一番の元や。せやからのボットン便所に全部流し込んで誤魔化すんや。臭いもんに臭いもん混ぜればまず気付かれへん。木を隠すなら森みたいなことやな、はは!」
切り刻んだ和の血肉を、ボットン便所に流し込みながら池田は軽口を叩いていました。私はただ、便所から立ち込める小便と大便と死臭の混ざった臭いに顔をしかめる事しかできませんでした。
「ほんで糞と小便がある程度溜まったら吸上車が糞と小便と一緒に和の肉も回収してくれるっちゅーわけや」
殺した人間の肉を便所の汚物と混ぜて処理するなんて、普通の神経の持ち主ならまずできません。しかし、この池田という男はやってのけてしまうのです。それが、池田という怪物なのです。
「和の身寄りはほとんど九州方面やからな、あいつ一人消えても誰も気にもせん。役所の連中もしばらく気付かへんやろし、金貸しのチンピラ共もわざわざ和を探し回るより先にあいつの実家取り立てる。しばらくは心配いらへん。まぁ、和が役目終えたっちゅーことは……次はお前の番や、恵子」
和の『役目』というのは、公的扶助や借金のための名義だけではなく、こうして人の形を失い、醜い肉となって便所の汚物と共に処理されることまでを指していたのです。
これが、『池田昭和建設』という『城』に引き入れられた人間の末路なのです。
「お前は和と違って頭も回るし、何より女や。いざとなればどこかの娼館で金稼いでもらうこともできるしな、和みたいな『使い方』はもったいないやろ? だから選べ。儂と協力して、一蓮托生の運命を辿るっちゅう選択を。お前も、儂が完璧な悪党に仕立てたる。空っぽのお前に、『完璧な悪』を伝授したる。悪を極めることが、お前の武器になる」
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