15 / 20
第15話 覚悟
しおりを挟む
「咲は……咲は、結局のところ半端者だったのかな。半端者には……幸せになる権利も無いの?」
惨めな咲の死体を眺めながら、私は池田に問いました。
咲は弱かったから死んだ。それは分かっていても、他の人間と同じように割り切る事が出来ませんでした。心などとっくに殺したはずなのに。
「ふん、確かに儂は何事も極めろと言った。けどな、世の中はお前や儂の様に強い器を持った人間ばかりやない。物事を極めるにはそれに見合った器が必要や。やないと、器の中身が満ちる前に割れてまう。あの娘みたいにな」
咲にあの時、男の嘔吐物を全て飲み込むだけの覚悟と執念があれば、死なずに済んだのです。それが出来ない半端者だったから、咲は死んだのだと、私は思い知りました。
私は……こうはなりたくない。こんな半端な覚悟で、惨めな死に方なんて御免だと、強く感じました。
「……私はこんな死に方絶対に御免。それに、私はそれに耐えるだけの器を持っている。そうでしょ?」
「あまり図に乗るもんやない。いくら器が丈夫やろが気抜いたらすぐにでもヒビが入り、やがて割れる。ええか、悪を極めるんやったら常に悪でおる覚悟を持て。感情に支配されるようなったら、お前の器はすぐにでも割れる」
珍しく池田の言葉に重みを感じました。感情など、足元を掬われる材料にしかならない。だから、殺しておくべきなのです。
でなければ、咲のような死に方しかできないのだと、私は咲に教えてもらったのです。
そして、咲を解体する当日になりました。
別段、緊張やら特別な感情はありませんでしたが、少し……胸が痛むような、そんな感覚があったのも事実です。
「なにィ?」
「この子は私一人で解体させて、と言ったの池田さん」
解体の準備を進める池田に、私はそう言いました。
「なんや急に。まさか、情が湧いたっちゅうんか。けど、それで効率悪くなったら元も子もないやろ。お前、この娘バラッバラに出来るんかい」
「情を挟んで半端な事はしないわ。肉片たりとも残さない。だから……最後くらい、綺麗に私の手で弔ってやりたいだけの事。化けて出て来られても……困るし」
それは、咲の人生の終止符を私が打つことで、咲を忘れるためでもありました。そして、それと同時にもう一度……心を殺し、感情を殺し、悪に徹するという覚悟の表れでもあったのです。
「ふん、まぁ……好きにせい。けど、それは儂の『お楽しみ』が済んでからやがな」
池田は気味の悪い笑みを浮かべ、衣類を脱ぎ始めました。
『お楽しみ』とは、『死姦』のことです。これも池田が戦時中に死体を犯した経験から芽生えた趣向で、女をバラす前には必ずと言っていいほど行われていた恒例行事でした。
「……好きにして」
「何だ、止めへんのか。お前が妹みたいに可愛がっとた娘の死体、これから犯すいうとるんやぞ?」
「半端者の末路に口出しはしない……終わったら、呼んで」
けれど、咲だからと言ってそれを止めようとも思いませんでした。
ここでそれを止めて、半端者の末路に口を出してしまえば……私の『悪』への覚悟は鈍ったでしょう。
その覚悟が揺らがぬように、私は咲の骸が池田に犯される様を、瞬きもせず目に焼き付けていました。
惨めな咲の死体を眺めながら、私は池田に問いました。
咲は弱かったから死んだ。それは分かっていても、他の人間と同じように割り切る事が出来ませんでした。心などとっくに殺したはずなのに。
「ふん、確かに儂は何事も極めろと言った。けどな、世の中はお前や儂の様に強い器を持った人間ばかりやない。物事を極めるにはそれに見合った器が必要や。やないと、器の中身が満ちる前に割れてまう。あの娘みたいにな」
咲にあの時、男の嘔吐物を全て飲み込むだけの覚悟と執念があれば、死なずに済んだのです。それが出来ない半端者だったから、咲は死んだのだと、私は思い知りました。
私は……こうはなりたくない。こんな半端な覚悟で、惨めな死に方なんて御免だと、強く感じました。
「……私はこんな死に方絶対に御免。それに、私はそれに耐えるだけの器を持っている。そうでしょ?」
「あまり図に乗るもんやない。いくら器が丈夫やろが気抜いたらすぐにでもヒビが入り、やがて割れる。ええか、悪を極めるんやったら常に悪でおる覚悟を持て。感情に支配されるようなったら、お前の器はすぐにでも割れる」
珍しく池田の言葉に重みを感じました。感情など、足元を掬われる材料にしかならない。だから、殺しておくべきなのです。
でなければ、咲のような死に方しかできないのだと、私は咲に教えてもらったのです。
そして、咲を解体する当日になりました。
別段、緊張やら特別な感情はありませんでしたが、少し……胸が痛むような、そんな感覚があったのも事実です。
「なにィ?」
「この子は私一人で解体させて、と言ったの池田さん」
解体の準備を進める池田に、私はそう言いました。
「なんや急に。まさか、情が湧いたっちゅうんか。けど、それで効率悪くなったら元も子もないやろ。お前、この娘バラッバラに出来るんかい」
「情を挟んで半端な事はしないわ。肉片たりとも残さない。だから……最後くらい、綺麗に私の手で弔ってやりたいだけの事。化けて出て来られても……困るし」
それは、咲の人生の終止符を私が打つことで、咲を忘れるためでもありました。そして、それと同時にもう一度……心を殺し、感情を殺し、悪に徹するという覚悟の表れでもあったのです。
「ふん、まぁ……好きにせい。けど、それは儂の『お楽しみ』が済んでからやがな」
池田は気味の悪い笑みを浮かべ、衣類を脱ぎ始めました。
『お楽しみ』とは、『死姦』のことです。これも池田が戦時中に死体を犯した経験から芽生えた趣向で、女をバラす前には必ずと言っていいほど行われていた恒例行事でした。
「……好きにして」
「何だ、止めへんのか。お前が妹みたいに可愛がっとた娘の死体、これから犯すいうとるんやぞ?」
「半端者の末路に口出しはしない……終わったら、呼んで」
けれど、咲だからと言ってそれを止めようとも思いませんでした。
ここでそれを止めて、半端者の末路に口を出してしまえば……私の『悪』への覚悟は鈍ったでしょう。
その覚悟が揺らがぬように、私は咲の骸が池田に犯される様を、瞬きもせず目に焼き付けていました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる