鬼畜の城-昭和残酷惨劇録-

柘榴

文字の大きさ
18 / 20

第18話 決別

しおりを挟む
 そして、あれは日が昇る前の朝方。池田がまだいびきをかいて呑気に眠っているのを見計らって、私は行動を起こしました。 
 私の心を蝕む、脅威と決別し、再び心を殺すためです。

 私は纏っていた着物を脱ぎ捨て、下着姿で寝ている池田の布団へ潜りこみました。
 そして、私は池田の下半身を撫で回しながら口づけをします。
「……ん、なんや恵子。まだ明け方やぞ……もう少し寝かせろや」
「……寂しかったの」
「はぁ? 何言うてんねんお前……寝ぼけとんのかお前」
 そう言いながらも、池田は私の胸を強引に掴んできました。そして、唇も同時に塞いできます。
 吐き気を覚えながらも、ぐっと堪えました。私は伺っていたのです、池田と言う、私の心を蝕む幻影を振り払うための機会を。
「悪事を沢山こなして、お金を得て、私の存在価値を維持しないと……私も池田さんに半端者として捨てられて、咲みたいな死に方しかできないんじゃないかと思って……だから、後先考えずに鷲尾さんの仕事片っ端から受けたりしたの……不安で、不安で」
 私は声を枯らしながら迫真の演技で池田に訴えかけました。
 池田は変わらず、私の身体を無造作に嘗め回していました。
「恵子……いきなりどないしたんや。お前は相棒として十分やっとる、立派な悪党や。これからも、世の中の屑共殺して金に換えていこうや、な?」
 池田は私の身体を弄びながら言います。この時、池田は完全に私に対しての警戒を怠っていました。
 常に他人を疑い、裏切りに敏感になれというのが『完璧な悪』を目指す池田の教えでした。けれど、当時の池田は完全に私を疑う気持ちも、裏切りを警戒する素振りも持ち合わせていなかったのです。
「私にとって、池田さんはもう相棒以上……家族だよ。人殺しと死体バラしでしか繋がれないけど……それでも、家族なの」
 池田の胸元に顔を埋め、小さく呟きます。
「恵子……お前。儂やって、お前はもう……ただの仕事の、利用し合うだけの相棒やない……お前は、恵子……もう、家族や」
 それに対し、池田は私をやさしく抱きしめました。それは性的な意味合いと言うより、父が娘を抱きしめるような、そんな温かい抱きしめ方でした。

「そう……だから、だから……駄目なの。あなたがいたら、駄目なの」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/22:『かれんだー』の章を追加。2025/12/29の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/21:『おつきさまがみている』の章を追加。2025/12/28の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...