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第4話 血肉の花弁【里香】Ⅱ
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10分ほど歩き、自宅のマンションへと辿り付く。
俺が部屋の鍵を開けるとともに里香は遠慮も無く玄関に上がり込む。
「お邪魔しまーす!」
「散らかってるけど文句言うなよ。それと、部屋の物はイジるな」
里香は靴を脱ぎ捨て、ふらふらと部屋の奥へ進む。
もはや泥酔だ。恐らく自分が今どこにいるのかすら分かっていない。
「なんかこの部屋……臭くない? 換気してんの?」
「ああ、昨日ちょっと……解体するものがあってな」
俺の返答に里香は大した反応も示さなかった。
きっと魚か何かを料理で解体したくらいにしか思っていないだろう。
実際は、俺は昨日……真衣をこの部屋で、この手で解体したというのに。
「ねー水とないの? 気利かないなぁ!」
昨日の記憶に浸っている俺を、真衣の下品な声が呼びつける。
すると、真衣は部屋の一番奥にある冷蔵庫に手を掛けていた。
「触るなッ!」
俺は喉が焼けるくらいの勢いで怒鳴りつけたが、既に冷蔵庫の扉は半分ほど開かれていた。
そこは聖域だ。穢れのない、崇高な「真衣」が眠る聖域なのだ。お前などが……お前などが触れて良い場所ではない。
しかし、俺の怒鳴り声を無視して泥酔した里香は勢いよく冷蔵庫の扉は開ける。
そして、その冷蔵庫の中の「聖域」を目にし、茫然と立ち尽くす。
「……は、なに……これ。なんなの」
里香は目の前の現実が受け入れられず、何度も瞬きを繰り返していた。
その衝撃は、既に里香の酔いすら吹き飛ばしていた。
「……真衣、さん? コレ、真衣さん?」
里香がコレと指差す先には……真衣の首が置かれている。
目を静かに閉じた真衣の首が鎮座して眠っている……まさに穢れなき聖域。
「聖域を土足で踏み荒らし、挙句に真衣をコレ扱いか……里香、お前はつくづくアイドル失格の屑だよ」
俺は静かだが、きっと恐ろしい声を出していたんだと思う。
「……っひ!」
俺の声を聞いた里香は真っ先に玄関へと走り出していた。
しかし、酔いか恐怖のせいか足が絡まり、すぐに転倒する。
「たすけっ……! いや……」
里香の細い脚はがくがくと震えていた。
そして、俺はキッチンに備え付けてある包丁を手に持ちながら里香へゆっくりと近付く。
「全く、最後の最後まで手間のかかる奴だよお前は……」
「いやっ……帰して……誰にも、誰にも言わないから」
里香は目に涙を溜め、消え入りそうな声で懇願する。
普段、あんな気の強い里香が恐怖に顔を歪め、震えている。
「心配するな、お前もちゃんと俺がプロデュースしてやる。俺にはその責任があるからな」
震える里香を俺は優しく抱きしめた。
そうだ、俺はこいつのプロデューサーだ。どんなロクでなしの、手間のかかるアイドルだったとしても、俺のアイドルだ。
俺にはお前をプロデュースする責任がある。
「お前もすぐに花になれる。だから、殺されてくれないか」
「……がァっ!」
俺は里香の腹部に包丁を突き刺した。鮮血が飛び散り、里香が痛みに喘ぐ。
「おいおい、あまり暴れないでくれ。お前のその自慢の手足は傷付けたくないんだ」
そう、里香の手足は重要な「パーツ」であり「花弁」だ。傷を付けるような事があってはならない。
人それぞれには重要なパーツがある。それが里香にとっての長く、美しく、しなやかな「手足」なのだ。
「お前はアイドル失格の屑だ。口も素行も悪ければ、アイドルとしての責任感も無い。本来ならお前など俺のプロデュースされる価値もない。だがな、お前はパーツ、花弁としては価値がある事を誇っていい」
里香は確かにアイドルとしては屑だ。
だが、お前の手足だけは重要かつ不可欠な「血肉の花弁」となり、やがては美しい花の一部となる。
だからこそ、俺はお前を「プロデュース」する。
「いた、い……助けて、いままで……ごめんなさ、い。本当に……ご、め」
何かを言いかける里香の口に、容赦なく包丁を柄の部分まで押し込む。
「がっ……ああああああああああ!」
里香は手足さえ残れば良い。それ以外……つまり顔も必要ない。
俺は包丁を柄の部分まで飲み込んだ里香が息絶えたのを確認し、包丁を引き抜く。
「光栄に思え、お前のその手足は花弁だ。血肉の花弁だ。美しい花を咲かせるための花弁の1枚として、お前は選ばれたんだよ」
ズタズタになった口内から噴水の様に血を漏らす里香には、既に俺の言葉は届いていなかった。
俺が部屋の鍵を開けるとともに里香は遠慮も無く玄関に上がり込む。
「お邪魔しまーす!」
「散らかってるけど文句言うなよ。それと、部屋の物はイジるな」
里香は靴を脱ぎ捨て、ふらふらと部屋の奥へ進む。
もはや泥酔だ。恐らく自分が今どこにいるのかすら分かっていない。
「なんかこの部屋……臭くない? 換気してんの?」
「ああ、昨日ちょっと……解体するものがあってな」
俺の返答に里香は大した反応も示さなかった。
きっと魚か何かを料理で解体したくらいにしか思っていないだろう。
実際は、俺は昨日……真衣をこの部屋で、この手で解体したというのに。
「ねー水とないの? 気利かないなぁ!」
昨日の記憶に浸っている俺を、真衣の下品な声が呼びつける。
すると、真衣は部屋の一番奥にある冷蔵庫に手を掛けていた。
「触るなッ!」
俺は喉が焼けるくらいの勢いで怒鳴りつけたが、既に冷蔵庫の扉は半分ほど開かれていた。
そこは聖域だ。穢れのない、崇高な「真衣」が眠る聖域なのだ。お前などが……お前などが触れて良い場所ではない。
しかし、俺の怒鳴り声を無視して泥酔した里香は勢いよく冷蔵庫の扉は開ける。
そして、その冷蔵庫の中の「聖域」を目にし、茫然と立ち尽くす。
「……は、なに……これ。なんなの」
里香は目の前の現実が受け入れられず、何度も瞬きを繰り返していた。
その衝撃は、既に里香の酔いすら吹き飛ばしていた。
「……真衣、さん? コレ、真衣さん?」
里香がコレと指差す先には……真衣の首が置かれている。
目を静かに閉じた真衣の首が鎮座して眠っている……まさに穢れなき聖域。
「聖域を土足で踏み荒らし、挙句に真衣をコレ扱いか……里香、お前はつくづくアイドル失格の屑だよ」
俺は静かだが、きっと恐ろしい声を出していたんだと思う。
「……っひ!」
俺の声を聞いた里香は真っ先に玄関へと走り出していた。
しかし、酔いか恐怖のせいか足が絡まり、すぐに転倒する。
「たすけっ……! いや……」
里香の細い脚はがくがくと震えていた。
そして、俺はキッチンに備え付けてある包丁を手に持ちながら里香へゆっくりと近付く。
「全く、最後の最後まで手間のかかる奴だよお前は……」
「いやっ……帰して……誰にも、誰にも言わないから」
里香は目に涙を溜め、消え入りそうな声で懇願する。
普段、あんな気の強い里香が恐怖に顔を歪め、震えている。
「心配するな、お前もちゃんと俺がプロデュースしてやる。俺にはその責任があるからな」
震える里香を俺は優しく抱きしめた。
そうだ、俺はこいつのプロデューサーだ。どんなロクでなしの、手間のかかるアイドルだったとしても、俺のアイドルだ。
俺にはお前をプロデュースする責任がある。
「お前もすぐに花になれる。だから、殺されてくれないか」
「……がァっ!」
俺は里香の腹部に包丁を突き刺した。鮮血が飛び散り、里香が痛みに喘ぐ。
「おいおい、あまり暴れないでくれ。お前のその自慢の手足は傷付けたくないんだ」
そう、里香の手足は重要な「パーツ」であり「花弁」だ。傷を付けるような事があってはならない。
人それぞれには重要なパーツがある。それが里香にとっての長く、美しく、しなやかな「手足」なのだ。
「お前はアイドル失格の屑だ。口も素行も悪ければ、アイドルとしての責任感も無い。本来ならお前など俺のプロデュースされる価値もない。だがな、お前はパーツ、花弁としては価値がある事を誇っていい」
里香は確かにアイドルとしては屑だ。
だが、お前の手足だけは重要かつ不可欠な「血肉の花弁」となり、やがては美しい花の一部となる。
だからこそ、俺はお前を「プロデュース」する。
「いた、い……助けて、いままで……ごめんなさ、い。本当に……ご、め」
何かを言いかける里香の口に、容赦なく包丁を柄の部分まで押し込む。
「がっ……ああああああああああ!」
里香は手足さえ残れば良い。それ以外……つまり顔も必要ない。
俺は包丁を柄の部分まで飲み込んだ里香が息絶えたのを確認し、包丁を引き抜く。
「光栄に思え、お前のその手足は花弁だ。血肉の花弁だ。美しい花を咲かせるための花弁の1枚として、お前は選ばれたんだよ」
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