血肉の花弁

柘榴

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最終話 最後の花

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「私はプロデューサーとして、理想のアイドルを育て上げたかった。だが、現実にそんな私の理想を満たすアイドルは存在しなかった。だから、自らの手で造ったのです、理想のアイドルを」
 俺は取調室で強面の掲示と対峙していた。
 その威圧感に臆することなく、異常な発言と身勝手な動機を語る。
「理想のアイドルだと……あんな凄惨なモノが」
 刑事が俺を睨み付けながら、低く吠える。
「あなた方にはそう見えますか。けれど、私には美しく、尊いモノに見えます。真衣に足りなかった魅力を与え、完全無欠の存在として生まれ変わらせた。あの芸術品を造形した私に感謝してもらいたいくらいですがね」
「お前……自分のエゴで3人も殺しておいて」
 刑事は怒りに震えながら俺の胸倉を掴む。
 きっと世間でもこの刑事の様に俺に怒り、殺意すら抱いている人間が大勢生まれたはず。
 そして、それと同時に奴らは真衣という存在を認知した。
 惨殺され、弄ばれた哀れな真衣の姿が奴らの心には確かに浮かんでいるはずだ。
「エゴ? 私は責任を果たしたまでだ。それは彼女たちも同じですよ。アイドルには輝き続けるという責任がある。彼女たちは常に、いつまでも、美しくなければならない」
 英雄が死して神格化されるように、真衣は特別な、高尚な存在となった。
 英雄だなんて大層な話ではないにしろ、今この日本で真衣を知らない人間はほとんどいないだろう。
「……話にならん。本物のイカれ野郎だ」
 刑事がそう吐き捨て、俺を突き飛ばした。
「自分でも、そう思いますよ」
 俺は静かに呟いた。
 真衣のために、真衣を殺した。
 愛する人のために、愛する人を殺した。
 俺は正真正銘、イカレている。
 
 けれど、それ以上に幸せ者だ。
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みんなの感想(1件)

ミオナ
2019.05.17 ミオナ

本当にとても面白かったです!
話に惹き込まれました!

解除

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